国交省・厚労省による「令和8年度予算案」

労働基準法

 建設業界では現在、技能者の高齢化が進む一方で若年層の入職が不足しており、将来の担い手確保が喫緊の課題となっています。

 こうした状況を受け、2025年12月26日、厚生労働省と国土交通省は連携して「建設業の人材確保・育成に向けた取組」を推進するための令和8年度(2026年度)予算案の概要を発表しました。

建設業の人材確保・育成に向けて

 建設業の技能者のうち、60歳以上の割合が約4分の1を占める一方、29歳以下は全体の約12%となっています。このような中、建設業が引き続き「地域の守り手」として役割を果たしていくためには、将来の建設業を支える担い手の確保が急務となっています。特に若者や女性の建設業への入職や定着の促進などに重点を置きつつ、担い手の処遇改善、働き方改革、生産性向上を一体として進めていくことが重要です。

国土交通省と厚生労働省の令和8年度予算案の概要 

 政府が掲げる最新の施策方針と、具体的な支援内容についてご紹介します。

 建設業を「地域の守り手」として維持していくために、国土交通省と厚生労働省が連携して行う具体的な施策がまとめられています。建設業を中心とした産業の持続可能性を確保するため、両省がそれぞれの強みを活かした予算を計上しています。

ポイントは以下の3点です。

1. 人材確保

  国交省が処遇改善などの環境を整え、厚労省がハローワーク等でマッチングを支援します。

2. 人材育成

 若手への技術指導や職業訓練に対し、国が費用を支援します。

3.魅力ある職場作りの推進

 「働き方改革」や「安全対策」に取り組む企業に対し、厚労省から助成金(計100億円以上)が出ることが最大の特徴です。

 一言で言うと、「国交省が業界のルールを作り、厚労省が企業にお金を出して、建設業の人材確保と定着を狙う」という内容です。

国土交通省の令和8年度予算案の概要

 国土交通省による「人材確保」に特化した令和8年度予算案(3.5億円)の詳細をまとめたものです。主な内容は以下の3点に集約されます。

1. 人材確保:3.5億円(内数)

  1. 処遇改善と生産性向上(新規・継続)
    • 技能者の処遇改善のため、建設キャリアアップシステムの普及や「労務費の基準」の実効性確保に向けた調査を行います。
    • 【新規】 ICT導入による生産性向上策の調査や、優れた企業を適切に評価するための企業評価制度(経審)の見直しを検討します。
  2. 多様な人材の入職・定着促進(新規・継続)
    • 女性や若者が働きやすい現場環境の整備、事例集の作成を推進します。
    • 【新規】 工業高校生などの就職希望層に対し、PR手法の整理や就職の壁となっている要因の解消に向けた調査を実施します。

 まとめると、ICT活用や制度の見直しによって建設業界の生産性を高めつつ、工期や給与などの労働条件を適正化することで、若者や女性が選ぶ魅力ある業界を目指す」というものです。

2. 人材育成:105億円 + 3.5億円(再掲)

 地域の担い手を育て、災害時にも対応できる体制を作ります。

  • 安全・安心確保モデル事業(105億円): 地域の住宅生産事業者が連携し、災害発生時に備えたモデル的な取り組みを支援します。
  • 技能者の処遇改善: 建設キャリアアップシステムの普及や、適正な「労務費の基準」の設定に向けた調査を実施します。

3. 魅力ある職場づくり:3.5億円(再掲)

 安心して長く働ける現場環境を目指します。

  • 安全・健康の確保: 安全衛生経費が下請業者に適切に支払われるよう、実態調査や広報を強化します。
  • 多様な人材の活躍: 技術者や技能者が快適に過ごせる現場の工夫事例(手引き)を作成し、環境改善を促します。

 まとめると3.5億円を投じて工期・給与・PRなどの業界ルールを抜本的に改善しつつ、別途105億円をかけて地域の災害対応体制を強化することで、建設業を『若者に選ばれる安全で持続可能な業界』に変えるものです。

厚生労働省の令和8年度予算案の概要

 厚生労働省は「人材確保」を大きな柱とし、「企業への直接的な金銭支援(助成金)」と「マッチング・広報活動」で建設業界への入職と定着を強力に後押ししています。

1.人材確保


1. 建設事業主等への助成金支援:71億円(前年度比+2億円)

 中小建設事業主が従業員の雇用改善やスキルアップに取り組む際の経費を助成します。

  • 若年者・女性の定着上乗せ: 魅力発信から入職・定着まで一体的に行う事業主に対し、定着時に助成金を上乗せ支給します。
  • CCUS(建設キャリアアップシステム)の活用促進: 能力や経験に応じた適切な処遇を行う事業主を支援します。
  • 賃金助成の強化: CCUSカード登録者に対して職業訓練を行う場合、賃金助成額を1.1倍に引き上げます(令和8年度末まで延長)。

2. ハローワークによるマッチング支援:56億円(前年度比+6億円)

 人手不足が深刻な建設、医療、介護などの分野を重点的に支援します。

  • 「人材確保対策コーナー」の設置: 専門の担当者が求職者へきめ細かな相談や求人紹介を行い、事業所見学会や就職面接会も開催します。
  • CCUSの周知と活用: 求職者にシステムを周知するとともに、登録済み企業の求人情報を優先的に提供して応募を促します。

3. 次世代へのアプローチ(広報・理解促進)

 若者に建設業の魅力を伝え、将来の職業選択肢に入れてもらうための活動です。

  • 「つなぐ」化事業(2,900万円): 高校(工業科・普通科等)や高専の先生・生徒を対象に、出前授業や現場見学会を実施して建設業界との接点を作ります。
  • 地元職業の理解促進(1,900万円): 地域企業による高校内企業説明会などを開催し、地元での就職を支援します。

 まとめると助成金(71億円)で企業の採用・教育コストを肩代わりし、ハローワーク(56億円)がマッチングをリードすることで、若者や女性が『安心して入職し、キャリアを築ける環境』を官民一体で作るものです。

2. 人材育成

 若手や未経験者が建設業界で即戦力として活躍できるよう、「技能習得」と「教育環境の整備」に重点が置かれています。

  • 中小建設事業主等への支援:4.9億円
    • 離職者、新卒者、学卒未就職者などを対象に、訓練カリキュラムの策定から職業訓練の実施、就職支援までをパッケージで支援します(建設労働者育成支援事業)。
  • 建設分野におけるハロートレーニング(職業訓練):1.2億円
    • 建設機械の運転技能だけでなく、パソコンスキル講習などと組み合わせた多角的な訓練を実施します。
    • 受講者に対して建設キャリアアップシステム(CCUS)の周知も行い、キャリア形成を促します。
  • ものづくりマイスター制度による実技指導:26億円
    • 経験豊富な「ものづくりマイスター」を中小企業等に派遣し、若年技能者へ直接、高度な実技指導を行います。
  • 建設事業主等に対する助成金による支援:71億円(再掲)
    • 従業員のスキルアップに取り組む事業主に対し、経費や賃金の一部を助成することで企業の教育負担を軽減します。

 まとめるとマイスターによる実技指導(26億円)やパッケージ化された就職支援(4.9億円)を通じて、未経験者や若手が『建設のプロ』として着実に成長できるルートを国がバックアップするものです。

3.魅力ある職場づくりの推進

 建設業の長時間労働の是正や、従業員が定着しやすい環境を整えるための「働き方改革」と「職場改善」に大きな予算が割かれています。


「魅力ある職場づくり」の主な施策

  • 働き方改革推進支援助成金:101億円(拡充)
    • 生産性を高めながら労働時間短縮や賃金引上げに取り組む中小企業等を助成します。
    • 特に労働時間が長い実態がある建設業等のために、専用のコースを用意して継続的に支援します。
  • 働き方改革推進支援センターによる支援:30億円(継続)
    • 全国47都道府県に設置されたセンターで、専門家が労務管理に関する相談やコンサルティングを無料で実施します。
  • 雇用管理責任者等に対する研修:1.0億円(拡充)
    • 若手社員との円滑なコミュニケーションや、職場定着・技術習得を促すための環境づくりを学ぶ研修を実施します。
  • 「つなぐ」化事業:2900万円(再掲・継続)
    • 学校関係者と建設業界をつなぐ機会(出前授業等)を継続し、業界のイメージ向上を図ります。

このページでは、特に現場の「安全」に直結する施策が並んでおり、一人親方や中小事業者への手厚いサポートが特徴です。


4.魅力ある職場づくりの推進の安全対策

  • 個人事業者等(一人親方)への安全衛生支援:1.7億円
    • 改正労働安全衛生法に関する説明会の開催や、現場への巡回指導を実施します。
    • 労災保険に特別加入している一人親方等に対し、直接的な安全衛生教育を行います。
  • 中小専門工事業者の安全活動支援:9,600万円
    • 安全衛生管理能力を高めるための集団指導や技術研修会、現場パトロールを実施します。
  • 墜落・転落災害の防止対策:8,600万円
    • 足場からの墜落防止に向け、専門家による現場診断や、その結果に基づいた直接的な指導・支援を行います。
  • 労災保険特別加入制度の周知:3,100万円
    • 一人親方等が安心して働けるよう、特別加入制度の広報を関係団体を通じて強化します。

まとめると次のとおりです。

  1. 「一人親方」の保護: 組織に属さない個人事業者に対し、法改正の周知や安全教育を国が直接支援する姿勢が鮮明です。
  2. 死亡事故の防止: 建設業で最も多い「墜落・転落」に絞った対策予算を計上し、専門家を現場に送り込む実効性の高い施策を推進しています。
  3. 重層的な支援: 既出の「働き方改革(101億円)」や「助成金(71億円)」と合わせ、金銭面と安全面の両輪で職場の魅力を高めようとしています。

5.まとめ

 今回の予算案からは、国が建設業の人材不足を深刻な課題と捉え、「処遇改善」「働き方改革」「生産性向上」をセットで推進しようとする強い姿勢がうかがえます。

 特に、中小建設事業主に対する助成金の拡充や、ハローワークを通じたマッチング支援の強化は、現場での採用活動に直結する重要な施策です。また、国交省と厚労省が連携して「建設キャリアアップシステム(CCUS)」の普及に注力している点も、今後の業界標準を見据える上で見逃せません。