労働市場における雇用仲介の在り方に関する研究会 報告書

雇用関係法

 

 少子高齢化による就業構造の変化、働き方や職業キャリアに対する考え方の多様化等を踏まえ、これからの雇用仲介制度の在り方を検討する必要(主な議題①~③)があることから、令和3年1月6日に第1回の「労働市場における雇用仲介の在り方に関する研究会」が開催され、その後17回開催され、同年7月13日に報告書が取りまとめられましたので紹介します。 
①IT化等による新しい事業モデル・サービスに対応した制度の在り方
②有料職業紹介事業及び募集情報等提供事業等をより適正かつ効果的に運営するための制度の在り方
③働き方や職業キャリアの在り方が多様化する中で、需要サイドと供給サイド双方にとって機能的な労働市場を実現するための制度や官民連携の在り方
 報告書は、厚生労働省にあります。次に、その一部を掲載しました。

第1 総論

 我が国の労働市場において、仕事を探す者と、人材を探す企業等との間を取り持ち、労働力の需要供給を調整する機能を持つ雇用仲介は、企業における雇用の維持や、雇用保険をはじめとするセーフティネットの整備と並んで、労働市場をより機能的かつ効率的なものとするという、雇用政策の主要な役割を担うものであり、時代の要請に応じた対応が大きな課題とされてきた。
 これまでの雇用仲介に関する政策は、雇用関係の成立をあっせんする「職業紹介」を中心とするものであり、戦後、基本的に国の運営する公共職業安定所が独占 してきた職業紹介を、平成 11(1999)年の職業安定法改正により民間等へ開放し、官民の協力によりサービスの質を高めてきている(資料1)。

職業安定法の制定・主な改正

 労働市場における雇用仲介は、職業紹介のみではなく、募集情報等提供等の様々 な形態によりサービスが提供されているが、近年、①雇用形態や人々の職業キャリアに対する意識の多様化といった労働力の需要側と供給側の双方における変化、② IT技術やグローバル化等の急速な進展による経済活動や事業展開のスピードの変化、③利活用できるデータ量、データの分析技術の変化、④利用者がスマートフォン等のデバイスを簡易に取得し、利用することができるという変化等の影響を受け、サービスの内容が急速に変革されている。
 労働市場を俯瞰すると、1995 年以降、15~64 歳の人口は減少を続けているものの、2013 年以降労働力人口は増加が続いており、雇用者数もおおむね増加傾向にあった。他方、リーマンショック以降の労働市場においては、人手不足の状況が続いており、2020 年以降に労働力人口が減少に転じるとの推計を踏まえれば、今後もその傾向は継続することが見込まれる(資料2~6)。

 また、個人個人が自らの職業キャリアを大切にする意識が醸成されてきていることにより、個人のキャリア実現に果たす雇用仲介サービスの役割も大きくなってきている。さらに、企業も個人の多様なキャリア意識を尊重しなければ、優秀な人材を確保できないことから、人事管理・労務管理の在り方にも変容が生じている。
 こうした人手不足という課題や、キャリア意識の多様化、事業展開の加速を支える即戦力の人材を迅速に確保する必要性により、いわゆる終身雇用、新卒一括採用といった、日本的な雇用システムが従前のように機能しなくなってきている面もあり、より多様性のある採用や様々な雇用仲介サービスを活用しての人材確保の動きが活発化してきている。
 このような変化を受け、雇用仲介サービスは、単にマッチングを行うだけではなく、仕事を探す者をよりサポートするサービス、あるいはより企業の採用コストを少なくするサービスというように多様化してきている(資料7)。
 こうした多様化の動きを技術の面から加速させているのが、利活用できるデータの量の変化であり、また、そのデータの量の変化をもたらしているのが、利用者が雇用仲介の世界と簡単につながることのできるスマ―トフォン等のデバイスの普及である。いまや、大量のデータを簡便に分析・利用することができ、これまでにない雇用仲介の機能向上をもたらしている。

 新型コロナウイルス感染症の影響は、労働市場における官民の持つ情報の共有や連携の必要性を再確認させたのみならず、上記の変化を加速させ、これまで以上に雇用仲介サービスの在り方が多様化していくものと考えられる。さらに、新たに仕事を探す者や改めてキャリアを見直す者が増加しており、一人一人の職業選択・職業生活の充実と労働力の供給を支え、職業の安定に貢献する雇用仲介サービスの役割は益々大きなものとなってくる。
 本研究会では、仕事を探す者の様々な入職の状況について必ずしも把握できていなかったことや、これまで想定してきたようなモデルでは捉えきれない雇用仲介の実態が生じていることを受け、現状を見つめ直し、雇用仲介サービスの利用者が安心してサービスを利用できる環境整備の観点から、雇用仲介サービスが労働市場に参画するために必要となるルールや、将来に向かってより機能的・効率的な労働市場の実現に貢献できるような、雇用仲介サービスの在り方を模索して精力的に議論を行った。

雇用仲介機能イメージ

第2 今後の雇用仲介の在り方について

Ⅰ.基本的考え方

 IT技術等の発展やインターネットの普及により、多種多様なサービスを提供している求人メディアや新たな雇用仲介サービスが労働市場において果たす役割を積極的に評価し、労働市場において需給調整(マッチング)機能の一翼を担うものとして位置付けることが適当である。
 少子高齢化による就業構造の変化、働き方や職業キャリアに対する意識の多様化、新型コロナウイルス感染症の影響による人材の移動の必要性等を踏まえ、職業安定機関は、労働市場全体の需給調整機能を高め、実効性のある雇用対策を講じることが重要であり、求人メディアや新たな雇用仲介サービスを行う者とも情報の共有や連携を進めていくことが適当である。
 労働市場における雇用仲介サービスの位置付けを確固たるものとし、仕事を探す者の立場に立って、利用者が安心して雇用仲介サービスを利用できる環境とするため、雇用仲介サービスを行う者が依拠すべきルールを明確にすることが適当であ る。その際、雇用仲介サービスがIT技術等を駆使し、機能を高めていることや、サービスの進化・展開が速いことを踏まえ、雇用仲介サービスを利用する仕事を探す者にとって有益なイノベーションを阻害しないよう留意すべきである。

Ⅱ.労働市場の整備

1 雇用仲介サービスの法的位置付けについて

 職業安定法に位置付けられている職業紹介事業及び募集情報等提供事業以外にも伝統的なイメージを超える多様な雇用仲介サービスが展開されていることを踏まえ、雇用仲介サービスを労働市場における需給調整機能の一翼を担うものとして位置づけるに当たって、仕事を探す者や企業等が安心して利用できるようにするとともに、利用者の安心とイノベーションを両立させる観点から、法的位置付けも明確にしていくべきである。その際、以下の点を考慮し、その対象を検討することが適当である。
• 労働市場に流通する募集情報、仕事を探す者の情報等について、雇用仲介サービスを行う者は、正確な情報を労働市場に流通させるべきであること
• 雇用仲介サービスの発展のスピードが速いことを踏まえ、実態を広く把握し、仕事を探す者等の保護を図る必要があること
• 仕事を探す者の情報を取り扱う場合には、仕事を探す者本人が労働市場には流通させたくない情報も含まれ得ることから、より慎重な対応が求められること
• 雇用仲介サービスからの情報提供と職業紹介におけるあっせんとの違いについて、既存の区分基準・判例等と現状の雇用仲介サービスの実態との関係を整理し、職業紹介に該当するサービスを明確にすることが事業活動における予見可能性を高めること
 また、多様なサービスが登場している中で、募集情報や仕事を探す者の情報を取り扱うことが常態となっているような場の提供等、これらの情報の流通を促進しているものについては、サービスの類型に関わらず、雇用を仲介する機能を持つものとして整理を行っていくことが適当である。
 なお、雇用仲介サービスの法的位置付け、サービスの態様等については、サービスを提供する事業者だけではなく、サービスを利用する者にとっても明確なものとし、自分がどのようなサービスを受けることとなるのか、納得して利用できるようにすることが適当である。

2 公共の役割

 少子高齢化による就業構造の変化と、働き方や職業キャリアに対する意識の多様化を受けて、職業生活の充実や労働力の有効活用が一層重要となることに加えて、今般の新型コロナウイルス感染症の影響を受けて、労働市場における需給調整機能を迅速に発揮させる必要性の観点からも、職業安定機関が、公共職業安定所や職業紹介事業者だけでなく、雇用仲介サービスを行う者が把握している労働力需給の状況等を含め、労働市場全体の情報を把握できる仕組みを構築し、機動的・総合的な雇用対策を推進する役割を担っていくべきである。
 その基盤を整備するため、雇用仲介サービス等を職業安定機関と連携する主体として位置づけ、厚生労働大臣が労働市場に関する情報を収集する際に必要な協力を行うこととすることが適当である。
 公共職業安定所は、セーフティネットとして、ハローワークインターネットサービスや各種支援策の充実等により労働市場におけるマッチング機能の強化を図るとともに、特に就職困難者への対応を充実させ、全国的にその知見を共有し、職業の安定に対する役割を強めていくことが適当である。雇用仲介サービスと、公共職業安定所が効果的に連携することができるよう、職業安定機関が雇用仲介サービスを行う者に関する情報や労働市場に関する情報を提供していくこと等が適当である。また、雇用仲介サービスのみならず、就職困難者を支援する関係機関や職業訓練機関との連携の基幹的な役割を果たしていくことが適当である。

3 新しいサービスの把握等

 求人メディアや多種多様となっている新たな雇用仲介サービスについて、日本の労働市場における役割が大きくなってきていることから、労働市場における需給調整機能の一翼を担うものとして位置付けることが必要である。労働市場におけるマッチング機能の向上と雇用対策の有効な実施等を図るため、参入を阻害しないよう配慮しつつ、求人メディアや新たな雇用仲介サービスを提供している事業者を把握できるようにすることが適当である。
 その際、雇用仲介サービスを利用する者の利用動向からも雇用仲介サービスの実態の把握を行うことができるよう検討することが必要である。
 雇用仲介サービスを利用する仕事を探す者や企業等が、より優良なサービスを利用することができるよう、職業紹介事業や労働者派遣事業における認定制度を参考に、求人メディア等の雇用仲介サービスについても、優良な事業者を認識することができる方策を検討することが必要である。そのためにも、対象の法的位置付けを明確化し、対象となる事業者を把握することが適当である。

4 職業情報・募集情報等の共通フォーマットの整備

 職業安定機関は、マッチング機能の向上や個々人のリスキリング(職業能力の再開発、再教育)のため、職業情報提供サイト(日本版 O-NET)等の職業情報を一元化するインフラの整備を進め、充実を図ることが適当である。その際、利用者の意見を基にその機能を向上させるとともに、実際に職業情報を活用する企業や関係団体の意見も踏まえつつ、情報の内容を充実・更新していくことが適当である。
 募集者や雇用仲介サービスは、労働条件に限らず、上記の職業情報との関連を含め、職業選択を助け、職業生活の充実に資するような情報を積極的に提供していくことが適当である。

Ⅲ.雇用仲介サービスの取り扱う情報について

1 情報の的確性

 どのようなサービスの態様かに関わらず、仕事を探す者の触れる募集情報等について、雇用仲介サービスを行う者は、仕事を探す者に誤解を与えることのないよう、的確な表示を行うべきである。その際、募集情報等に責任を持つ企業等が募集情報等を事前にかつ的確に明示することができるよう、雇用仲介サービスを行う者は必要な支援を行うことが適当である。
 労働市場において募集情報等を流通させる立場として、雇用仲介サービスを行う者は、提供する募集情報等や仕事を探す者の情報を、正確かつ最新のものに保つための措置を講じることが適当である。また、雇用仲介サービスを行う者は、提供する募集情報等や仕事を探す者の情報について誤り等があった場合、早急に訂正等を行う責任があることから、募集を行う企業等や仕事を探す者からの苦情を受け付ける体制を整備し、適切に対応することが適当である。

2 個人情報等の保護

 仕事を探す者の個人情報を分析し、マッチング機能を高めるサービスが登場していることを踏まえ、仕事を探す者が、個人情報を自分にとって不利に取り扱われることのないよう、雇用仲介サービスを行う者は業務の目的の達成に必要な範囲内で、その目的を明らかにして個人情報を収集、保管、使用することが適当である。
 日本の労働市場の特性を踏まえれば、雇用仲介サービスが本人の同意を得て個人情報を利用する場合においても、どのように同意を得るべきかを明確にしていくことが適当である。
 また、原則収集してはならないとされている個人情報に加えて、求職活動や採用活動に当たって差別につながるおそれのある情報や個人の私生活に関する情報など使用されるべきでない個人情報等をより明確化していくことが適当である。

Ⅳ.雇用仲介サービスの役割・仕事を探す者の保護等

1 雇用仲介サービスの役割

 新たな雇用仲介サービスの中には、これまで雇用仲介サービスを行ったことのない事業者が多数参入していることも踏まえると、雇用仲介サービスの透明性と従事する人材の質(知識・技能・職業倫理等)を確保することが肝要である。このため、雇用仲介サービスを行う者が、自らの事業に関する情報について利用者に説明を尽くし、市場にも積極的に公開していく等、企業や仕事を探す者等の雇用仲介サービスの利用者において、利用しようとする雇用仲介サービスがどのような事業を行っているかやそのサービスに従事している者が職業や雇用に関す る必要な知識を保有しているかを認識できるようにしていくことが適当である。
 さらに、雇用仲介サービス自らの取組だけではなく、雇用仲介サービスに寄せられた苦情やその処理の状況について、個人情報に配慮しつつ業界団体における公開を促すとともに、雇用仲介サービスを行う者からの事業に関する情報の提供を受け、職業安定機関がそれを市場全体に公開することで、仕事を探す者や企業等の利用者の選択に当たって、事業の透明性を確保することが適当である。

2 仕事を探す者の保護

 職業安定機関は、職業紹介事業者に関する情報だけでなく、それ以外の雇用仲介サービスに関する情報や、労働市場に関する情報を提供し、仕事を探す者が安心して労働市場に参加できるようにしていくことが適当である。
 職業紹介事業等の既存の雇用仲介サービスにおいても、業務の効率化とマッチング機能の向上のためにAIやマッチングアルゴリズム等の技術が利用されている。これらの技術の利用により、アンコンシャスバイアスを排除することができる可能性も踏まえつつ、仕事を探す者が不利になることのないよう、雇用仲介サービスや業界団体が基本的な考え方を示すことを検討していくことが適当である。
 仕事を探す者に対して、保有する情報の量や求職活動に関する知見において雇用仲介サービスが優位な立場にあり、市場原理が働きにくい面もあることを踏まえると、職業紹介事業者や募集情報等提供事業者が、原則として仕事を探す者から手数料を徴収できないという現行の規定や慣行は、現時点においては維持することが適当である。
 他方、少子高齢化の影響を受ける日本の労働市場において、働き方やキャリア意識の多様化により、雇用仲介サービスの役割は大きくなってきている。雇用仲介サービスを行う者は、仕事を探す者に寄り添う形での事業運営を強く意識すべきであり、また、雇用仲介サービスの問題のある事業活動に対して行政機関は適切な指導・監督を行うべきである。

3 業界団体の役割

 雇用仲介サービスにおける先駆者を会員とする業界団体は、法令の規定よりも高いサービス水準を策定し、会員企業の提供するサービスの質を担保しつつ、これまでと同様、業界全体のコンプライアンス(法令遵守)の推進とその啓発の役割を果たしていくべきである。
 職業安定機関は業界団体との連携を緊密にし、雇用仲介サービスの把握と高いサービス水準を確保するための施策を推進していくことが適当である。
 また、業界団体は、引き続き、事業者に対する仕事を探す者のニーズや苦情に中立的な立場から対処する役割を担っていくことが適当である。

4 雇用以外の仲介について

 業務委託等の受発注者等、雇用以外の仕事を仲介するようなサービスについて は、現時点において、職業安定法の射程を超えるものも存在すると考えられる。他方、態様として雇用仲介サービスと類似しているサービスが提供されていることや、非雇用者とされている人でも労働者性のある人や交渉力の低い人が存在することを踏まえ、雇用以外の仕事を仲介するサービスについても、雇用仲介サービスを行う者が守るべきルールに倣うことができるよう、周知を図るべきである。

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