労働局のあっせん、社会保険労務士会のあっせん、労働審判の状況

労働基準法

 労働局のあっせん、社会保険労務士会のあっせん、労働審判の状況について、取りまとめました。
  令和3年度、労働局のあっせんは減少
  一番多い申請内容

   労働局のあっせんは、いじめ・嫌がらせ
   社会保険労務士のあっせんは、解雇・退職・雇い止め
   労働審判は、地位確認
 

1 あっせん申請件数

【ポイント】令和3年度、労働局のあっせんは減少

 労働局のあっせんは、平成24年度に6,047人で、平成30年度までは、概ね5千人台で推移し、令和元年度5,187人、令和2年度4,225人、令和3年度3.760人と減少している。
 労働審判は、平成24年度に3,719人で令和2年度に3,907人と過去最高を記録したが、令和3年度は、3,609人と減少している。
 社会保険労務士会のあっせんは、平成24年度に143人で、平成26年度に181人と増加したが、その後、減少に転じ、令和2年度に68人となったが、令和3年度に72人と若干増加した。

2 あっせん申請内容

【ポイント】一番多い申請内容 労働局のあっせんは、いじめ・嫌がらせ 社会保険労務士のあっせんは、解雇・退職・雇い止め 労働審判は、地位確認

 労働局のあっせん(全国)の申請内容は、令和24年度は、解雇が29.7%、いじめ・嫌がらせが20.2%の順であったが、平成26年度に順位が逆転し、令和3年度は、いじめ・嫌がらせが29.2%、解雇が18.5%となった。
 なお、雇い止め、労働条件の引き下げは、概ね300人~400人台で推移している。

申請内容別あっせん申請の推移(全国)

 労働局のあっせん(千葉)の申請内容は、令和24年度は、解雇が28.1%、いじめ・嫌がらせが22.2%の順であったが、平成25年度に順位が逆転し、令和3年度は、いじめ・嫌がらせが38.5%、解雇が16.3%となった。
 なお、雇い止め、労働条件の引き下げは、概ね10人~20人台で推移している。

申請内容別あっせん申請の推移(千葉)

 社会保険労務士会のあっせんは、令和元年度に解雇・退職・雇い止めが47.3%、賃金未払・サービス残業・退職金が21.1%、パワハラ・セクハラ・いじめが21.1%の順であったが、令和3年度に賃金未払・サービス残業・退職金が44.4%、解雇・退職・雇い止めが27.8%、パワハラ・セクハラ・いじめが18.1%の順位となった。
 労働審判では、平成28年度に地位確認が44.4%、賃金等が40.8%の順であり、令和3年度も地位確認が48.5%、賃金等が36.9%の順となった。
 このように申請内容でみれば、労働局のあっせんは、いじめ・嫌がらせ、社会保険労務士のあっせんは、解雇・退職・雇い止め、労働審判は、地位確認とそれぞれに機関に特徴がある。

3 合意率

【ポイント】 社会保険労務士会のあっせん 労働局のあっせんに比べ、参加率、和解での解決率が高い

 労働局のあっせんの参加率は、令和24年度に52.3%、その後、50%台で推移し、令和3年度に52.8%となった。
 労働局のあっせんの合意率は、令和24年度に37.5%、その後、30%台で推移し、令和3年度に33.1%となった。なお、あっせんに参加した場合の解決率は、概ね6割台で推移している。

 社会保険労務士会のあっせんは、令和元年度に不応諾が38.0%、和解が40.8%、令和3年度に不応諾33.3%、和解41.7%となった。
 労働局のあっせんに比べ、参加率、和解での解決率が高いのが特徴である。

 労働審判は、平成28年度に調停成立が72.4%、労働審判での解決が14.3%、概ね同様の率で推移し、令和3年度は、調停成立が69.6%、労働審判での解決が16.2%となった。
 労働審判では、概ね7割が調停で解決し、2割弱が労働審判となっている。

4 あっせん申請

【ポイント】 労働局のあっせん 事業主申請 2%程度 社会保険労務士会のあっせん 経営者申請 3割弱

  労働局のあっせんにおいて、令和3年度のあっせん申請は、労働者が98.3%、事業主が1.7%であったが、社会保険労務士会のあっせんにおいて、令和3年度のあっせん申請は、労働者が73.6%、経営者が26.4%であった。
 労働局のあっせんに比べ、社会保険労務士会のあっせんが経営者からの申請が多い傾向にある。
 なお、社会保険労務士会のあっせんの申立の経緯は、令和3年度で総合労働相談所経由が50.0%、会員持込が26.4%、本人直接が20.8%、インターネット2.8%であった。
 このことから、社会保険労務士会のあっせんは、社会保険労務士による経営者への勧奨があったのではないかと思われる。

5 申立人代理人の選任

【ポイント】 あっせん 特定社会保険労務士が代理人として選任されるのは少数 労働審判 殆どの事件で弁護士が代理人として選任

 労働局のあっせんにおいて、特定社会保険労務士や弁護士を代理人として選任して処理している例があるが、殆ど代理人の選任はないと思われる(統計がなく正確な割合は不明である。)。
 社会保険労務士会のあっせんにおいて、令和元年度は、特定社会保険労務士11人、弁護士1人、令和2年度は、特定社会保険労務士7人、弁護士1人の代理人の選任があったが、令和3年度は、特定社会保険労務士1人のみであった。
 一方、労働審判において、令和2年度の代理人弁護士を選任した割合は、双方に弁護士選任が80.7%、どちらか弁護士選任が16.8%、選任無が2.5%と殆どが弁護士を代理人として選任している。

6 あっせん、労働審判の処理期間

【ポイント】 労働局のあっせん 概ね2か月以内で8割が処理 労働審判     平均審理期間3.6か月

 令和3年度の労働局のあっせんで2か月以内に処理した割合は、80.8%であり、令和2年度の労働審判の平均審理期間は、3.6か月であった。

7 社会保険労務士会のあっせんの和解金額

【ポイント】 社会保険労務士会のあっせんの和解金額 30万円未満が3分の2 労働審判の和解金は高額

 令和3年度の社会保険労務士会のあっせんの和解金額は、~30万円が65.5%、30~60万円が13.7%、60~90万円が3.5%、90~120万円10.4%、120万円以上が6.9%であった。
 労働審判の和解金では、労働政策研究・研修機構の調査(2015年4月)で、100万-200万円未満が、37.5%、200万-300万円未満が21.2%、300万-500万円未満が21.2%、500万-1000万円未満が14.2%、1000万-2000万円未満が5.2%、2000万円以上が0.7%であり、一端、労働審判になれば、社会保険労務士会のあっせんに比べ多額の和解金を支払う必要がある。