社労士解説 賃金請求権の消滅時効の延長(2年から3年)

労働基準法
  1. Ⅰ 民法改正
  2. Ⅱ 労働基準法改正
    1. 結論
      1. ① 賃金請求権の消滅時効は2年から3年に延長
      2. ② 付加金の請求期間は2年から3年に延長
      3. ③ それ以外は現行維持
  3. Ⅲ 改正の概要
    1. 第1 消滅時効の延長
      1. ① 賃金請求権の消滅時効の延長(2年から3年に延長)
      2. ② 賃金請求権以外の消滅時効(現行維持)
    2. 第2 付加金の請求期間の延長(2年から3年に延長)
    3. 第3 記録の保存期間の延長(現行と同様に3年)
    4. 第4 消滅時効の起算点が客観的起算点(賃金支払日)であることを明確化
  4. Ⅳ 改正内容
    1. 第1 賃金請求権の消滅時効の延長
      1. 1 賃金(退職手当を除く。)の請求権(2年から3年に延長)
      2. 2 災害補償の請求権(現行維持:2年)
      3. 3 その他の請求権(現行維持:2年)
      4. 4 退職手当(現行維持:5年)
    2. 第2 付加金の請求期間の延長(2年から3年に延長)
    3. 第3 労働者名簿等の記録の保存期間の延長(従前と同様に3年)
    4. 第4 消滅時効の起算点が客観的起算点(賃金支払日)であることを明確化
  5. Ⅴ 法令・省令の改正内容
    1. 第1 賃金請求権の消滅時効の延長
      1. 【労働基準法】
    2. 第2 付加金の請求期間の延長
      1. 【労働基準法】
    3. 第3 記録の保存期間の延長
      1. 【労働基準法】
      2. 【労働基準法施行規則】
  6. Ⅵ まとめ(改正労働基準法の内容)
    1. 第1 賃金請求権の消滅時効の延長
    2. 第2 付加金の請求期間の延長
    3. 第3 労働者名簿等の記録の保存期間の延長
    4. 第4 消滅時効の起算点が客観的起算点(賃金支払日)であることを明確化
    5. 第5 経過措置
  7. Ⅶ 改正労働基準法等に関するQ&A

Ⅰ 民法改正

 令和2年4月から改正施行された民法では、職業別の短期消滅時効(1年、2年、3年、5年)が廃止され、一般債権に係る消滅時効については、①債権者が権利を行使することができることを知った時(主観的起算点)から5年間行使しないとき、又は②権利を行使することができる時(客観的起算点)から10年間行使しないときに時効によって消滅すると時効期間のルールがシンプルに統一された。

Ⅱ 労働基準法改正

 令和2年4月から施行された改正労働基準法及び同施行規則によれば、一見、賃金請求権、年次有給休暇の時効、賃金台帳等の記録の保管期間も全て5年となり、これら全ての時効が5年に延長になったのだろうか。ただ、附則をみれば、当面の間の経過措置を講ずるとされ3年とされたが、実際にどのような対応が必要だろうか。

結論

 結論は、次のとおり賃金及び付加金のみ改正対応が必要である。

① 賃金請求権の消滅時効は2年から3年に延長

② 付加金の請求期間は2年から3年に延長

③ それ以外は現行維持

 退職手当:5年、災害補償:2年、年次有給休暇:2年など
 労働者名簿等の記録の保存期間:3年

Ⅲ 改正の概要

 改正の概要は次のとおりである。

労働基準法改正の概要

第1 消滅時効の延長

① 賃金請求権の消滅時効の延長(2年から3年に延長)

 賃金請求権の消滅時効:2年から5年に延長(当分の間は3年)

 付加金の請求期間:2年から5年に延長(当分の間は3年)

② 賃金請求権以外の消滅時効(現行維持)

 退職手当(5年)、災害補償、年休等(2年)の請求権:現行維持

第2 付加金の請求期間の延長(2年から3年に延長)

第3 記録の保存期間の延長(現行と同様に3年)

 賃金台帳等の記録の保存期間:3年から5年に延長(当分の間は3年)

第4 消滅時効の起算点が客観的起算点(賃金支払日)であることを明確化

(参考)

未払賃金が請求できる期間などが延長されます(リーフレット)

労働基準法の一部を改正する法律について(時効5年延長)

施行通達

Ⅳ 改正内容

 改正内容を次のとおり整理する。

第1 賃金請求権の消滅時効の延長

 賃金請求権(退職金を除く。)の消滅時効は、5年に延長された。が、当分の間3年とされ、災害補償、退職金等の消滅時効は、現行維持とされた。

1 賃金(退職手当を除く。)の請求権(2年から3年に延長)

 金品の返還(23条。賃金の請求に限る。)、賃金の支払(24条)、非常時払(25条)、休業手当(26条)、出来高払制の保障給(27条)、 時間外・休日労働等に対する割増賃金(37条)、 年次有給休暇中の賃金(39条9項)、未成年者の賃金請求権(59条)

2 災害補償の請求権(現行維持:2年)

 療養補償(75条)、休業補償(76条)、障害補償(77条)、 遺族補償(79条)、葬祭料(80条)、分割補償(82条)

3 その他の請求権(現行維持:2年)

 帰郷旅費(15条3項、64条)、退職時の証明(22条)、 金品の返還(23条。賃金を除く。)、年次有給休暇請求権(39条)

4 退職手当(現行維持:5年)

 退職手当(24条、労働協約又は就業規則によって予め支給条件が明確にされている場合)の請求権

第2 付加金の請求期間の延長(2年から3年に延長)

 付加金は、割増賃金等の支払義務違反に対する一種の制裁として未払金の支払を確保することや私人による訴訟のもつ抑止力を強化する観点から設けられた制度であり、その請求を行うことができる期間は、改正前の労働基準法第114条において、賃金等請求権の消滅時効期間に合わせて2年と定められていた。改正法において、賃金請求権の消滅時効期間に合わせて請求を行うことができる付加金の請求期間は、5年に延長されたが、当分の間3年とされた。

参考
  付加金制度の対象は、次の規定違反である。
① 解雇予告手当
② 休業手当
③ 割増賃金
④ 年次有給休暇中の賃金

第3 労働者名簿等の記録の保存期間の延長(従前と同様に3年)

 労働者名簿や賃金台帳等の記録については、紛争解決や監督上の必要から、その証拠を保存する意味で、3年間の保存義務が設けられていた。改正法において、次の労働者名簿等の記録の保存期間は、5年に延長されたが、当分の間3年とされた。

1 労働者名簿
2 賃金台帳
3 雇入れに関する書類
   例:雇入決定関係書類、契約書、労働条件通知書、履歴書、 身元引受書等
4 解雇に関する書類
  例:解雇決定関係書類、解雇予告除外認定関係書類、予告手当または退職手当の領収書等
5 災害補償に関する書類
  例:診断書、補償の支払、領収関係書類等
6 賃金に関する書類
  例:賃金決定関係書類、昇給・減給関係書類等
7 その他労働関係に関する重要な書類
 例:出勤簿、タイムカード等の記録、労使協定の協定書、各種許認可書、始業・終業時刻など労働 時間の記録に関する書類(使用者自ら始業・終業時間を記録したもの、残業命令書及びその報告書並びに労働者が自ら労働時間を記録した報告書)、退職関係書類、休職・出向関係書類、事業内貯蓄金関係書類等
8 時間外・休日労働協定における健康福祉確保措置の実施状況に関する記録
9 専門業務型裁量労働制に係る労働時間の状況等に関する記録
10 企画業務型裁量労働制に係る労働時間の状況等に関する記録
11 企画業務型裁量労働制等に係る労使委員会の議事録
12 年次有給休暇管理簿
13 高度プロフェッショナル制度に係る同意等に関する記録
14 高度プロフェッショナル制度に係る労使委員会の議事録
15 労働時間等設定改善委員会の議事録
16 労働時間等設定改善企業委員会の議事録

第4 消滅時効の起算点が客観的起算点(賃金支払日)であることを明確化

 改正法により、賃金請求権の消滅時効と記録の保存期間が同一となることを踏まえ、賃金請求権の消滅時効期間が満了するまでは、タイムカード等の必要な記録の保存がなされるよう、賃金台帳及び賃金その他労働関係に関する重要な書類の保存期間の起算日を賃金支払期日とした。

参考
 例えば、事業主が就業規則等において、賃金計算期間を当月1日~末日、賃金支払期日を翌月10日と定めているケースにおいては、タイムカード等、賃金計算に係る記録の保存期間は、翌月10日から起算して3年の保存が必要となる。

Ⅴ 法令・省令の改正内容

 法令・省令の改正内容は、次のとおりである。

第1 賃金請求権の消滅時効の延長

 労働基準法第百十五条は、次のとおり改正され、賃金請求権の消滅時効は、民法の改正と同様に2年から5年に延長されたが、当分の間3年とされ、賃金請求権以外の退職手当の請求権は5年、災害補償、年休等の請求権は2年と現行維持となった。

【労働基準法】

改正後

第百十五条 この法律の規定による賃金の請求権はこれを行使することができる時から五年間、この法律の規定による災害補償その他の請求権(賃金の請求権を除く。)はこれを行使することができる時から二年間行わない場合においては、時効によって消滅する。

改正前

第百十五条 この法律の規定による賃金(退職金は除く。)、災害補償その他の請求権は二年間、この法律に規定する退職手当の請求権は五年間行わない場合においては、時効によって消滅する。

 なお、附則により次のとおり読み替えることとされた。

附則 第百四十三条

③  第百十五条の規定の適用については、当分の間、同条中「賃金の請求権はこれを行使することができる時から五年間」とあるのは、「退職手当の請求権はこれを行使することができる時から五年間、この法律の規定による賃金(退職手当を除く。)の請求権はこれを行使することができる時から三年間」とする。

読み替え後

第百十五条 この法律の規定による退職手当の請求権はこれを行使することができる時から五年間、この法律の規定による賃金(退職手当を除く。)の請求権はこれを行使することができる時から三年間、この法律の規定による災害補償その他の請求権(賃金の請求権を除く。)はこれを行使することができる時から二年間行わない場合においては、時効によって消滅する。

第2 付加金の請求期間の延長

 労働基準法第百十四条は、次のとおり改正され、付加金の請求期間は、民法の改正と同様に2年から5年に延長されたが、当分の間3年とされた。
※ 付加金とは、裁判所が、労働者の請求により、事業主に対して未払賃金(割増賃金等の支払いがなかった場合)に加えて支払を命じることができるものである。

【労働基準法】

付加金の支払い

第百十四条 裁判所は、第二十条、第二十六条若しくは第三十七条の規定に違反した使用者又は第三十九条第九項の規定による賃金を支払わなかつた使用者に対して、労働者の請求により、これらの規定により使用者が支払わなければならない金額についての未払金のほか、これと同一額の付加金の支払を命ずることができる。ただし、この請求は、違反のあつた時から五年(旧:二年)以内にしなければならない。

附則 第百四十三条

②  第百十四条の規定の適用については、当分の間、同条ただし書中「五年」とあるのは、「三年」とする。

第3 記録の保存期間の延長

 労働基準法第百九条は、次のとおり改正され、労働者名簿、賃金台帳等の記録の保存期間は、民法の改正と同様に2年から5年に延長されたが、当分の間3年された。

【労働基準法】

記録の保存

第百九条 使用者は、労働者名簿、賃金台帳及び雇入れ、解雇、災害補償、賃金その他労働関係に関する重要な書類を五年(旧:三年)間保存しなければならない。

附則 第百四十三条

第百九条の規定の適用については、当分の間、同条中「五年間」とあるのは、「三年間」とする。

【労働基準法施行規則】

第十七条

第十七条 法第三十六条第二項第五号の厚生労働省令で定める事項は、次に掲げるものとする。ただし、第四号から第七号までの事項については、同条第一項の協定に同条第五項に規定する事項に関する定めをしない場合においては、この限りでない。
一 法第三十六条第一項の協定(労働協約による場合を除く。)の有効期間の定め
二 法第三十六条第二項第四号の一年の起算日
三 法第三十六条第六項第二号及び第三号に定める要件を満たすこと。
四 法第三十六条第三項の限度時間(以下この項において「限度時間」という。)を超えて労働させることができる場合
五 限度時間を超えて労働させる労働者に対する健康及び福祉を確保するための措置
六 限度時間を超えた労働に係る割増賃金の率
七 限度時間を超えて労働させる場合における手続
② 使用者は、前項第五号に掲げる措置の実施状況に関する記録を同項第一号の有効期間中及び当該有効期間の満了後五年(旧:三年)間保存しなければならない。
③ 前項の規定は、労使委員会の決議及び労働時間等設定改善委員会の決議について準用する。

第二十四条の二の二

第二十四条の二の二 法第三十八条の三第一項の規定は、法第四章の労働時間に関する規定の適用に係る労働時間の算定について適用する。
② 法第三十八条の三第一項第一号の厚生労働省令で定める業務は、次のとおりとする。
一 新商品若しくは新技術の研究開発又は人文科学若しくは自然科学に関する研究の業務
二 情報処理システム(電子計算機を使用して行う情報処理を目的として複数の要素が組み合わされた体系であってプログラムの設計の基本となるものをいう。)の分析又は設計の業務
三 新聞若しくは出版の事業における記事の取材若しくは編集の業務又は放送法(昭和二十五年法律第百三十二号)第二条第二十八号に規定する放送番組(以下「放送番組」という。)の制作のための取材若しくは編集の業務
四 衣服、室内装飾、工業製品、広告等の新たなデザインの考案の業務
五 放送番組、映画等の制作の事業におけるプロデューサー又はディレクターの業務
六 前各号のほか、厚生労働大臣の指定する業務
③ 法第三十八条の三第一項第六号の厚生労働省令で定める事項は、次に掲げるものとする。
一 法第三十八条の三第一項に規定する協定(労働協約による場合を除き、労使委員会の決議及び労働時間等設定改善委員会の決議を含む。)の有効期間の定め
二 使用者は、次に掲げる事項に関する労働者ごとの記録を前号の有効期間中及び当該有効期間の満了後五年(旧:三年)間保存すること。
イ 法第三十八条の三第一項第四号に規定する労働者の労働時間の状況並びに当該労働者の健康及び福祉を確保するための措置として講じた措置
ロ 法第三十八条の三第一項第五号に規定する労働者からの苦情の処理に関する措置として講じた措置
④ 法第三十八条の三第二項において準用する法第三十八条の二第三項の規定による届出は、様式第十三号により、所轄労働基準監督署長にしなければならない。
第二十四条の二の三 法第三十八条の四第一項の規定による届出は、様式第十三号の二により、所轄労働基準監督署長にしなければならない。
② 法第三十八条の四第一項の規定は、法第四章の労働時間に関する規定の適用に係る労働時間の算定について適用する。
③ 法第三十八条の四第一項第七号の厚生労働省令で定める事項は、次に掲げるものとする。
一 法第三十八条の四第一項に規定する決議の有効期間の定め
二 使用者は、次に掲げる事項に関する労働者ごとの記録を前号の有効期間中及び当該有効期間の満了後五年(旧:三年)間保存すること。
イ 法第三十八条の四第一項第四号に規定する労働者の労働時間の状況並びに当該労働者の健康及び福祉を確保するための措置として講じた措置
ロ 法第三十八条の四第一項第五号に規定する労働者からの苦情の処理に関する措置として講じた措置
ハ 法第三十八条の四第一項第六号の同意

第二十四条の二の三

第二十四条の二の三 法第三十八条の四第一項の規定による届出は、様式第十三号の二により、所轄労働基準監督署長にしなければならない。
② 法第三十八条の四第一項の規定は、法第四章の労働時間に関する規定の適用に係る労働時間の算定について適用する。
③ 法第三十八条の四第一項第七号の厚生労働省令で定める事項は、次に掲げるものとする。
一 法第三十八条の四第一項に規定する決議の有効期間の定め
二 使用者は、次に掲げる事項に関する労働者ごとの記録を前号の有効期間中及び当該有効期間の満了後五年(旧:三年)間保存すること。
イ 法第三十八条の四第一項第四号に規定する労働者の労働時間の状況並びに当該労働者の健康及び福祉を確保するための措置として講じた措置
ロ 法第三十八条の四第一項第五号に規定する労働者からの苦情の処理に関する措置として講じた措置
ハ 法第三十八条の四第一項第六号の同意

第三十四条の二

第三十四条の二 法第四十一条の二第一項の規定による届出は、様式第十四号の二により、所轄労働基準監督署長にしなければならない。
② 法第四十一条の二第一項各号列記以外の部分に規定する厚生労働省令で定める方法は、次に掲げる事項を明らかにした書面に対象労働者(同項に規定する「対象労働者」をいう。以下同じ。)の署名を受け、当該書面の交付を受ける方法(当該対象労働者が希望した場合にあっては、当該書面に記載すべき事項を記録した電磁的記録の提供を受ける方法)とする。
一 対象労働者が法第四十一条の二第一項の同意をした場合には、同項の規定により、法第四章で定める労働時間、休憩、休日及び深夜の割増賃金に関する規定が適用されないこととなる旨
二 法第四十一条の二第一項の同意の対象となる期間
三 前号の期間中に支払われると見込まれる賃金の額
③ 法第四十一条の二第一項第一号の厚生労働省令で定める業務は、次に掲げる業務(当該業務に従事する時間に関し使用者から具体的な指示(業務量に比して著しく短い期限の設定その他の実質的に当該業務に従事する時間に関する指示と認められるものを含む。)を受けて行うものを除く。)とする。
一 金融工学等の知識を用いて行う金融商品の開発の業務
二 資産運用(指図を含む。以下この号において同じ。)の業務又は有価証券の売買その他の取引の業務のうち、投資判断に基づく資産運用の業務、投資判断に基づく資産運用として行う有価証券の売買その他の取引の業務又は投資判断に基づき自己の計算において行う有価証券の売買その他の取引の業務
三 有価証券市場における相場等の動向又は有価証券の価値等の分析、評価又はこれに基づく投資に関する助言の業務
四 顧客の事業の運営に関する重要な事項についての調査又は分析及びこれに基づく当該事項に関する考案又は助言の業務
五 新たな技術、商品又は役務の研究開発の業務
④ 法第四十一条の二第一項第二号イの厚生労働省令で定める方法は、使用者が、次に掲げる事項を明らかにした書面に対象労働者の署名を受け、当該書面の交付を受ける方法(当該対象労働者が希望した場合にあつては、当該書面に記載すべき事項を記録した電磁的記録の提供を受ける方法)とする。
一 業務の内容
二 責任の程度
三 職務において求められる成果その他の職務を遂行するに当たつて求められる水準
⑤ 法第四十一条の二第一項第二号ロの基準年間平均給与額は、厚生労働省において作成する毎月勤労統計(以下「毎月勤労統計」という。)における毎月きまつて支給する給与の額の一月分から十二月分までの各月分の合計額とする。
⑥ 法第四十一条の二第一項第二号ロの厚生労働省令で定める額は、千七十五万円とする。
⑦ 法第四十一条の二第一項第三号の厚生労働省令で定める労働時間以外の時間は、休憩時間その他対象労働者が労働していない時間とする。
⑧ 法第四十一条の二第一項第三号の厚生労働省令で定める方法は、タイムカードによる記録、パーソナルコンピュータ等の電子計算機の使用時間の記録等の客観的な方法とする。ただし、事業場外において労働した場合であつて、やむを得ない理由があるときは、自己申告によることができる。
⑨ 法第四十一条の二第一項第五号イの厚生労働省令で定める時間は、十一時間とする。
⑩ 法第四十一条の二第一項第五号イの厚生労働省令で定める回数は、四回とする。
⑪ 法第四十一条の二第一項第五号ロの厚生労働省令で定める時間は、一週間当たりの健康管理時間(同項第三号に規定する健康管理時間をいう。以下この条及び次条において同じ。)が四十時間を超えた場合におけるその超えた時間について、次の各号に掲げる区分に応じ、当該各号に定める時間とする。
一 一箇月百時間
二 三箇月二百四十時間
⑫ 法第四十一条の二第一項第五号ニの厚生労働省令で定める要件は、一週間当たりの健康管理時間が四十時間を超えた場合におけるその超えた時間が一箇月当たり八十時間を超えたこと又は対象労働者からの申出があつたこととする。
⑬ 法第四十一条の二第一項第五号ニの厚生労働省令で定める項目は、次に掲げるものとする。
一 労働安全衛生規則(昭和四十七年労働省令第三十二号)第四十四条第一項第一号から第三号まで、第五号及び第八号から第十一号までに掲げる項目(同項第三号に掲げる項目にあつては、視力及び聴力の検査を除く。)
二 労働安全衛生規則第五十二条の四各号に掲げる事項の確認
⑭ 法第四十一条の二第一項第六号の厚生労働省令で定める措置は、次に掲げる措置とする。
一 法第四十一条の二第一項第五号イからニまでに掲げるいずれかの措置であつて、同項の決議及び就業規則その他これに準ずるもので定めるところにより使用者が講ずることとした措置以外のもの
二 健康管理時間が一定時間を超える対象労働者に対し、医師による面接指導(問診その他の方法により心身の状況を把握し、これに応じて面接により必要な指導を行うことをいい、労働安全衛生法(昭和四十七年法律第五十七号)第六十六条の八の四第一項の規定による面接指導を除く。)を行うこと。
三 対象労働者の勤務状況及びその健康状態に応じて、代償休日又は特別な休暇を付与すること。
四 対象労働者の心とからだの健康問題についての相談窓口を設置すること。
五 対象労働者の勤務状況及びその健康状態に配慮し、必要な場合には適切な部署に配置転換をすること。
六 産業医等による助言若しくは指導を受け、又は対象労働者に産業医等による保健指導を受けさせること。
⑮ 法第四十一条の二第一項第十号の厚生労働省令で定める事項は、次に掲げるものとする。
一 法第四十一条の二第一項の決議の有効期間の定め及び当該決議は再度同項の決議をしない限り更新されない旨
二 法第四十一条の二第一項に規定する委員会の開催頻度及び開催時期
三 常時五十人未満の労働者を使用する事業場である場合には、労働者の健康管理等を行うのに必要な知識を有する医師を選任すること。
四 使用者は、イからチまでに掲げる事項に関する対象労働者ごとの記録及びリに掲げる事項に関する記録を第一号の有効期間中及び当該有効期間の満了後五年(旧:三年)間保存すること。
イ 法第四十一条の二第一項の規定による同意及びその撤回
ロ 法第四十一条の二第一項第二号イの合意に基づき定められた職務の内容
ハ 法第四十一条の二第一項第二号ロの支払われると見込まれる賃金の額
ニ 健康管理時間の状況
ホ 法第四十一条の二第一項第四号に規定する措置の実施状況
ヘ 法第四十一条の二第一項第五号に規定する措置の実施状況
ト 法第四十一条の二第一項第六号に規定する措置の実施状況
チ 法第四十一条の二第一項第八号に規定する措置の実施状況
リ 前号の規定による医師の選任

第五十六条

第五十六条 法第百九条の規定による記録を保存すべき期間の計算についての起算日は次のとおりとする。
一 労働者名簿については、労働者の死亡、退職又は解雇の日
二 賃金台帳については、最後の記入をした日
三 雇入れ又は退職に関する書類については、労働者の退職又は死亡の日
四 災害補償に関する書類については、災害補償を終わつた日
五 賃金その他労働関係に関する重要な書類については、その完結の日
② 前項の規定にかかわらず、賃金台帳又は賃金その他労働関係に関する重要な書類を保存すべき期間の計算については、当該記録に係る賃金の支払期日が同項第二号又は第五号に掲げる日より遅い場合には、当該支払期日を起算日とする。
③ 前項の規定は、第二十四条の二の二第三項第二号イ及び第二十四条の二の三第三項第二号イに規定する労働者の労働時間の状況に関する労働者ごとの記録、第二十四条の二の四第二項(第三十四条の二の三において準用する場合を含む。)に規定する議事録、年次有給休暇管理簿並びに第三十四条の二第十五項第四号イからヘまでに掲げる事項に関する対象労働者ごとの記録について準用する。

附則第七十一条

第七十一条 読替後の法第三十六条第一項の協定については、令和六年三月三十一日までの間、第十七条第一項第三号から第七号までの規定は適用しない。

附則第七十二条

第七十二条 第十七条第二項、第二十四条の二の二第三項第二号、第二十四条の二の三第三項第二号、第二十四条の二の四第二項(第三十四条の二の三において準用する場合を含む。)、第二十四条の七及び第三十四条の二第十五項第四号の規定の適用については、当分の間、これらの規定中「五年間」とあるのは、「三年間」とする。

Ⅵ まとめ(改正労働基準法の内容)

 令和2年3月31日に、次の内容の「労働基準法の一部を改正する法律」が公布され、令和2年4月Ⅰ日から施行された。

第1 賃金請求権の消滅時効の延長

 賃金(退職手当を除く。)の請求権の消滅時効期間を5年間に延長するとともに、消滅時効の起算点について、請求権を行使することができる時であることを明確化することとする。

第2 付加金の請求期間の延長

 付加金の請求を行うことができる期間について、違反があった時から5年に延長することとする。

第3 労働者名簿等の記録の保存期間の延長

 労働者名簿、賃金台帳及び雇入れ、解雇、災害補償、賃金その他労働関係に関する重要な書類の保存期間について、5年間に延長することとする。

第4 消滅時効の起算点が客観的起算点(賃金支払日)であることを明確化

 賃金台帳又は賃金その他労働関係に関する重要な書類を保存すべき期間の計算については、当該記録に係る賃金の支払期日が最後の記入をした日(賃金台帳)又は完結の日(その他の書類)より遅い場合には、当該支払期日を起算日とする。

第5 経過措置

 改正後の労働基準法第109条、第114条及び第115条の規定の適用について、労働者名簿等の保存期間、付加金の請求を行うことができる期間及び賃金(退職手当を除く。)の請求権の消滅時効期間は、当分の間、3年間とすることとする。

Ⅶ 改正労働基準法等に関するQ&A

改正労働基準法等に関するQ&A