令和5年度地方労働行政運営方針

労働基準法

 令和5年4月1日、令和5年度地方行政運営方針が策定され、各都道府県労働局において、これを踏まえ、管内事情に即した重点課題及び対策等を盛り込んだ行政運営方針を取りまとめ、これに基づいた計画的な行政運営に努められたい旨の通知が発出されました。

  1. 令和5年度地方労働行政運営方針について
  2. 第1 労働行政を取り巻く情勢
  3. 第2 新型コロナウイルス感染症の雇用への影響と現下の経済状況を踏まえた総合労働行政機関としての施策の推進
  4. 第3 最低賃金・賃金の引上げに向けた支援の推進等
    1. 1  最低賃金・賃金の引上げに向けた支援の推進等
      1. (1)最低賃金・賃金の引上げに向けた生産性向上等に取り組む企業への支援
      2. (2)最低賃金制度の適切な運営
      3. (3)監督署と連携した同一労働同一賃金の徹底
      4. (4)「資金移動業者の口座への賃金支払」に関する周知及び指導について
  5. 第4 個人の主体的なキャリア形成の促進
    1. 1  個人の主体的なキャリア形成の促進
      1. (1)地域のニーズに対応した職業訓練の推進等 
      2. (2)キャリア形成・学び直し支援センターとの連携によるキャリア形成と学び直しの支援
      3. (3)デジタル分野における新たなスキルの習得による円滑な再就職支援
      4. (4)雇用維持及び在籍型出向等の取組の支援
      5. (5)企業における人材育成のための積極的な活用勧奨
  6. 第5 安心して挑戦できる労働市場の創造
    1. 1  労働市場の強化・見える化
      1. (1)改正職業安定法の施行及び民間人材サービス事業者への指導監督の徹底
      2. (2)円滑な労働移動に資する情報等の整備
    2. 2  賃金上昇を伴う労働移動の支援
      1. (1)就職困難者の賃上げを伴う労働移動等の推進
      2. (2)地域雇用の課題に対応し良質な雇用の実現を図る都道府県の取組等の支援
      3. (3)都市部から地方への移住を伴う地域を越えた再就職等の支援
      4. (4)就職困難者のデジタル分野への労働移動の推進
    3. 3 継続的なキャリアサポート・就職支援
      1. (1)ハローワークの職業紹介業務のオンライン・デジタル化の推進及び求職者支援
      2. (2)人材確保対策コーナーでの支援、「医療・福祉分野充足促進プロジェクト」の推進
      3. (3)雇用と福祉の連携による、離職者への介護・障害福祉分野への就職支援
      4. (4)ハローワークの就職支援ナビゲーターによる求職者の状況に応じたきめ細かな担当者制支援
      5. (5)求職者支援制度による再就職支援
      6. (6)地方公共団体と連携したハローワークにおける生活困窮者等に対する就労支援
  7. 第6 多様な人材の活躍促進
    1. 1  女性活躍・男性の育児休業取得等の促進
      1. (1)女性活躍推進法及び男女雇用機会均等法の履行確保
      2. (2)男性が育児休業を取得しやすい環境の整備に向けた企業の取組支援
      3. (3)マザーズハローワーク等による子育て中の女性等に対する就職支援
      4. (4)不妊治療と仕事との両立支援
      5. (5)新型コロナウイルス感染症に関する母性健康管理措置による特別有給休暇制度導入等への取組支援
    2. 2  同一労働同一賃金など雇用形態に関わらない公正な待遇の確保等
      1. (1)雇用形態に関わらない公正な待遇の確保、非正規雇用労働者の正社員化・処遇改善を行う企業への支援
      2. (2)無期転換ルールの円滑な運用
    3. 3  新規学卒者等への就職支援
      1. (1)新規学卒者等への就職支援
      2. (2)フリーター等への就職支援
    4. 4  就職氷河期世代の活躍支援
      1. (1)ハローワークの専門窓口における専門担当者のチーム制による就職相談、職業紹介、職場定着までの一貫した伴走型支援
      2. (2)就職氷河期世代の失業者等を正社員で雇い入れる企業への助成金等の活用
      3. (3)地域若者サポートステーションを通じた継続的な支援
      4. (4)就職氷河期世代の活躍支援のための都道府県プラットフォームを活用した支援
    5. 5  高齢者の就労・社会参加の促進
      1. (1)70歳までの就業機会確保等に向けた環境整備や高年齢労働者の処遇改善を行う企業への支援
      2. (2)ハローワークにおける生涯現役支援窓口などのマッチング支援
      3. (3)高齢者の特性に配慮した安全衛生対策を行う企業への支援
      4. (4)シルバー人材センターなどの地域における多様な就業機会の確保
    6. 6  障害者の就労促進
      1. (1)中小企業をはじめとした障害者の雇入れ支援等
      2. (2)改正障害者雇用促進法の円滑な施行
      3. (3)精神障害者、発達障害者、難病患者等の多様な障害特性に対応した就労支援
      4. (4)障害者の雇用を促進するためのテレワークの支援
      5. (5)公務部門における障害者の雇用促進・定着支援
    7. 7  外国人に対する支援
      1. (1)外国人求職者等に対する就職支援
      2. (2)ハローワーク等における多言語相談支援体制の整備
      3. (3)外国人労働者の適正な雇用管理に関する助言・援助等の実施、外国人労働者の雇用管理改善に取り組む企業への支援
      4. (4)外国人雇用実態調査の実施について
      5. (5)外国人労働者の労働条件等の相談・支援体制の整備
      6. (6)高度外国人材の受入れに係る制度見直しについて
  8. 第7  多様な選択を力強く支える環境整備
    1. 1  柔軟な働き方がしやすい環境整備
      1. (1)良質なテレワークの導入・定着促進
      2. (2)フリーランスと発注者との契約のトラブル等に関する関係省庁と連携した相談支援等
      3. (3)副業・兼業を行う労働者の健康確保に取り組む企業等への支援等
      4. (4)ワーク・ライフ・バランスを促進する休暇制度・就業形態の導入支援による多様な働き方の普及・促進
    2. 2  安全で健康に働くことができる環境づくり
    3. (1)長時間労働の抑制
      1. (2)労働条件の確保・改善対策
      2. (3)14次防を踏まえた労働者が安全で健康に働くことができる環境の整備
      3. (4)労災保険給付の迅速・適正な処理
      4. (5)総合的なハラスメント対策の推進
      5. (6)職場における感染防止対策等の推進

令和5年度地方労働行政運営方針について

第1 労働行政を取り巻く情勢

 少子高齢化・生産年齢人口の減少という我が国の構造的な課題がある中で、国民一人ひとりが豊かで生き生きと暮らせる社会を作るためには、成長と分配の好循環による持続可能な経済社会の実現が不可欠であり、そのためには、人への投資を強化する必要がある。このため、労働者の賃上げ支援、個人の主体的なキャリア形成の促進、安心して挑戦できる労働市場の創造、多様な働き方の選択を支える環境整備等に取り組むことが重要である。

 成長と分配の好循環による「新しい資本主義」の実現のためにも、労働行政が果たすべき役割は大きい。このことをしっかりと自覚し、各施策を適正かつ迅速に推進していく。

第2 新型コロナウイルス感染症の雇用への影響と現下の経済状況を踏まえた総合労働行政機関としての施策の推進

 2020年から新型コロナウイルス感染症の影響により我が国経済に大きな落ち込みがあり、飲食・宿泊などの特定の業種における非正規雇用労働者の働く場の減少、休業・シフト減による労働時間(収入)の減少など雇用にも影響を与えるようになった。こうした状況に対応するため、政府としては令和4年10月28日に策定した、「賃上げ・人材活性化・労働市場強化」雇用・労働総合政策パッケージをはじめとして、多様な人材の活躍促進や、多様な働き方への支援のための諸施策を講じることとしている。これらの諸施策について、「第3」以下に記載する。

 こうした施策の効果を上げるためには、都道府県労働局(以下「労働局」という。)において、労働局長のリーダーシップの下、雇用環境・均等部(室)が中心となって四行政分野(労働基準、職業安定、雇用環境・均等、人材開発)における雇用・労働施策を総合的、一体的に運営していく必要がある。また、各地域の実情に応じた取組を進め、各地域において総合労働行政機関としての機能を発揮し、地域や国民からの期待に真に応えていくことが求められている。 

第3 最低賃金・賃金の引上げに向けた支援の推進等

1  最低賃金・賃金の引上げに向けた支援の推進等

<課題>

 最低賃金については、「経済財政運営と改革の基本方針2022」(令和4年6月7日閣議決定)において、できる限り早期に全国加重平均が1,000円以上となることを目指すとされており、事業再構築・生産性向上に取り組む中小企業へのきめ細かな支援や取引適正化等、中小企業・小規模事業者が賃上げしやすい環境整備に一層取り組むことが不可欠である。

 また、賃金の支払方法については、キャッシュレス決済の普及や送金サービスの多様化に応じた対応が必要である。

<取組>

(1)最低賃金・賃金の引上げに向けた生産性向上等に取り組む企業への支援

 最低賃金・賃金の引上げには、特に中小企業・小規模事業者の生産性向上が不可欠であり、業務改善助成金の充実により、業務改善や生産性向上に係る企業のニーズに応え、賃金引上げを支援する。

 また、中小企業等が賃上げの原資を確保できるよう、「パートナーシップによる価値創造のための転嫁円滑化施策パッケージ」に基づき、政府一体となって取組を進めることとされているところであり、労働局及び労働基準監督署(以下「監督署」という。)においても、最低賃金・賃金支払の徹底と賃金引上げに向けた環境整備等の取組を行う。

 あわせて、監督署において、企業が賃金引上げを検討する際の参考となる地域の賃金や企業の好取組事例等が分かる資料を提供し、企業の賃金引上げへの支援等を行う。

 また、日本政策金融公庫による働き方改革推進支援資金についてもあわせて活用するよう、引き続き周知を図る。

 さらに、労働局が委託して実施する働き方改革推進支援センターによるワンストップ

 相談窓口において、生産性向上等に取り組む事業者等に対して支援を行う。

(2)最低賃金制度の適切な運営

 経済動向、地域の実情(新型コロナウイルス感染症による影響を含む。)及びこれまでの地方最低賃金審議会の審議状況などを踏まえつつ、本省賃金課と連携を図りながら、充実した審議が尽くせるよう地方最低賃金審議会の円滑な運営を図る。

 また、最低賃金額の改定等については、使用者団体、労働者団体及び地方公共団体等の協力を得て、使用者・労働者等に周知徹底を図るとともに、最低賃金の履行確保上問題があると考えられる業種等を重点とした監督指導等を行う。

(3)監督署と連携した同一労働同一賃金の徹底

 監督署による定期監督等において、同一労働同一賃金に関する確認を行い、短時間労働者、有期雇用労働者又は派遣労働者の待遇等の状況について企業から情報提供を受けることにより、雇均部(室)又は安定部等による効率的な報告徴収又は指導監督を行い、是正指導の実効性を高めるとともに、支援策の周知を行うことにより、企業の自主的な取組を促すことで、同一労働同一賃金の遵守徹底を図る。

(4)「資金移動業者の口座への賃金支払」に関する周知及び指導について

 令和5年4月 1 日より施行される、労働基準法施行規則の一部を改正する省令(令和4年厚生労働省令第 158 号)により、使用者が労働者に賃金を支払う場合において、通貨のほか、従来から認められていた銀行その他の金融機関の預金又は貯金の口座への賃金の振込み等に加え、厚生労働大臣が指定する資金移動業者の口座への賃金の資金移動による支払が認められることとなった。そのため、労働局及び監督署においても、労働者及び使用者に対し制度の周知を図るとともに、法令違反が疑われる事案を把握した場合は速やかに必要な指導を行う。

第4 個人の主体的なキャリア形成の促進

1  個人の主体的なキャリア形成の促進

<課題>

 産業構造が変化する中、個人がそれぞれの置かれた状況に応じて自律的・主体的にキャリアを形成し、その能力を発揮できるための環境整備が求められている。その際、希望する労働者が成長分野に円滑に労働移動するために必要なスキルアップの支援、在籍型出向など新たな経験を通じたキャリアアップや能力開発といった視点を加えていくことが重要。

<取組>

(1)地域のニーズに対応した職業訓練の推進等 

 都道府県との共催による地域職業能力開発促進協議会において、①地域の人材ニーズを踏まえた訓練コースの設定、②訓練修了者や当該修了者を採用した企業等のヒアリングによる訓練効果の把握・検証により、地域のニーズに対応した職業訓練コースの設定等を促進する。特に、令和5年度においては、個別の訓練コースについて訓練効果の把握・検証を新たに実施する。

(2)キャリア形成・学び直し支援センターとの連携によるキャリア形成と学び直しの支援

 令和5年度に創設される「キャリア形成・学び直し支援センター」では、キャリア形成や学び直しの必要性を感じている労働者等に対し、ジョブ・カードを活用して、キャリアコンサルティングの機会の提供や訓練情報の提供等を行う。

(3)デジタル分野における新たなスキルの習得による円滑な再就職支援

 令和4年6月に閣議決定された「デジタル田園都市国家構想基本方針」において、政府の各種施策を通じて2026年度(令和8年度)までにデジタル人材を230万人確保することとされたところであり、公的職業訓練及び人材開発支援助成金では、それぞれ2024年度(令和6年度)にデジタル分野の受講者数65,000人を目指すこととしている。

 デジタル分野に係る公的職業訓練については、IT分野の資格取得を目指す訓練コースについて、訓練実施機関に対する訓練委託費等の上乗せを引き続き実施することに加えて、WEBデザイン等の資格取得を目指すコースや企業実習付きコースへの訓練委託費等の上乗せ措置等により、訓練コースの拡充を図る。ハローワークにおいては、デジタル分野に係る公的職業訓練の受講を推奨し、受講につなげるとともに、訓練開始前から訓練終了後までのきめ細かな個別・伴走型支援により、デジタル分野における再就職の実現を図る。また、人材開発支援助成金の「人への投資促進コース」(「人への投資」関連施策)の高度デジタル人材訓練や「事業展開等リスキリング支援コース」(「人への投資」関連施策)で対象のDXに資する訓練の活用勧奨をはじめ、すべてのコースにおいて、デジタル分野における訓練の活用促進を行う。

(4)雇用維持及び在籍型出向等の取組の支援

 雇用調整助成金による雇用維持の取組への支援を着実に実施するほか、引き続き不正受給対策に取り組む。

 また、在籍型出向は労働者の雇用をしっかりと支えつつ、人材の有効な活用を通じて生産性の維持・向上に資するものであり、労働者の雇用維持に加えてキャリアアップ・能力開発にも効果があることから、産業雇用安定助成金(雇用維持支援コース)による、在籍型出向により雇用維持に取り組む事業主への支援、また、産業雇用安定助成金(事業再構築支援コース)により、事業再構築に必要な新たな人材の円滑な受け入れと当該事業主に雇用される労働者の雇用の安定の確保のため、当該助成金の活用促進について、周知広報を効果的に行える適切な機関と連携して実施する。(「人への投資」関連施策)

(5)企業における人材育成のための積極的な活用勧奨

 「物価高克服・経済再生実現のための総合経済対策」(令和4年10月28日閣議決定)において人への投資の抜本強化を図ることとしており、一社でも多くの企業や労働者の人材の育成・活性化の支援をするため、人材開発支援助成金「人への投資促進コース」及び「事業展開等リスキリング支援コース」の更なる積極的な活用勧奨を図る。(「人への投資」関連施策)

第5 安心して挑戦できる労働市場の創造

1  労働市場の強化・見える化

<課題>

 労働供給制約に起因する人手不足の問題が顕在化しつつある状況の中、人材の有効活用という観点からも、個々人がそれぞれの意欲と能力に応じて活躍するという観点からも円滑な労働移動を可能とする環境整備が重要。その際、労働市場を巡る情報に自由かつ簡便にアクセスできることをはじめ、民間人材サービスも含めた労働市場の機能を強化することにより、個々人の自由な選択を可能とする環境整備が重要。

<取組>

(1)改正職業安定法の施行及び民間人材サービス事業者への指導監督の徹底

 令和4年10月に施行された改正職業安定法の周知及び指導監督の実施を通じて、適正な運営を確保する。また、労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律(昭和60年法律第88号。以下「労働者派遣法」という。)の違反を把握し、又はその疑いのある派遣元事業主の指導監督に万全を期し、第6の2に記載する同一労働同一賃金に加え雇用安定措置に関する事項等、労働者派遣法及び職業安定法をはじめとする労働関係法令の適正な運営の確保につき徹底を図る。

(2)円滑な労働移動に資する情報等の整備

 円滑な労働移動を実現するためには、職業情報、職業能力、職場情報などの情報を「見える化」することが重要である。このうち、職業情報及び職業能力に関する情報については、job tag(職業情報提供サイト(日本版O-NET))において情報を整備しており、職業情報の検索だけでなく、その職業に就くために必要な職業能力、具体的な職業訓練の講座等の情報についてもアクセス可能となっている。

 また、職業能力の「見える化」の観点から、ジョブ・カードの強化・活用促進を図る。

 特に、令和4年10月に公開した新たなウェブサイト「マイジョブ・カード」において、オンライン上でジョブ・カードを作成・管理できるようになったほか、ハローワークインターネットサービスやjob tagと連携した情報取得等ができるようになっており、この積極的な周知、普及促進を図ることも重要である。

  さらに、職場情報総合サイト(しょくばらぼ)において、企業の勤務実態などの働き方や採用状況に関する企業の職場情報を検索・比較することが可能となっている。

 職業相談等の場面においては、求職者のニーズ・状況を踏まえ、こうした情報を活用しながら再就職支援を行うことが重要である。

2  賃金上昇を伴う労働移動の支援

<課題>

 労働移動の円滑化を進めるに当たっては、労働移動に伴う経済的なリスクを可能な限り最小化することが重要。このため、より高い賃金で新たに人を雇い入れる企業への支援などをはじめ、人材の活性化を通じた賃金上昇の好循環の実現を目指した取組を進めることが重要。

<取組>

(1)就職困難者の賃上げを伴う労働移動等の推進

 就労経験のない職業に就くことを希望する就職困難者(母子家庭の母や就職氷河期世代の者など)を雇い入れ、人材育成計画を策定し、人材育成を行った上で、雇入れの日等から起算して5%以上賃金の引上げを行う事業主に対して高額助成を行う(特定求職者雇用開発助成金(成長分野等人材確保・育成コース))(「人への投資」関連施策)。

 離職を余儀なくされた者の早期再就職を支援する労働移動支援助成金(早期雇入れ支援コース)について、前職よりも5%以上賃金を上昇させた事業主に上乗せ助成を行うとともに、再就職援助計画対象者へのきめ細かな再就職支援や、助成金の周知広報を実施することにより、賃金上昇を伴う労働移動を推進する。(「人への投資」関連施策)

 中途採用の機会拡大を図る中途採用等支援助成金(中途採用拡大コース)について、中高年齢者を一定以上雇い入れ、前職よりも5%以上賃金を上昇させた事業主に助成を行うとともに、当該助成金の周知広報について、各地域の商工会議所等と連携して実施することにより、賃金上昇を伴う労働移動を推進する。(「人への投資」関連施策)

(2)地域雇用の課題に対応し良質な雇用の実現を図る都道府県の取組等の支援

 都道府県が地域の課題に対応するため、国の施策と連携を図りつつ、魅力ある雇用機会の確保や企業ニーズにあった人材育成、就職促進等の取組を一体的に行うことを支援することにより、良質な雇用の実現等を図る。

 また、「雇用対策協定」の締結を更に推進することにより、国と地方が一層連携して地域の実情に応じた雇用対策を行うとともに、希望する都道府県及び市区町村においては

 当該団体が行う業務と国が行う無料職業紹介をワンストップで一体的に実施する。

(3)都市部から地方への移住を伴う地域を越えた再就職等の支援

 東京圏及び大阪圏を中心に、地方就職を希望する方にハローワークの全国ネットワークを活用した職業紹介や生活関連情報の提供等を一体的に行うとともに、コロナ禍において都市部を離れて地方で暮らすことへの関心が高まっていることを踏まえ、地方のハローワークにおいても専門の相談員を配置する等により、業種、職種を越えた再就職等も含めた個々のニーズに応じた支援を行う。

(4)就職困難者のデジタル分野への労働移動の推進

 デジタルなどの成長分野への労働移動を進めるため、就職困難者を、デジタルなどの成長分野の業務に従事する労働者として雇い入れる事業主に対して高額助成を行う(特定求職者雇用開発助成金(成長分野等人材確保・育成コース))(「人への投資」関連施策)。

3 継続的なキャリアサポート・就職支援

<課題>

 個々人の主体的なキャリア形成を支える観点からも、労働移動の円滑化を進める観点からも、個々人のニーズに応じた、きめ細かなキャリアサポート・就職支援を継続的に進めていくことが重要。

<取組>

(1)ハローワークの職業紹介業務のオンライン・デジタル化の推進及び求職者支援

 ハローワークにおけるオンライン職業相談の実施、就職支援セミナーのオンライン配信、全国のマザーズハローワークにおける就職支援サービスのオンライン対応の実施、SNS・HPを活用した情報発信の強化等により、求職者のニーズに応じて柔軟に求職活動ができるようオンラインサービスの向上を図る。同時に、再就職に当たり課題を抱える者等については、ハローワークへの来所を促し、課題解決支援サービスを通じたきめ細かな支援を行い、本人の希望やニーズに応じた再就職の実現を図る。

(2)人材確保対策コーナーでの支援、「医療・福祉分野充足促進プロジェクト」の推進

 医療・介護・保育分野など雇用吸収力の高い分野のマッチング支援を強化するため、ハローワークの「人材確保対策コーナー」を中心に、関係団体等と連携した人材確保支援の充実を図るとともに、「医療・福祉分野充足促進プロジェクト」を推進し、潜在求職者の積極的な掘り起こし、求人充足に向けた条件緩和指導等により、重点的なマッチング支援を実施する。

(3)雇用と福祉の連携による、離職者への介護・障害福祉分野への就職支援

 新型コロナウイルス感染症の影響による離職者の再就職や、介護・障害福祉分野における人材確保を支援するため、下記の取組等を実施する。

・ハローワーク、訓練実施機関及び福祉人材センターの連携強化による就職支援

・ 介護・障害福祉分野の訓練コースの設定促進のため、訓練内容に職場見学・職場体験を組み込むことを要件に、訓練委託費等の上乗せ、また、就職後の職場定着に向けた取組として雇用管理改善に関する事業主への助成等を実施する。

(4)ハローワークの就職支援ナビゲーターによる求職者の状況に応じたきめ細かな担当者制支援

 非正規雇用労働者等の早期再就職を支援するため、ハローワークに就職支援ナビゲーターを配置し、担当者制により、①セミナーの受講、応募先企業の選定等今後の活動方法等についての方向付け、②担当する求職者の希望条件を丁寧に把握し、既存の求人の中からその求職者に合った求人を選定、条件に合うものがない場合は、求職者の情報を求人者に提供しつつ個別求人開拓等を実施する。

 あわせて、就職活動のプロセスに複数又は深刻な課題を抱える者に対しては、①履歴書・職務経歴書の個別添削、模擬面接、②ジョブ・カードを活用したキャリアコンサルティング、ジョブ・カードの作成支援等を実施する等体系的かつ計画的な一貫した就職支援を推進する。

(5)求職者支援制度による再就職支援

 雇用保険を受給できない者の安定した職業への再就職や転職を促進するとともに、自らのスキルアップを希望する非正規雇用労働者等を支援するため、就職に必要な技能及び知識を習得するための求職者支援制度の積極的な周知・広報により制度の活用を推進する。

(6)地方公共団体と連携したハローワークにおける生活困窮者等に対する就労支援

 生活保護受給者や生活困窮者等の就労による自立を促進するため、ハローワークにおいて、地方公共団体との協定等に基づき、福祉事務所・自立相談支援機関等への巡回相談や地方公共団体庁舎内へのハローワーク常設窓口の設置等により、ハローワークと地方公共団体が一体となって、早期かつきめ細かな就労支援を実施する。

第6 多様な人材の活躍促進

1  女性活躍・男性の育児休業取得等の促進

<課題>

 管理職に占める女性割合は長期的に見て上昇傾向にあるが(課長相当職に占める女性の割合は令和4年13.9%)、国際的に見ると依然その水準は低い。また、男女の賃金の差異についても長期的に縮小傾向にあるが(男性労働者の所定内給与額を 100.0 とした時の女性労働者の所定内給与額の値は令和4年 75.7)、国際的に見ると我が国の男女の賃金の差異は大きい。こうした状況の中、女性活躍推進をより一層進め、誰もが働きやすい就業環境を整備するため、新たに常時雇用する労働者数 301 人以上の事業主について男女の賃金の差異の公表が必須項目となった女性の職業生活における活躍の推進に関する法律(平成27年法律第64 号。以下「女性活躍推進法」という。)及び雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律(昭和47年法律第113号。以下「男女雇用機会均等法」という。)の履行確保を図るとともに、男女の賃金の差異の情報公表を契機とした女性活躍推進の取組促進等を進める必要がある。

 また、少子高齢化が急速に進展する中で、出産、育児等による労働者の離職を防ぎ、希望に応じて男女とも仕事と育児等を両立できる社会を実現することが重要な課題となっている。男性の育児休業取得率は令和3年度において 13.97%と近年上昇しているものの、女性と比較すると低い水準であり、令和7年度までに男性の育児休業取得率を30%とする政府目標の達成に向けて、更なる取組の強化が必要である。このような状況を踏まえ、改正された育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律(平成3年法律第76号。以下「育児・介護休業法」という。)の履行確保等により、仕事と育児・介護の両立支援の取組を促進する必要がある。

<取組>

(1)女性活躍推進法及び男女雇用機会均等法の履行確保

 令和4年7月8日に施行された女性活躍推進法に基づく改正省令により常時雇用する労働者数 301 人以上の事業主に新たに義務付けられた男女の賃金の差異に係る情報公表について、報告徴収等の実施により、着実に履行確保を図る。また、男女の賃金の差異は、男女の募集・採用、配置・昇進、教育訓練等における男女差の結果として現れるものであることから、差異の要因分析と情報公表を契機とした雇用管理改善及びより一層の女性の活躍推進に向けた取組を促す。この際、「女性の活躍推進企業データベース」の活用を勧奨する。あわせて、募集・採用、配置・昇進、教育訓練等における均等取扱いについて、報告徴収等の実施により、男女雇用機会均等法の履行確保を図る。

 また、妊娠等を理由とする解雇・雇止め等不利益取扱いの禁止について、特に非正規雇用労働者や外国人労働者についても正社員と同様にあってはならないことから、事業主に対し関係法令の周知を図るとともに、相談が寄せられた場合は速やかに必要な指導等を行う。

(2)男性が育児休業を取得しやすい環境の整備に向けた企業の取組支援

①育児・介護休業法の周知及び履行確保

 令和5年4月1日より施行される1,000人超企業を対象とした育児休業等取得状況の公表の義務化について、着実な履行確保を図るとともに、令和4年より施行されている「産後パパ育休」(出生時育児休業)を含め、育児・介護休業法に基づく両立支援制度について労働者が円滑に利用できるよう周知徹底を図る。

 あわせて、労働者の権利侵害が疑われる事案や育児休業の取得等を理由とする不利益取扱いが疑われる事案を把握した場合には、事業主に対する積極的な報告徴収・是正指導等を行う。

②男女とも仕事と育児を両立しやすい環境の整備に向けた企業の取組支援

 「産後パパ育休」のほか、「パパ・ママ育休プラス」や「育児目的休暇」等の男性の育児に資する制度について、あらゆる機会を捉えて周知を行い、制度の活用につなげる。

 また、事業主に対し、「イクメンプロジェクト」において作成する企業の取組事例集や研修資料の活用を促すとともに、男性労働者が育児休業を取得しやすい雇用環境の整備措置を実施した事業主や育児休業の円滑な取得・職場復帰のための取組を実施した事業主等に対する両立支援等助成金の活用を推進し、男女とも仕事と育児が両立できる職場環境の整備を図る。さらに、新型コロナウイルス感染症への対応として小学校等の臨時休業等により子どもの世話をする労働者のために、特別休暇制度及び両立支援制度を導入した事業主への支援を行う。

③仕事と介護の両立ができる職場環境整備

 地域包括支援センター等とも連携した介護休業制度等の周知を十分に行うとともに、介護離職を予防するための企業の取組の全体像を示した「仕事と介護の両立支援対応モデル」の普及や、介護支援プランに基づいて労働者に円滑に介護休業を取得・職場復帰させた事業主及び新型コロナウイルス感染症への対応として家族の介護をする労働者に特別休暇を取得させた事業主等に対する両立支援等助成金の活用促進を通じて、仕事と介護が両立できる職場環境整備を図る。

④次世代育成支援対策の推進

 次世代育成支援対策推進法(平成15年法律第120号。)に基づく一般事業主行動計画の策定等については、各企業の実態に即した計画の策定を支援するとともに、労働者数101人以上の義務企業の届出等の徹底を図る。

 あわせて、「くるみん」、「プラチナくるみん」、「トライくるみん」及び「くるみんプラス」の認定基準について広く周知するとともに、認定の取得促進に向けた働きかけを行う。

(3)マザーズハローワーク等による子育て中の女性等に対する就職支援

 子育てをしながら就職を希望する女性等を対象としたハローワークの専門窓口(マザーズハローワーク、マザーズコーナー)において、個々の求職者のニーズに応じたきめ細かな就職支援を実施するとともに、地域の子育て支援拠点や関係機関と密接に連携してアウトリーチ型の支援を強化する。また、仕事と家庭の両立ができる求人の確保等を推進するとともに、オンラインでの就職支援サービスを実施する。

(4)不妊治療と仕事との両立支援

 令和4年度に創設された不妊治療と仕事との両立支援に関する認定制度「くるみんプラス」の周知及び認定促進を図る。なお、認定を希望する事業主に対しては、本省が実施する不妊治療を受けやすい休暇制度等環境整備事業の「両立支援担当者向け研修会」の活用を勧奨する等の支援を行う。

 また、「不妊治療を受けながら働き続けられる職場づくりのためのマニュアル」や「不妊治療と仕事の両立サポートハンドブック」、不妊治療のために利用できる特別休暇制度の導入等に関する各種助成金等を活用し、性と健康の相談センター(旧名称:不妊専門相談センター)とも連携しつつ、不妊治療と仕事との両立がしやすい職場環境整備の推進のための周知啓発や相談支援を行う。

(5)新型コロナウイルス感染症に関する母性健康管理措置による特別有給休暇制度導入等への取組支援

 男女雇用機会均等法に基づく母性健康管理措置について、新型コロナウイルス感染症の感染状況等を踏まえ改正された「妊娠中及び出産後の女性労働者が保健指導又は健康診査に基づく指導事項を守ることができるようにするために事業主が講ずべき措置に関する指針」(平成9年労働省告示第105号)の内容に沿って事業主において適切な措置が講じられるよう周知・指導等を行う。

 あわせて、引き続き、新型コロナウイルス感染症に関する母性健康管理措置に係る助成金の支給等により、妊娠中の女性労働者が安心して休暇を取得することができる職場環境整備の推進を図る。

2  同一労働同一賃金など雇用形態に関わらない公正な待遇の確保等

<課題>

 短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律(平成5年法律第 76号。以下「パートタイム・有期雇用労働法」という。)が令和3年4月1日より中小企業含め全面適用されており、引き続き、雇用形態に関わらない公正な待遇(同一労働同一賃金)の確保に向けて、非正規雇用労働者の処遇改善や正社員転換を強力に推し進めていく必要がある。また、労働者派遣法の一部改正部分についても令和2年4月1日に施行されており、引き続き、法の履行確保に向けて取り組む必要がある。

 無期転換ルールについて、労使双方に対する認知度向上のため、制度の更なる周知が必要である。

<取組>

(1)雇用形態に関わらない公正な待遇の確保、非正規雇用労働者の正社員化・処遇改善を行う企業への支援

 パートタイム・有期雇用労働法及び労働者派遣法に基づく報告徴収、指導監督等を実施することにより、法の着実な履行確保を図る。その際、監督署と連携し、雇均部(室)は、監督署から提供された情報に基づき、報告徴収を実施し、正社員と短時間労働者又は有期雇用労働者との間の不合理な待遇差等を確認した場合には、是正指導等を行うほか、望ましい雇用管理の改善等の助言を行う。安定部等は、監督署から提供された情報に基づき、指導監督を実施し、正社員等と派遣労働者との間の不合理な待遇差等を確認した場合には、是正指導を行う。あわせて、同一労働同一賃金等に取り組む企業の好事例を収集し、「多様な働き方の実現応援サイト」等を通じて、事業主及び労働者等に対し周知等を実施することなどにより、非正規雇用労働者の待遇改善に係る事業主の取組機運の醸成を図る。

 また、働き方改革推進支援センターによるワンストップ相談窓口において、関係機関や本省が実施する委託事業と連携を図りつつ、社会保険労務士等の専門家による、業界別同一労働同一賃金マニュアル等を活用した、窓口相談やコンサルティング、セミナーの実施等に加え、業種別団体等に対する支援を実施する等、きめ細かな支援を行う。

 非正規雇用労働者の正社員化(多様な正社員を含む)や処遇改善に取り組んだ事業主に対して、キャリアアップ助成金による支援を行う。

(2)無期転換ルールの円滑な運用

 無期転換申込権が発生する契約更新時における労働基準法(昭和22年法律第49号)に基づく労働条件明示の明示事項に、無期転換申込機会と無期転換後の労働条件を追加する省令改正等が令和6年4月に施行されることをはじめとする、令和4年度の労働政策審議会労働条件分科会の議論を踏まえた無期転換ルールの円滑な運用のための制度見直し等について周知・啓発を図る。

3  新規学卒者等への就職支援

<課題>

 新規学卒者等の雇用の安定のため、きめ細かな就労支援や定着支援、職場情報等の見える化を促進していく必要がある。

<取組>

(1)新規学卒者等への就職支援

 新規学卒者等を対象に、新卒応援ハローワーク等に配置された就職支援ナビゲーターの担当者制によるきめ細かな個別支援を実施するとともに、就職活動に際して多種多様な困難を抱える者に対して、関係機関と連携した支援を強化する。

(2)フリーター等への就職支援

 フリーター等(35歳未満で正社員就職を希望する求職者)を対象に、わかものハローワーク等に配置された就職支援ナビゲーターの担当者制による就職プランの作成等の就労支援、就職活動に必要な各種セミナーの開催、求職者のニーズ、能力等に応じた個別求人開拓、就職後の定着支援の実施など、きめ細かな個別支援を通じて正社員就職を支援する。

4  就職氷河期世代の活躍支援

<課題>

 いわゆる就職氷河期世代は、雇用環境が厳しい時期に就職活動を行った世代であり、希望する就職ができず、現在も不本意ながら不安定な仕事に就いている、無業の状態にあるなど、様々な課題に直面している者がいる。そのため、就職氷河期世代の抱える固有の課題(希望する職業とのギャップ、実社会での経験不足等)や今後の人材ニーズを踏まえつつ、個々人の状況に応じた支援により、就職氷河期世代の活躍の場を更に広げられるよう、地域ごとに対象者を把握した上で、具体的な数値目標を立て、令和4年度までの3年間の集中取組期間に加え、令和5年度、6年度の2年間を「第2ステージ」と位置付け、取り組む必要がある。取組に当たっては、就職氷河期世代活躍支援都道府県プラットフォーム(以下「都道府県プラットフォーム」という。)を通じて、地方公共団体や関係団体等地域一体となって進める。

<取組>

(1)ハローワークの専門窓口における専門担当者のチーム制による就職相談、職業紹介、職場定着までの一貫した伴走型支援

 専門担当者によるチームを結成し、個別の支援計画に基づき、キャリアコンサルティング、生活設計面の相談、必要な能力開発施策へのあっせん、求職者の適性・能力等を踏まえた求人開拓、就職後の定着支援などを計画的かつ総合的に実施する。また、事業所が多く立地している地域で求人開拓等の取組を集中的に実施する。

(2)就職氷河期世代の失業者等を正社員で雇い入れる企業への助成金等の活用

 事業主への助成金(特定求職者雇用開発助成金)の支給により、就職氷河期世代の方の正社員としての就職を推進する。

 また、就職氷河期世代等の求職者を一定期間試行雇用する事業主に対して助成(トライアル雇用助成金)することにより、その適性や業務遂行可能性の見極めなど、求職者と求人者の相互理解を促進し、就職氷河期世代の安定的な就職に向けた支援を実施する。

(3)地域若者サポートステーションを通じた継続的な支援

 就職氷河期世代も含め、就労に当たって課題を有する無業者の方々に対し、地域若者サポートステーションにおいて、地方公共団体の労働関係部局等の関係者とも連携しながら、職業的自立に向けた継続的な支援を推進する。

(4)就職氷河期世代の活躍支援のための都道府県プラットフォームを活用した支援

 官民協働で就職氷河期世代の活躍支援に取り組む「都道府県プラットフォーム」において、支援策の周知広報、企業説明会の開催等を通じ、就職氷河期世代の雇入れや正社員化等の支援に取り組むとともに、雇入れ等に係る好事例の収集・発信を実施する。

5  高齢者の就労・社会参加の促進

<課題>

 少子高齢化が急速に進行し人口が減少する中で、我が国の経済社会の活力を維持・向上させるためには、働く意欲がある高齢者が年齢にかかわりなくその能力・経験を十分に発揮し、活躍できる社会を実現することが重要である。このため、事業主において65 歳までの雇用確保措置が確実に講じられるよう取り組むことが必要である。また、令和2年に改正された高年齢者等の雇用の安定等に関する法律(昭和46年法律第68号。令和3年4月1日施行。)により、65歳から70歳までの就業確保措置を講じることが事業主の努力義務となったことから、事業主の取組の促進を図ることが重要である。さらに、高齢者雇用に積極的に取り組む企業への支援や、65歳を超えても働くことを希望する高年齢求職者に対する再就職支援等が必要である。

<取組>

(1)70歳までの就業機会確保等に向けた環境整備や高年齢労働者の処遇改善を行う企業への支援

 70歳までの就業機会確保等に向けた環境整備を図るため、事業主と接触する機会を捉えて、65歳を超える定年引上げや継続雇用制度の導入等に向けた意識啓発・機運醸成を図るほか、60歳から64歳までの高年齢労働者の処遇改善を行う企業への支援(高年齢労働者処遇改善促進助成金)を行う。

 また、(独)高齢・障害・求職者雇用支援機構(以下「高障求機構」という。)において実施している65歳超雇用推進助成金や70歳雇用推進プランナー等による支援が必要と判断される事業主を把握した場合には、高障求機構都道府県支部へ支援を要請する等、効果的な連携を行う。

(2)ハローワークにおける生涯現役支援窓口などのマッチング支援

 65歳以上の再就職支援に重点的に取り組むため、全国300か所のハローワークに設置する「生涯現役支援窓口」において、高齢者のニーズ等を踏まえた職業生活の再設計に係る支援や支援チームによる効果的なマッチング支援を行うとともに、公益財団法人産業雇用安定センターにおいて実施している、高年齢退職予定者のキャリア情報等を登録し、その能力の活用を希望する企業に対して紹介する「高年齢退職予定者キャリア人材バンク事業」についての周知を図る等、効果的な連携を行う。

(3)高齢者の特性に配慮した安全衛生対策を行う企業への支援

 高年齢労働者が安心して安全に働ける職場環境の実現に向けた「高年齢労働者の安全と健康確保のためのガイドライン」(エイジフレンドリーガイドライン)及び中小企業による高年齢労働者の安全・健康確保措置を支援するための補助金(エイジフレンドリー補助金)の周知を図る。

(4)シルバー人材センターなどの地域における多様な就業機会の確保

 地域の高齢者の就業促進を図るため、地域の様々な機関が連携して高齢者等の就業を促進する「生涯現役地域づくり環境整備事業」を実施する。

 また、高齢求職者の多様な就業ニーズに対応するため、シルバー人材センターが提供可能な就業情報を定期的に把握し、臨時的かつ短期的又は軽易な就業を希望する高齢者には、シルバー人材センターへの誘導を行う。

 一方、早期に求人充足に至る可能性が低い求人を提出している事業主に対しては、シルバー人材センターで取り扱う仕事を説明し、シルバー人材センターの活用を相談・助言する。

6  障害者の就労促進

<課題>

 令和4年12月の臨時国会において、多様な就労ニーズへの対応や、雇用の質の向上等を図る観点から、障害者の雇用の促進等に関する法律(昭和35年法律第123号)の改正を含む法律(以下、「改正障害者雇用促進法」という。)が成立し、令和5年4月以降随時施行されるところであり、その施行を着実に図ることが必要である。また、令和5年4月からの新たな法定雇用率が2.7%(公務部門3.0%)とされ、今後、その段階的な引上げや、除外率の10ポイント引下げが予定される中、障害者の雇入れ支援等の強化が必要である。

<取組>

(1)中小企業をはじめとした障害者の雇入れ支援等

 令和5年4月からの新たな法定雇用率が2.7%とされ、令和6年4月から2.5%、令和8年7月から2.7%に段階的に引き上げられるとともに、令和7年4月に除外率が10ポイント引き下げられる予定である。このような中、特に除外率設定業種において不足数が大幅に増加する企業が生じるなど、雇用率未達成企業の増加が見込まれるため、これらの企業に対して、障害者の業務の選定に関する助言等の雇入れ支援を積極的に行ない、早期対応を促進する。あわせて、特に障害者の雇用経験や雇用ノウハウが不足している障害者雇用ゼロ企業等に対して、ハローワークと地域の関係機関が連携し、採用の準備段階から採用後の職場定着まで一貫したチーム支援等を実施し、中小企業をはじめとして、障害者の雇入れ支援等の一層の強化を図る。

 労働局が委託して実施する障害者就業・生活支援センターについては、障害者の就労支援における雇用施策と福祉施策を繋ぐ機能を有しており、その役割は一層重要になっていることから、支援に係るコーディネートをより適切かつ効果的に実施するため、障害者就業・生活支援センターが行うネットワーク機能の強化を図る。

(2)改正障害者雇用促進法の円滑な施行

 改正障害者雇用促進法により、①事業主の責務を明確化すること(職業能力の開発及び向上に関する措置の追加)、②LLP(有限責任事業組合)を事業協同組合等の算定特例の対象にすること等が、令和5年4月に施行される予定である。

 特に、①について、法改正の趣旨を踏まえ、事業主がキャリア形成の支援を含む適正な雇用管理に一層取り組むよう、雇用の質の向上に向けた事業主への助言・指導を積極的に行う。

(3)精神障害者、発達障害者、難病患者等の多様な障害特性に対応した就労支援

 精神障害者、発達障害者、難病患者である求職者についてハローワークに専門の担当者を配置するなど多様な障害特性に対応した就労支援を推進する。特に、発達障害等により就職活動に困難な課題を抱える学生等に対する就職準備から就職・職場定着までの一貫した支援及び難病患者である求職者に対する就労支援体制の強化を図る。

 また、障害者の職業訓練については、都道府県等において、障害者職業能力開発校における職業訓練や障害者委託訓練等、在職者訓練を実施しており、労働局及びハローワークにおいては、公共職業訓練の活用による障害者の職業能力開発の促進が図られるよう、都道府県等と連携のうえ、障害者の職業訓練の周知や受講勧奨等を実施する。周知等に当たっては、(2)①の法改正の趣旨を踏まえ、障害者の雇用後の能力開発及び向上に向けて、労働局及びハローワークにおいて都道府県等が実施する在職者訓練の活用を促す。

(4)障害者の雇用を促進するためのテレワークの支援

 障害者雇用に取り組む一つの選択肢としてテレワークを提案するほか、障害者をテレワークにより雇用したいと考えている事業所等に対しては、本省が委託して実施する企業向けのガイダンス及びコンサルティングに誘導することを通じて、障害者の雇用を促進するためのテレワークの推進を図る。

(5)公務部門における障害者の雇用促進・定着支援

 (1)と同様に、令和5年4月からの新たな法定雇用率が3.0%とされ、令和6年4月から2.8%、令和8年7月から3.0%と段階的に引き上げられるとともに、令和7年4月に除外率が10ポイント引き下げられる予定である。公務部門においても雇用率達成に向けた計画的な採用が行われるよう、労働局及びハローワークから啓発・助言等を行う。また、雇用される障害者の雇用促進・定着支援を引き続き推進するため、労働局及びハローワークにおいて、障害特性に応じた個別支援、障害に対する理解促進のための研修等を行う。

7  外国人に対する支援

<課題>

 外国人労働者が、安心して働き、その能力を十分に発揮する環境を確保するため、支援体制の整備を推進する必要がある。

 また、新型コロナウイルス感染症にかかる水際対策が緩和され、今後、様々な在留資格の外国人労働者の増加が見込まれる。そうした中で、外国人労働者の雇用管理のための事業主への指導、相談支援等がより一層重要となる。また、ウクライナ避難民や増加が見込まれる留学生等への就職支援についても引き続き取り組んでいく必要がある。

<取組>

(1)外国人求職者等に対する就職支援

①外国人留学生等に対する相談支援の実施

 ハローワークの外国人雇用サービスセンターや留学生コーナーにおいて、留学早期の意識啓発からマッチング、就職後の定着に至るまで段階に応じた支援を実施する。特に、大学と就職支援協定を締結したハローワークにおいては、当該大学と連携し、外国人留学生の国内就職推進に向け一貫した支援を実施する。

②定住外国人等に対する相談支援の実施

 定住外国人等が多く所在する地域のハローワーク(外国人雇用サービスコーナー)において、専門相談員による職業相談や、個々の外国人の特性に応じた求人開拓のほか、外国人を支援するNPO法人等との連携強化により、早期再就職支援及び安定的な就労の確保に向けた支援を実施する。

③外国人就労・定着支援事業の実施

 日系人等の定住外国人について、日本の職場におけるコミュニケーション能力の向上やビジネスマナー等に関する知識の習得を通じ、安定的な就職と職場への定着が可能となるよう、受託事業者と連携した就職支援等を実施する。

④ウクライナ避難民への就労支援の実施

 ハローワークの相談窓口の日本語・英語・ウクライナ語での周知のほか、全国4か所の外国人雇用サービスセンターにてウクライナ語の通訳を設置し、相談対応を実施している。また、全国のハローワークにおいて支援申出企業等への声かけ、求人化に向けた調整を行うほか、労働局・ハローワークと関係機関が連携した就労支援セミナーや企業向けの説明会の実施など、今後も就労を希望する避難民に向けたきめ細かな支援を実施する。

(2)ハローワーク等における多言語相談支援体制の整備

 地域の実情を踏まえ、職業相談窓口に適正に通訳員を配置するとともに、電話や映像を用いた通訳・多言語音声翻訳機器等の活用や、外国人求職者への多言語による情報発信等により、多言語による相談支援体制の整備を図る。

(3)外国人労働者の適正な雇用管理に関する助言・援助等の実施、外国人労働者の雇用管理改善に取り組む企業への支援

 外国人労働者に対する適正な雇用管理の確保を図るため、事業所訪問等による雇用管理状況の確認、改善のための助言・援助等を行うとともに、雇用維持のための相談・支援等についても積極的に実施する。

 また、外国人特有の事情に配慮した就労環境の整備を行い、外国人労働者の職場定着のための雇用管理改善に取り組む事業主に対して、その経費の一部について助成(人材確保等支援助成金)を行う。

(4)外国人雇用実態調査の実施について

  外国人労働者の雇用管理の実態、労働移動の実態を適切に把握するため、外国人労働者を雇用する事業所及び雇用されている労働者を対象に令和5年度から新設する外国人雇用実態調査について、秋頃の調査実施を予定しているため、外国人労働者問題啓発月間や外国人雇用管理セミナー、雇用管理指導の場等を活用し、広く周知を図るとともに、調査への協力依頼を行う。

(5)外国人労働者の労働条件等の相談・支援体制の整備

 地域の実情に即し、外国語で対応できる相談員を労働局や監督署に配置することで、全国で合計 13 言語に及ぶ外国人労働者向け多言語労働相談体制の整備を図るとともに、外国人労働者が容易に理解できる労働安全衛生に関する視聴覚教材等の周知等効果的な安全衛生教育の実施を促進することにより、労働災害防止対策を推進する。

(6)高度外国人材の受入れに係る制度見直しについて

 教育未来創造会議において、留学生の卒業後の活躍に向けた環境整備等の検討を行っている。こうしたことを踏まえ、卒業後の留学生が我が国で就職、定着するよう、留学生への適切な相談・支援等や高度人材の雇用を行い、又はその雇用に関心のある事業主への助言・指導等の対応に努めること。

第7  多様な選択を力強く支える環境整備

1  柔軟な働き方がしやすい環境整備

<課題>

 ウィズコロナ・ポストコロナの「新しい働き方」としてテレワークが広がっており、情報通信技術を活用した働き方として、雇用に限らず、フリーランスや、副業・兼業での働き方が広がる可能性がある。このため、このような働き方がしやすい環境を整備する必要がある。

 テレワークについては、令和4年度より、総務省と連携し、テレワークに関する労務管理とICT(情報通信技術)活用の双方についてワンストップで相談できる窓口を設置し、テレワークを導入しようとする企業等に対しワンストップでの総合的な支援を行っている。また、テレワークの導入・実施に当たり、労使双方が留意すべき点、望ましい取組などを明らかにした「テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドライン」を令和3年3月に改定し、この周知を行うとともに、「人材確保等支援助成金(テレワークコース)」において、中小企業事業主に対し、テレワークに係る導入経費等を助成しており、これらの取組を通じ、適正な労務管理の下で安心して働くことができるテレワークの導入・定着促進を図る必要がある。

 フリーランスについては、「成長戦略実行計画」(令和2年7月17日閣議決定)を踏まえ、関係省庁と連携し、事業者とフリーランスとの取引について、独占禁止法や労働関係法令等の適用関係等を明確化した「フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドライン」を令和3年3月に策定した。また、「規制改革実施計画」(令和2年7月17日閣議決定)を踏まえ、関係省庁と連携し、フリーランスと発注者の間にトラブル等が生じた際にワンストップで相談できる相談窓口「フリーランス・トラブル110番」を令和2年11月に設置したところであり、フリーランスの方が安心して働ける環境を整備するため、本ガイドライン及び相談窓口の周知を図る必要がある。

 また、副業・兼業については、「働き方改革実行計画」(平成29年3月28日働き方改革実現会議決定)において、複数の事業所で働く方の保護等の観点や副業・兼業を普及促進させる観点から、労働時間管理及び健康管理の在り方等について検討することとされていた。これを踏まえ、労働政策審議会労働条件分科会及び安全衛生分科会において検討を行い、令和2年9月に「副業・兼業の促進に関するガイドライン」(平成 30 年1月策定)を改定して、副業・兼業の場合における労働時間管理及び健康管理についてルールを明確化し、また、同日に複数就業者のセーフティーネットの整備に係る改正労働者災害補償保険法(昭和22年法律第50号)が施行された。さらに、令和4年7月に本ガイドラインを改定し、副業・兼業を希望する労働者が、適切な職業選択を通じ、多様なキャリア形成を図っていくことを促進するために、起業に、副業・兼業への対応状況についての情報公開を推奨している。

 労働者が健康を確保しながら安心して副業・兼業を行うことができるよう、本ガイドラインの周知を図ることが必要である。

 また、「経済財政運営と改革の基本方針2022」(令和4年6月7日閣議決定)等を踏まえ、選択的週休3日制度についても、引き続き好事例の収集・提供等により企業における導入を促し、普及を図る必要がある。多様な正社員(勤務時間限定正社員、勤務地限定正社員、職務限定正社員)制度についても、事例の周知等を行う必要がある。

<取組>

(1)良質なテレワークの導入・定着促進

 テレワークについて、適正な労務管理の下で安心して働くことができるテレワークの導入・定着促進を図るため、テレワークの導入や働き方の見直しについて相談があった企業等に対し、テレワークに関する労務管理とICT(情報通信技術)活用の双方についてワンストップで相談できる窓口を設置しているテレワーク相談センターの紹介や、同センターで開催するセミナーの周知や参加等の働きかけを行うなど、同センターとの間で緊密な連携を図る。

 また、引き続き、様々な機会を捉え、「テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドライン」の周知を行うとともに、「人材確保等支援助成金(テレワークコース)」を中小企業事業主に最大限活用していただくよう、周知を図っていく。

(2)フリーランスと発注者との契約のトラブル等に関する関係省庁と連携した相談支援等

 フリーランスの方から発注者等との契約等のトラブルについての相談があった際には、「フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドライン」を踏まえ、「フリーランス・トラブル 110 番」を紹介するなど適切に対応する。また、当該ガイドラインでは、フリーランスとして業務を行っていても、労働基準法等における労働者に該当する場合には、労働関係法令が適用されることを明確化したところであり、請負契約等のフリーランスの契約名称にかかわらず、その労働実態から労働基準法等の労働者に該当する場合には、引き続き必要な保護を図る。また、総合労働相談コーナーにおいては、同ガイドラインを踏まえ、適切に相談対応を行うとともに、相談内容から労働基準法等の法律に違反する疑いがある場合は、労働局又は監督署の担当部署と調整の上、担当部署に取次ぎを行う。

 また、「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画」(令和4年6月7日閣議決定)において、事業者とフリーランスの取引に関し、「取引適正化のための法制度について検討し、早期に国会に提出する」とされたことを踏まえ、関係省庁と連携して、法案を国会に提出しているところであり、成立した際には、法の内容を積極的に周知する。

(3)副業・兼業を行う労働者の健康確保に取り組む企業等への支援等

 副業・兼業を行う労働者の健康確保に向けた取組が進むよう、労働者自身が副業・兼業先を含む労働時間や健康状態を管理できるアプリ(マルチジョブ健康管理ツール)の周知を行う。

 また、自身の能力を一企業にとらわれずに幅広く発揮したいなどの希望を持つ労働者が、希望に応じて幅広く副業・兼業を行える環境の整備に向けて、「副業・兼業の促進に関するガイドライン」等について、分かりやすい解説パンフレットや事例集等を活用した周知等を行う。

(4)ワーク・ライフ・バランスを促進する休暇制度・就業形態の導入支援による多様な働き方の普及・促進

 選択的週休3日制度も含め、働き方・休み方改革に取り組んでいる企業の好事例の紹介を行うとともに、多様な正社員制度について、事例の提供等による更なる周知等を行う。

2  安全で健康に働くことができる環境づくり

<課題>

 中小企業・小規模事業者等が生産性を高めつつ労働時間の短縮等に向けた具体的な取組を行い、働き方改革を実現することができるよう、中小企業・小規模事業者等に寄り添った相談・支援を推進することが重要である。

 また、多様な働き方が広がる中、ワーク・ライフ・バランスを推進するため、最低基準である労働基準法等の履行確保を図ることに加え、労使の自主的な取組を促進させることが重要である。

 加えて、勤務間インターバル制度は、労働者の健康の維持・向上とワーク・ライフ・バランスの確保に資することを踏まえ、その導入の必要性や効果を周知する取組が必要である。さらに、労働者一人ひとりが安全で健康に働くことができる職場環境の実現のため、令和5年度を初年度とする第14次労働災害防止計画(以下、「14次防」という。)が策定されたところであり、同計画にも定められている自発的に安全衛生対策に取り組むための意識啓発や、労働者の作業行動に起因する労働災害、高年齢労働者等の労働災害及び業種別の労働災害防止対策を推進するとともに、個人事業者等に対する安全衛生対策の推進や労働者の健康確保対策及び化学物質等による健康障害防止対策等にも取り組んでいく必要がある。

 労災保険給付の状況については、近年、新規受給者数が増加傾向にあることに加え、過労死等事案、石綿関連事案に係る労災請求件数も増加傾向にある。さらに、新型コロナウイルス感染症に係る労災保険給付への対応も求められている。このような状況の中で、被災労働者の迅速な保護を図るために、迅速かつ公正な事務処理に努める必要がある。

 職場におけるハラスメントは、労働者の尊厳を傷つける、あってはならないことであり、働く人の能力の発揮の妨げになる。このため、労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律(昭和41年法律第132号。以下「労働施策総合推進法」という。)、男女雇用機会均等法及び育児・介護休業法に基づくパワーハラスメント、セクシュアルハラスメント及び妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメントの防止措置義務の履行確保を徹底する等、職場におけるハラスメント対策を総合的に推進する必要がある。

 また、新型コロナウイルス感染症の職場における感染防止対策に取り組む必要がある。

<取組>

(1)長時間労働の抑制

①生産性を高めながら労働時間の縮減等に取り組む事業者等の支援

 「働き方改革推進支援センター」のうち、各都道府県に設置する都道府県センターによるワンストップ相談窓口において、関係機関や「働き方改革推進支援センター」のうち、本省が委託する全国センター(以下「全国センター」という。)と連携を図りつつ、窓口相談やコンサルティング、セミナーの実施等に加え、業種別団体等に対する支援を実施する等、きめ細かな支援を行う。また、生産性を高めながら労働時間の短縮等に取り組む中小企業・小規模事業者に対して助成(働き方改革推進支援助成金)を行うとともに、働き方・休み方改善ポータルサイトを通じた企業の改善策の提供と好事例の紹介、働き方・休み方改善コンサルタントによる専門的な助言・指導等を行う。

 全ての監督署に編成した「労働時間改善指導・援助チーム」のうち「労働時間相談・支援班」において、説明会の開催や中小規模の事業場への個別訪問により、平成 31 年4月1日から順次施行された改正労働基準法等の周知や、テレワーク等の新しい働き方に対応した適切な労務管理の支援等を中心としたきめ細かな相談・支援等を行う。

②時間外労働の上限規制適用猶予事業・業種への労働時間短縮等に向けた支援

 令和6年4月から時間外労働の上限規制の適用が猶予されていた医師、自動車運転者、建設業等についても、上限規制が適用されることとなる。

 医師については、都道府県医療勤務環境改善支援センターなどと連携し、医療機関への適切な支援を行うとともに、宿日直許可申請等に関する医療機関からの相談に対し、懇切丁寧な対応を行う。

 自動車運送業については、令和6年4月から適用される改正後の改善基準告示について労働時間等説明会等においても丁寧に周知を行うとともに、労働者の運転免許取得のための職業訓練等の支援を行う。特にトラック運送業については、労働局に編成した「荷主特別対策チーム」において、発着荷主等に対して、長時間の恒常的な荷待ち時間を発生させないこと等についての監督署による要請と、その改善に向けた労働局による働きかけを行う。また、「トラック運転者の長時間労働改善特別相談センター」の教示等を行い、必要に応じて利用勧奨を行う。

 建設業については、建設労働者の処遇改善のための建設キャリアアップシステム等の普及を推進するなど、長時間労働の抑制、人材確保対策の推進等に向けた支援を行う。また、全国センターに、建設業への専門的な支援を行う特別相談窓口を新たに設置するため、必要に応じて、窓口の教示等を行う。

 また、これら適用猶予事業・業種に対しては、生産性向上を図りながら労働時間短縮に取り組むための助成金(働き方改革推進支援助成金)の活用を促進し、支援を行う。

③勤務間インターバル制度の導入促進

 勤務間インターバル制度の導入促進に当たっては、企業等に対し、導入の効果や導入フローを分かりやすく説明することが重要である。

 このため、企業等への説明会(ワークショップを含む)の際には、働き方・休み方改善ポータルサイトに掲載されている専門家によるアーカイブ動画や導入マニュアルを活用し、実例に即した説明を行うなど、丁寧な対応を行う。

 これに加え、中小企業が活用できる働き方改革推進支援助成金を活用して、長時間労働が懸念される企業等への導入促進を図る。

④長時間労働の抑制に向けた監督指導の徹底等

 長時間労働の抑制及び過重労働による健康障害を防止するため、各種情報から時間外・休日労働時間数が1か月当たり80時間を超えていると考えられる事業場及び長時間にわたる過重な労働による過労死等に係る労災請求が行われた事業場に対する監督指導を引き続き実施する。

 また、過労死等の防止のための対策については、過労死等防止対策推進法(平成26 年法律第100号)並びに同法に基づき定めた「過労死等の防止のための対策に関する大綱」(令和3年7月30日閣議決定)及び「過労死等の防止のための対策に関する大綱の変更について」(令和3年7月30日付基発0730第1号)により、労働行政機関等における対策とともに、民間団体の活動に対する支援等の対策を効果的に推進する。

⑤長時間労働につながる取引環境の見直し

 大企業・親事業者の働き方改革に伴う下請等中小事業者への「しわ寄せ」防止については、例年11月に実施している「しわ寄せ防止キャンペーン月間」に、集中的な周知啓発を行うなど、引き続き、「大企業・親事業者の働き方改革に伴う下請等中小事業者への『しわ寄せ』防止のための総合対策」に基づき、関係省庁と連携を図りつつ、その防止に努める。

 働き方改革の推進に向けた中小企業における労働条件の確保・改善のため、監督指導の結果、下請中小企業等の労働基準関係法令違反の背景に、親事業者等の下請代金支払遅延等防止法(昭和31年法律第120号)等の違反が疑われる場合には、中小企業庁、公正取引委員会及び国土交通省に確実に通報する。

⑥年次有給休暇の取得促進等による休み方改革の推進

 年次有給休暇の取得促進に向けて、年次有給休暇の時季指定義務の周知徹底や、計画的付与制度及び時間単位年次有給休暇の導入促進を行うとともに、例年10月に実施している「年次有給休暇取得促進期間」や、年次有給休暇を取得しやすい時季に集中的な広報を行う。

 また、地域のイベントや学校休業日の分散化(キッズウィーク)に合わせて年次有給休暇が取得できるよう取り組むとともに、病気休暇、ボランティア休暇等の特別休暇についても、企業への導入を図る。

⑦労働施策総合推進法に基づく協議会等について

 労働施策総合推進法に基づく協議会は、中小企業・小規模事業者の働き方改革が円滑に進むよう、また、地方版政労使会議は、地域における若者や非正規雇用労働者等の労働環境や処遇の改善等に向けた機運が高まるよう、地域の政労使の代表者の協力を得て、それぞれの会議体を開催する。

(2)労働条件の確保・改善対策

①新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえた企業に対する適切な労務管理に関する啓発指導等の実施

 新型コロナウイルス感染症の影響による大量整理解雇等に関する情報収集及び関係部局間での情報共有に努め、関係部局と連携を図り、適切な労務管理がなされるよう啓発指導を実施する。

 また、新型コロナウイルス感染症の影響による企業活動の縮小等に伴う相談がなされた場合には、「新型コロナウイルスに関するQ&A」や各種支援策のパンフレット等を活用し、適切に対応する。

 さらに、新型コロナウイルス感染症の影響による企業倒産に伴い賃金の支払を受けられないまま退職した労働者の救済を図るため、不正受給防止に留意しつつ、未払賃金立替払制度を迅速かつ適正に運用する。

②法定労働条件の確保等

 管内の実情を踏まえつつ、事業場における基本的労働条件の枠組み及び管理体制の確立を図らせ、これを定着させることが重要であり、労働基準関係法令の遵守の徹底を図るとともに、重大・悪質な事案に対しては、司法処分も含め厳正に対処する。

 さらに、「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」の周知を徹底し、監督指導において同ガイドラインに基づいて労働時間管理が行われているか確認し、賃金不払残業が認められた場合には、その是正を指導する。

 加えて、平日夜間、土日・祝日に実施している「労働条件相談ほっとライン」に寄せられた情報や、インターネット情報監視により収集された情報に基づき、必要に応じて監督指導を実施する。さらに、労働条件に関する悩みの解消に役立つポータルサイト「確かめよう労働条件」の活用を促進するとともに、同ポータルサイトで案内している高校生・大学生等に対する労働法教育に係るセミナーや、高校・大学の教員等に対する労働法の教え方に関するセミナー及び指導者用資料について周知を行う。

③裁量労働制の適正な運用

 引き続き、現行の裁量労働制について、不適正な運用の疑いがある事業場に対する監督指導などを実施する。また、令和4年度の労働政策審議会労働条件分科会の議論に基づき改正される省令等が令和6年4月に施行されることを踏まえ、裁量労働制導入事業場の認知及び理解の状況を踏まえ、別途指示するところにより、今後作成するパンフレット等を活用して改正内容について周知を行う。

④労働契約関係の明確化 

 労働基準法に基づく労働条件明示事項に、就業場所・業務の変更の範囲を追加する省令改正が令和6年4月に施行されることをはじめとする、令和4年度の労働政策審議会労働条件分科会の議論を踏まえた労働契約関係の明確化のための制度見直し等について周知・啓発を図る。

⑤特定の労働分野における労働条件確保対策の推進

 外国人労働者、自動車運転者、障害者である労働者及び介護労働者の法定労働条件を確保するため、関係機関とも連携し、労働基準関係法令の周知等を図るとともに、労働基準関係法令違反の疑いがある事業場に対する監督指導などを実施する。

 特に外国人労働者、自動車運転者及び障害者である労働者については、以下の重点的な取組を行う。

ア 外国人労働者

 技能実習生等の外国人労働者については、労働基準関係法令違反の疑いがある事業場に対して重点的に監督指導を実施し、重大・悪質な労働基準関係法令違反が認められる事案に対しては、司法処分を含め厳正に対処する。また、出入国在留管理機関及び外国人技能実習機構との相互通報制度を確実に運用する。

 特に、技能実習生に対する労働搾取目的の人身取引が疑われる事案については、「人身取引取締りマニュアル」を参考にしつつ、外国人技能実習機構との合同監督・調査や関係機関との連携を着実に実施し、労働基準関係法令違反が認められ、悪質性が認められるもの等については、司法処分を含め厳正に対処する。

イ 自動車運転者

 自動車運転者については、違法な長時間労働等が疑われる事業場に対し的確に監督指導を実施するなどの対応を行う。また、地方運輸機関と連携し、相互通報制度を確実に運用するとともに、地方運輸機関と協議の上、合同監督・監査を行う。

 加えて、タクシー運転者の賃金制度のうち、累進歩合制度の廃止に係る指導等について、徹底を図る。

ウ 障害者である労働者

 障害者虐待防止の観点も含め、障害者である労働者の法定労働条件の履行確保を図るため、関係機関との連携を深め、積極的な情報の共有を行うとともに、障害者である労働者を使用する事業主に対する啓発・指導に努め、問題事案の発生防止及び早期是正を図る。

⑥「労災かくし」の排除に係る対策の一層の推進

 「労災かくし」の排除を期すため、その防止に向けた周知・啓発を図るとともに、引き続き、労災補償担当部署と監督・安全衛生担当部署間で連携を図りつつ、事案の把握及び調査を行い、「労災かくし」が明らかになった場合には、司法処分を含め厳正に対処する。

⑦各種権限の公正かつ斉一的な行使の徹底

 地方労働基準監察監督官制度の的確な運用等により、行政指導の適正な実施とその水準の維持・向上を図るとともに、監督権限をはじめとする各種権限の公正かつ斉一的な行使を確保する。

 また、監督指導において法違反が認められた場合には、事業主にその内容や是正の必要性を分かりやすく説明することにより、事業主による自主的な改善を促すとともに、きめ細かな情報提供や具体的な是正・改善に向けた取組方法を助言するなど、丁寧かつ具体的に対応する。特に、中小企業の事業場への監督指導に当たっては、中小企業における労働時間の動向、人材確保の状況、取引の実態その他の事情を十分に聴いた上で、その事情を踏まえて丁寧に対応する。

⑧社会保険労務士制度の適切な運営

 社会保険労務士の不正事案を把握した場合には、懲戒処分の適正かつ厳格な実施のため、関係者に対し事実関係の聴取を確実に実施すること等により適切な調査を実施する。

(3)14次防を踏まえた労働者が安全で健康に働くことができる環境の整備

①事業者が自発的に安全衛生対策に取り組むための意識啓発

 事業者が自発的に安全衛生対策に取り組むため、様々な機会を通じて、安全衛生対策に取り組む必要性や意義等について周知啓発を行うとともに、加えて安全衛生対策に取り組むことが、事業者にとって経営や人材確保・育成の観点からもプラスとなることも、積極的に周知啓発を図っていく。

 さらに、発注者等において安全で衛生的な作業の遂行を損なうおそれのある条件を付さないことや安全衛生対策経費の確保の必要性について周知を図るとともに、機会を捉え、消費者・サービス利用者に対しても、事業者が行う安全衛生対策の必要性や、事業者から提供されるサービスに安全衛生対策に要する経費が含まれることへの理解を促すこと。

②労働者(中高年齢の女性を中心に)の作業行動に起因する労働災害防止対策の推進中高年齢の女性をはじめとして発症率が高く、小売業や介護施設を中心に増加傾向にある「転倒」及び腰痛等の「動作の反動・無理な動作」など、職場における労働者の作業行動を起因とする労働災害(行動災害)への対策については、管内のリーディングカンパニー等を構成員とする協議会の設置・運営、企業における自主的な安全衛生活動の導入を支援する取組等により、管内全体の安全衛生に対する機運醸成を図る。

③高年齢労働者、外国人労働者等の労働災害防止対策の推進

 高年齢労働者が安心して安全に働ける職場環境の実現に向けた「高年齢労働者の安全と健康確保のためのガイドライン」(エイジフレンドリーガイドライン)及び中小企業による高年齢労働者の安全・健康確保措置を支援するための補助金(エイジフレンドリー補助金)の周知を図る。

 また、技能実習生をはじめとした外国人労働者が容易に理解できる労働安全衛生に関する視聴覚教材等の周知等効果的な安全衛生教育の実施を促進することにより、外国人労働者の労働災害防止対策を推進するとともに、障害のある労働者の安全衛生対策に係る事例等を周知することにより、障害のある労働者の安全衛生対策を促進する。

④個人事業業者等に対する安全衛生対策の推進

 令和3年5月の最高裁判決を踏まえ、請負人や同じ場所で作業を行う労働者以外の者に対しても、労働者と同等の保護措置を講じることを事業者に義務付ける改正省令が令和5年4月1日より施行されるため、事業場に対して指導、周知・啓発を図る。

⑤業種別の労働災害防止対策の推進

 陸上貨物運送事業については、貨物自動車における荷役作業での労働災害を防止するため、昇降設備の設置及び保護帽の着用が必要な貨物自動車の範囲を最大積載量2トン以上にまで拡大すること、テールゲートリフターによる荷役作業についての特別教育の義務化などを内容とする改正後の労働安全衛生規則(昭和47年労働省令第32 号。以下「改正労働安全衛生規則」という。)等について指導、周知を図る。また、荷主等も含め、「陸上貨物運送事業における荷役作業の安全対策ガイドライン」の周知を行い取組の促進を図る。

 建設業については、墜落・転落災害防止対策の充実強化のため、一側足場の使用範囲の明確化、足場の点検を行う際の点検者の指名の義務化などを内容とする改正労働安全衛生規則や関係ガイドラインの改正等について指導、周知を図るとともに、引き続き、建設工事における労働災害防止対策の促進を図る。

 製造業については、機械災害の防止のため、「危険性又は有害性等の調査等に関する指針」及び「機械の包括的な安全基準に関する指針」に基づき、製造時及び使用時のリスクアセスメント、残留リスクの情報提供の確実な実施を促進する。

 林業については、「チェーンソーによる伐採作業等の安全に関するガイドライン」や「林業の作業現場における緊急連絡体制の整備等のためのガイドライン」の周知徹底を図るとともに、林業における労働災害防止対策の促進を図る。

⑥ 労働者の健康確保対策の推進

ア メンタルヘルス対策及び過重労働対策等

 長時間労働やメンタルヘルス不調などによる健康障害を防止するため、長時間労働者に対する医師による面接指導やストレスチェック制度をはじめとするメンタルヘルス対策などの労働者の健康確保の取組が各事業場で適切に実施されるよう、引き続き指導等を行うとともに、労働者のメンタルヘルス対策に係る情報提供・相談等を行う「働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト「こころの耳」」について周知を行う。

 また、「事業場における労働者の健康保持増進のための指針(THP指針(※))」に基づく事業場における健康保持増進の取組を促進するため、取組方法や好事例を示した手引きや事業者が医療保険者と連携して実施したコラボヘルスの取組に要した費用の一部を補助するエイジフレンドリー補助金の周知を行う。この際、医療保険者から定期健康診断に関する記録の写しの提供の求めがあった場合に、事業者は、当該記録の写しを医療保険者に提供する必要があることについてもあわせて周知を行う。

※ トータル・ヘルスプロモーション・プラン(Total Health promotion Plan)

イ 産業保健活動の推進

 中小企業・小規模事業者の産業保健活動を支援するため、産業保健総合支援センター(以下「産保センター」という。)が行う産業医等の産業保健スタッフや事業者向けの研修、地域産業保健センターによる小規模事業場への医師等の訪問支援、

(独)労働者健康安全機構による団体経由産業保健活動推進助成金等について利用勧奨を行う。

 加えて、治療と仕事の両立支援に関する取組の促進のため、引き続き、ガイドライン等の周知啓発を行うとともに、労働局に設置する「地域両立支援推進チーム」において取組に関する計画を策定し、両立支援に係る関係者(都道府県衛生主管部局、医療機関、企業、労使団体、産保センター、労災病院等)の取組を相互に周知・協力する等により、地域の両立支援に係る取組の効果的な連携と一層の促進を図る。

 また、主治医、会社・産業医と患者に寄り添う両立支援コーディネーターのトライアングル型のサポート体制を推進する。このため、地域両立支援推進チーム等を通じて地域の関係者に両立支援コーディネーターの役割についての理解の普及を図るとともに、(独)労働者健康安全機構で開催する養成研修の周知・受講勧奨を図る。

⑦ 新たな化学物質規制の周知、石綿ばく露防止対策の徹底

 令和4年2月及び5月に公布された新たな化学物質規制に係る労働安全衛生関係法令について、その円滑な実施のため引き続き周知を図るとともに、SDS(Safety

 Data Sheet(安全データシート))等に基づくリスクアセスメント等の実施及びその結果に基づくばく露低減措置が適切に実施されるよう丁寧な指導を行う。

 労働者の化学物質のばく露防止に向け、呼吸用保護具の適正な使用が重要であることから、フィットテストの円滑な導入に向け補助金制度の活用を含めた周知を行う。

 建築物等の解体・改修作業に従事する労働者の石綿ばく露を防止するため、令和2年7月に改正された石綿障害予防規則(平成17年厚生労働省令第21号)に基づく措置の履行確保のため、建築物石綿含有建材調査者講習の受講勧奨及び当該講習の修了者による調査の徹底、石綿事前調査結果報告システムによる事前調査結果等の報告や石綿除去等作業時におけるばく露防止措置の徹底、並びにリフォーム等も含む解体等工事の発注者への制度の周知を図る。

 さらに、建設アスベスト給付金制度の周知啓発を図るとともに、懇切丁寧な相談支援を行う。

(4)労災保険給付の迅速・適正な処理

 労災保険給付の請求については、標準処理期間内に完結する迅速な事務処理を行うとともに、認定基準等に基づいた適正な認定に万全を期する。

 特に社会的関心が高い過労死等事案をはじめとする複雑困難事案は、認定基準等に基づき、迅速・適正な事務処理を一層推進する。

 また、業務に起因して新型コロナウイルス感染症に感染したものであると認められる場合には、その罹患後症状も含め、労災保険給付の対象となること等について周知を行う。

 さらに、労災保険の窓口業務については、引き続き、相談者等に対する丁寧な説明や請求人に対する処理状況の連絡等の実施を徹底する。

 また、労災保険の特別加入については、令和4年4月よりあん摩マッサージ指圧師、はり師及びきゅう師を、令和4年7月より歯科技工士を対象業種として追加したところであり、引き続き、適正な運用を行う。

(5)総合的なハラスメント対策の推進

① 職場におけるハラスメント等に関する雇用管理上の防止措置義務の履行確保 

 パワーハラスメント、セクシュアルハラスメント等職場におけるハラスメント防止措置を講じていない事業主に対し厳正な指導を実施すること等により、引き続き、法の履行確保を図る。

 また、適切なハラスメント防止措置が講じられるよう、事業主に対して、本省で委託する事業主・ハラスメント相談窓口担当者等向け研修やウェブサイト「あかるい職場応援団」の各種ツールの活用促進を図ること。

②就職活動中の学生等に対するハラスメント対策等の推進

 就職活動中の学生等に対するハラスメントについて、事業主に対して、ハラスメント防止指針に基づく「望ましい取組」の周知徹底を図る。また、「就活ハラスメント防止対策企業事例集」を活用し、企業の取組を促す。

 学生等に対しては、大学等への出前講座等の機会を活用して積極的に周知に努め、相談先等を記載したリーフレット(チラシ)を活用し、学生等が一人で悩むことがないよう支援しつつ、学生からの相談等により事案を把握した場合は、事業主に対して適切な対応を求める。

③職場におけるハラスメント等への周知啓発の実施及びカスタマーハラスメント対策等の推進

 職場におけるハラスメントの撲滅に向け、例年12月に実施している「ハラスメント撲滅月間」を中心に、事業主等への周知啓発を実施する。また、カスタマーハラスメントの防止対策を推進するため、カスタマーハラスメント対策企業マニュアル等を活用して、企業の取組を促す。

(6)職場における感染防止対策等の推進

 労働局に設置した「職場における新型コロナウイルス感染拡大防止対策相談コーナー」における事業者や労働者からの職場での新型コロナウイルス感染拡大防止に係る相談に対して丁寧な対応を行うとともに、「取組の5つのポイント」や「職場における新型コロナウイルス感染症の拡大を防止するためのチェックリスト」等を活用した職場における感染拡大防止対策について、取組を推進する。