令和4年4月1日からハラスメント防止措置が中小企業にも適用になります。
令和元年6月5日に「女性の職業生活における活躍の推進等に関する法律等の一部を改正する法律」が公布され、労働施策総合推進法、男女雇用機会均等法及び育児・介護休業法が改正されました。これに伴い、令和元年12月27日に関係省令が改正され、令和2年1月15日に指針が新設・改正されました。
- ハラスメント防止措置 中小企業義務化 令和4年4月1日
- 就職活動中の学生等に対するハラスメント防止対策を強化します!
- 顧客等からの著しい迷惑行為(いわゆるカスタマーハラスメント)
- ハラスメント 令和2年6月施行
- パワーハラスメントの国の施策
- 職場におけるハラスメントの定義
- 「職場」の定義(全てのハラスメント共通)
- 「労働者」の定義(全てのハラスメント共通)
- 職場におけるセクシュアルハラスメント(以下「セクシュアルハラスメント」という。)の定義
- 職場における妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメント(以下「妊娠・出産・育児休業等ハラスメント」という。)の定義
ハラスメント防止措置 中小企業義務化 令和4年4月1日
令和2年6月1日に「改正労働施策総合推進法」が施行されました。
中小企業に対する職場のパワーハラスメント防止措置は、令和4年4月1日から義務化されます。
就職活動中の学生等に対するハラスメント防止対策を強化します!
~就職活動中の学生等をセクシュアルハラスメントから守ります~
就職活動中の学生をハラスメントから守り、より安心して就職活動に取り組める環境を整備するため、雇用機会均等課では2022年3月以降、順次以下の取組を実施しています。
1.大学生に対する出前講座の実施【新規】
⇒出前講座(「就活ハラスメント防止対策関係セミナー)では、就活中にハラスメントにあわないために、また、あったときにどうすればよいか、法令、対応のポイントや相談先等について解説します。
希望のあった大学等に当課職員を派遣(オンラインも可)しています。希望のある大学の方は是非当課あてご連絡ください。
2.就活ハラスメントの被害にあった学生へのヒアリングの実施【新規】
⇒学生等の抱える悩みや行政への希望の「生の声」を伺うため、非公表でヒアリングを実施し、今後の行政における相談対応、企業指導に活かしていくことにしています。
3.就活セクハラを起こした企業に対する指導の徹底【強化】
⇒就職活動中の学生等に対するセクシュアルハラスメント対策については、男女雇用機会均等法に基づく指針において企業が講じることが「望ましい取組」として位置づけられています。
昨今の就活セクハラにおいて未だに悪質な事案が見受けられ、社会的注目の高まりを踏まえ、就活セクハラを起こした企業に対しては、就活セクハラについて行ってはならない旨の方針の明確化等を行政指導により徹底します。
4.大学生等に対する就活ハラスメント関係の周知啓発【継続実施】
⇒文部科学省と連携しSNS等での周知を継続します。
【参考1】就職活動中の学生等に対するセクシュアルハラスメント対策について
職場におけるセクシュアルハラスメントの防止については、雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律(昭和47年法律第113号。以下「均等法」という。)、事業主が職場における性的な言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針(平成18年厚生労働省告示第615号。以下「セクハラ防止指針」という。)により、事業主が講ずべき雇用管理上の措置が定められている。
セクハラ防止指針は、令和元年6月5日に公布された女性の職業生活における活躍の推進に関する法律等の一部を改正する法律(令和元年法律第24号。以下「改正法」という。)に伴い改正され、改正法により新たに創設された均等法第11条の2における事業主及び労働者に対するセクシュアルハラスメント防止に関する責務規定の趣旨を踏まえ、同指針には、事業主が就職活動中の学生やインターンシップを行っている者等(以下「就活生等」という。)についても職場におけるセクシュアルハラスメントを行ってはならない旨の方針の明確化等を行う際に、同様の方針を併せて示すことが望ましいこと、職場におけるセクシュアルハラスメントに類すると考えられる相談があった場合には必要に応じて適切な対応を行うように努めることが望ましいこと等が規定された。
【参考2】リーフレット
就職活動やインターンシップ中のハラスメントに関するお悩みは都道府県労働局にぜひご相談ください!
顧客等からの著しい迷惑行為(いわゆるカスタマーハラスメント)
いわゆるカスタマーハラスメントの防止対策については、厚生労働省をはじめとして、「顧客等からの著しい迷惑行為の防止対策の推進に係る関係省庁連携会議」で議論を行うとともに対策を進めています。
厚生労働省では、企業向けマニュアル、リーフレット、ポスターも作成しております。
顧客等からの著しい迷惑行為の防止対策の推進に係る関係省庁連携会議の議論状況や資料はこちら。
〇カスタマーハラスメント対策企業マニュアルはこちら。
〇カスタマーハラスメント対策リーフレットはこちら。
〇カスタマーハラスメント対策啓発ポスターはこちら↓
<2月25日版>
こちら
<3月8日追加版>
デザイン1 デザイン2 デザイン3 デザイン4 任意のイラストを追加できるもの
ハラスメント 令和2年6月施行
令和元年6月5日に「女性の職業生活における活躍の推進等に関する法律等の一部を改正する法律」が公布され、労働施策総合推進法、男女雇用機会均等法及び育児・介護休業法が改正されました。これに伴い、令和元年12月27日に関係省令が改正され、令和2年1月15日に次のとおり、指針が新設・改正されました。
① 事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針(以下「パワハラ指針」という。)(新設)
② 事業主が職場における性的な言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針(以下「セクハラ指針」という。)(改正)
③ 事業主が職場における妊娠、出産等に関する言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針(以下「妊娠・出産等指針」という。)(改正)
④ 子の養育又は家族の介護を行い、又は行うこととなる労働者の職業生活と家庭生活との両立が図られるようにするために事業主が講ずべき措置等に関する指針(以下「育児休業等指針」という。)(改正)本改正により、職場におけるパワーハラスメント防止のために、雇用管理上必要な措置を講じることが事業主の義務となります。
また、セクシュアルハラスメント等の防止対策も強化されました。施行は、令和2年6月1日(中小企業は令和4年4月1日)からです。
なお、「女性の職業生活における活躍の推進等に関する法律等の一部を改正する法律」の改正の趣旨は、女性をはじめとする多様な労働者が活躍できる就業環境を整備するため、
①女性の職業生活における活躍の推進に関する一般事業主行動計画の策定義務の対象拡大、情報公表の強化
②パワーハラスメント防止のための事業主の雇用管理上の措置義務等の新設
③セクシュアルハラスメント等の防止対策の強化等の措置を講ずるもので、次のとおり、ハラスメント対策以外に、一般事業主行動計画の策定や情報公表の方法が順次変わります。
改正の主な内容
1. ハラスメント対策の強化
⑴ 国の施策に「職場における労働者の就業環境を害する言動に起因する問題の解決の促進」(ハラスメント対策)を明記【労働施策総合推進法】
⑵ パワーハラスメント防止対策の法制化 【労働施策総合推進法】
① 事業主に対して、パワーハラスメント防止のための雇用管理上の措置○義務(相談体制の整備等)を新設
○措置の適切・有効な実施を図るための指針の根拠規定を整備
② パワーハラスメントに関する労使紛争
○都道府県労働局長による紛争解決援助
○紛争調整委員会による調停
○措置義務等について履行確保のための規定を整備
⑶ セクシュアルハラスメント等の防止対策の強化
【男女雇用機会均等法、育児・介護休業法、労働施策総合推進法】
① セクシュアルハラスメント等に起因する問題に関する国、事業主及び労働者の責務の明確化
② 労働者が事業主にセクシュアルハラスメント等の相談をしたこと等を理由とする事業主による不利益取扱いを禁止
※パワーハラスメント及び妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメントについても同様の規定を整備
改正内容を踏まえたハラスメント対策は、次のとおりです。
パワーハラスメントの国の施策
労働政策総合推進法第4条に「職場における労働者の就業環境を害する言動に起因する問題の解決の促進を促進するために必要な政策を充実すること」と明記され、国の施策となりました。
<労働政策総合推進法>
(国の施策) 第四条 国は、第一条第一項の目的を達成するため、前条に規定する基本的理念に従って、次に掲げる事項について、総合的に取り組まなければならない。 (略) 十四 職場における労働者の就業環境を害する言動に起因する問題の解決を促進するために必要な施策を充実すること。 |
職場におけるハラスメントの定義
職場におけるパワーハラスメント(以下「パワーハラスメント」という。)の定義
パワーハラスメントは、労働者の個人としての尊厳を不当に傷つけ、能力の有効な発揮を妨げるとともに、企業にとっても職場秩序や業務の遂行を阻害し、社会的評価に影響を与える問題であり、社会的に許されない行為であることは言うまでもありません。
特に、パワーハラスメントは、いったん発生すると、被害者に加え行為者も退職に至る場合がある等双方にとって取り返しのつかない損失を被ることが多く、被害者にとって、事後に裁判に訴えることは、躊躇せざるを得ない面があることを考えると、未然の防止対策が重要であります。
こうしたことから、労働政策総合推進法第30 条の2第1項は、パワーハラスメントを防止するため、その雇用する労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講ずることを事業主に義務付けることとしたものです。
<労働政策総合推進法>
(雇用管理上の措置等) 第三十条の二 事業主は、職場において行われる優越的な関係を背景とした言動であって、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものによりその雇用する労働者の就業環境が害されることのないよう、当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない。 |
パワーハラスメントとは、職場において行われる①から③までの要素を全て満たすものと規定されました。
① 優越的な関係を背景とした言動であって
② 業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより
③ 労働者の就業環境が害されるもの
客観的にみて、業務上必要かつ相当な範囲で行われる適正な業務指示や指導については、パワーハラスメントには該当しません。
また、実際上、パワーハラスメントの状況は多様であり、その判断に当たっては、個別の状況を斟酌する必要があります。
なお、法及び指針は、あくまでパワーハラスメントが発生しないよう防止することを目的とするものであり、個々のケースが厳密にパワーハラスメントに該当するか否かを問題とするものではありません。
「職場」の定義(全てのハラスメント共通)
パワーハラスメントとは、職場において行われるものとされており、セクシュアルハラスメント、妊娠・出産等に関するハラスメント及び育児休業等に関するハラスメントも職場において行われるものとされています。
事業主が雇用する労働者が業務を遂行する場所を指し、当該労働者が通常就業している場所以外の場所であっても、当該労働者が業務を遂行する場所については、「職場」に含まれます。セクハラ指針のみ、「取引先の事務所、取引先と打合せをするための飲食店、顧客の自宅等であっても、当該労働者が業務を遂行する場所であればこれに該当する。」と記載されています。
なお、「職場」には、業務を遂行する場所であれば、通常就業している場所以外の場所であっても、出張先、業務で使用する車中及び取引先との打ち合わせの場所(セクシュアルハラスメントの場合:取引先の事業所、取引先と打合せをするための飲食店(接待の席も含む)、顧客の自宅(保険外交員等)の他、取引先(記者)、出張先及び業務で使用する車中)等も含まれます。
また、勤務時間外の「懇親の場」、社員寮や通勤中等であっても、実質上職務の延長と考えられるものは職場に該当しますが、その判断に当たっては、職務との関連性、参加者、参加や対応が強制的か任意か等を考慮して個別に行うことが必要です。
「労働者」の定義(全てのハラスメント共通)
いわゆる正規雇用労働者のみならず、パートタイム労働者、契約社員等いわゆる非正規雇用労働者を含む事業主が雇用する労働者の全てです。
また、派遣労働者については、派遣元事業主のみならず、労働者派遣の役務の提供を受ける者(派遣先)についても、その指揮命令の下に労働させる派遣労働者を雇用する事業主とみなされ、労働者派遣の役務の提供を受ける者(派遣先)は、派遣労働者についてもその雇用する労働者と同様の措置を講ずる必要があります。
なお、労働者に対する不利益な取扱いの禁止については、派遣労働者も対象に含まれるものであり、派遣元事業主のみならず、労働者派遣の役務の提供を受ける者(派遣先)もまた、パワーハラスメントの相談を行ったこと等を理由として、派遣の役務の提供を拒む等、当該派遣労働者に対する不利益な取扱いを行ってはなりません。
パワーハラスメントの3つの要素
①「優越的な関係を背景とした」言動
当該事業主の業務を遂行するに当たって、当該言動を受ける労働者が行為者に対して抵抗又は拒絶することができない蓋然性が高い関係を背景として行われるものを指し、例えば、以下のもの等が含まれます。
イ 職務上の地位が上位の者による言動
ロ 同僚又は部下による言動で、当該言動を行う者が業務上必要な知識や豊富な経験を有しており、当該者の協力を得なければ業務の円滑な遂行を行うことが困難であるもの
ハ 同僚又は部下からの集団による行為で、これに抵抗又は拒絶することが困難であるもの
②「業務上必要かつ相当な範囲を超えた」言動
社会通念に照らし、当該言動が明らかに当該事業主の業務上必要性がない、又はその態様が相当でないものを指し、例えば、以下のもの等が含まれます。
イ 業務上明らかに必要性のない言動
ロ 業務の目的を大きく逸脱した言動
ハ 業務を遂行するための手段として不適当な言動
ニ 当該行為の回数、行為者の数等、その態様や手段が社会通念に照らして許容される範囲を超える言動
③「労働者の就業環境が害される」
当該言動により労働者が身体的又は精神的に苦痛を与えられ、労働者の就業環境が不快なものとなったため、能力の発揮に重大な悪影響が生じる等当該労働者が就業する上で看過できない程度の支障が生じることを指します。
パワーハラスメントの判断基準
パワーハラスメントは、①から③までの要素を全て満たすものをいいます。
ただし、客観的にみて、業務上必要かつ相当な範囲で行われる適正な業務指示や指導については、パワーハラスメントには該当しません。
なお、個別の事案についてその該当性を判断するに当たっては、総合的に考慮することとした事項のほか、当該言動により労働者が受ける身体的又は精神的な苦痛の程度等を総合的に考慮して判断することが必要です。
このため、個別の事案の判断に際しては、相談窓口の担当者等がこうした事項に十分留意し、相談者の心身の状況や当該言動が行われた際の受け止めなどその認識にも配慮しながら、相談者及び行為者の双方から丁寧に事実確認等を行うことも重要です。
これらのことを十分踏まえて、予防から再発防止に至る一連の措置を適切に講じることが必要です。
【パワーハラスメントの類型ごとの例】
パワーハラスメントの状況は多様であるが、代表的な言動の類型としては、当該言動の類型ごとに、典型的にパワーハラスメントに該当し、又は該当しないと考えられる例として、次のようなものがあります。
ただし、個別の事案の状況等によって判断が異なる場合もあり得ること、また、次の例は限定列挙ではないことに十分留意し、広く相談に対応する、事案に係る事実関係を迅速かつ正確に確認するなど、適切な対応を行うようにすることが必要です。
なお、パワーハラスメントに該当すると考えられる例については、優越的な関係を背景として行われたものであることが前提です。
パワーハラスメントの類型・例
代表的な 言動の類型 | 該当すると 考えられる例 | 該当しないと 考えられる例 |
1 身体的な攻撃(暴行・傷害) | ① 殴打、足蹴りを行うこと。 ② 相手に物を投げつけること。 | ① 誤ってぶつかること。 |
2 精神的な攻撃(脅迫・名誉棄損・侮辱・ひどい暴言) | ① 人格を否定するような言動を行うこと。相手の性的指向・性自認に関する侮辱的な言動を行うことを含む。 ② 業務の遂行に関する必要以上に長時間にわたる厳しい叱責を繰り返し行うこと。 ③ 他の労働者の面前における大声での威圧的な叱責を繰り返し行うこと。 ④ 相手の能力を否定し、罵倒するような内容の電子メール等を当該相手を含む複数の労働者宛てに送信すること。 | ① 遅刻など社会的ルールを欠いた言動が見られ、再三注意してもそれが改善されない労働者に対して一定程度強く注意をすること。 ② その企業の業務の内容や性質等に照らして重大な問題行動を行った労働者に対して、一定程度強く注意をすること。 |
3 人間関係からの切り離し (隔離・仲間外し・無視) | ① 自身の意に沿わない労働者に対して、仕事を外し、長期間にわたり、別室に隔離したり、自宅研修させたりすること。 ② 一人の労働者に対して同僚が集団で無視をし、職場で孤立させること。 | ① 新規に採用した労働者を育成するために短期間集中的に別室で研修等の教育を実施すること。 ② 懲戒規定に基づき処分を受けた労働者に対し、通常の業務に復帰させるために、その前に、一時的に別室で必要な研修を受けさせること。 |
4 過大な要求(業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制・仕事の妨害) | ① 長期間にわたる、肉体的苦痛を伴う過酷な環境下での勤務に直接関係のない作業を命ずること。 ② 新卒採用者に対し、必要な教育を行わないまま到底対応できないレベルの業績目標を課し、達成できなかったことに対し厳しく叱責すること。 ③ 労働者に業務とは関係のない私的な雑用の処理を強制的に行わせること。 | ① 労働者を育成するために現状よりも少し高いレベルの業務を任せること。 ② 業務の繁忙期に、業務上の必要性から、当該業務の担当者に通常時よりも一定程度多い業務の処理を任せること。 |
5 過小な要求(業務上の合理性なく能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないこと) | ① 管理職である労働者を退職させるため、誰でも遂行可能な業務を行わせること。 ② 気にいらない労働者に対して嫌がらせのために仕事を与えないこと。 | ① 労働者の能力に応じて、一定程度業務内容や業務量を軽減すること。 |
6 個の侵害(私的なことに過度に立ち入ること) *プライバシー保護の観点から、機微な個人情報を暴露することのないよう、労働者に周知・啓発する等の措置を講じることが必要である。 | ① 労働者を職場外でも継続的に監視したり、私物の写真撮影をしたりすること。 ② 労働者の性的指向・性自認や病歴、不妊治療等の機微な個人情報について、当該労働者の了解を得ずに他の労働者に暴露すること。 | ① 労働者への配慮を目的として、労働者の家族の状況等についてヒアリングを行うこと。 ② 労働者の了解を得て、当該労働者の性的指向・性自認や病歴、不妊治療等の機微な個人情報について、必要な範囲で人事労務部門の担当者に伝達し、配慮を促すこと。 |
職場におけるセクシュアルハラスメント(以下「セクシュアルハラスメント」という。)の定義
男女雇用機会均等法第11条では、セクシュアルハラスメントについて、事業主に防止措置を講じることを義務付けています。労働者個人の問題として片付けるのではなく、雇用管理上の問題と捉え、適切な対応をとることが必要です。
<男女雇用機会均等法>
(職場における性的な言動に起因する問題に関する雇用管理上の措置) 第十一条 事業主は、職場において行われる性的な言動に対するその雇用する労働者の対応により当該労働者がその労働条件につき不利益を受け、又は当該性的な言動により当該労働者の就業環境が害されることのないよう、当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない。 |
セクシュアルハラスメントは、「職場」において行われる、「労働者」の意に反する「性的な言動」に対する労働者の対応によりその労働者が労働条件について不利益を受けたり、「性的な言動」により就業環境が害されることです。
セクシュアルハラスメントには、同性に対するものも含まれます。 また、被害を受ける者の性的指向(※1)や性自認(※2)にかかわらず、「性的な言動」であれば、セクシュアルハラスメントに該当します。
※1人の恋愛・性愛がいずれの性別を対象とするか
※2性別に関する自己意識
「セクシュアルハラスメントの内容」においては、事業主が、雇用管理上防止すべき対象としての職場におけるセクシュアルハラスメントの内容を明らかにするために、その概念の内容を示すとともに、典型例を挙げたものです。
また、実際上、セクシュアルハラスメントの状況は多様であり、その判断に当たっては、個別の状況を斟酌する必要があることに留意するが必要です。
「性的な言動」
「性的な内容の発言」及び「性的な行動」を指します。
なお、「性的な言動」に該当するためには、その言動が性的性質を有することが必要です。
女性労働者のみに「お茶くみ」等を行わせること自体は性的な言動には該当しませんが、固定的な性別役割分担意識に係る問題、あるいは配置に係る女性差別の問題としてとらえることが適当です。
「性的な内容の発言」
性的な事実関係を尋ねること、性的な内容の情報を意図的に流布すること、性的冗談、からかい、食事・デート等への執拗な誘い、個人的な性的体験談を話すことなどです。
「性的な行動」
性的な関係を強要すること、必要なく身体に触ること、わいせつな図画(ヌードポスター等)を配布、掲示すること、強制わいせつ行為、強姦などです。
「言動を行う者」(行為者)
事業主(その者が法人である場合にあっては、その役員)、上司、同僚に限らず、取引先等の他の事業主又はその雇用する労働者、顧客、患者又はその家族、学校における生徒等もなり得ます。
なお、女性労働者が女性労働者に対して行う場合や、男性労働者が男性労働者に対して行う場合についても含まれます。
また、被害者の性的指向*1又は性自認*2にかかわらず、当該者に対するセクシュアルハラスメントも対象となります。
*1 人の恋愛・性愛がいずれの性別を対象とするかを表すもの
*2 性別に関する自己意識をいうもの
【セクシュアルハラスメントの内容】
「セクシュアルハラスメント」には「対価型セクシュアルハラスメント」と「環境型セクシュアルハラスメント」があります。
「対価型セクシュアルハラスメント」
職場において行われる労働者の意に反する性的な言動に対する労働者の対応により、当該労働者が解雇、降格、減給等の不利益を受けることです。
「環境型セクシュアルハラスメント」
職場において行われる労働者の意に反する性的な言動により労働者の就業環境が不快なものとなったため、能力の発揮に重大な悪影響が生じる等当該労働者が就業する上で看過できない程度の支障が生じることです。
職場における妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメント(以下「妊娠・出産・育児休業等ハラスメント」という。)の定義
男女雇用機会均等法第11 条の3及び育児・介護休業法第25 条では、妊娠・出産・育児休業等ハラスメントについて、事業主に防止措置を講じることを義務付けています。労働者個人の問題として片付けるのではなく、雇用管理上の問題と捉え、適切な対応をとることが必要です。
<男女雇用機会均等法>
第十一条の二 事業主は、職場において行われるその雇用する女性労働者に対する当該女性労働者が妊娠したこと、出産したこと、妊娠又は出産に関する事由であって厚生労働省令で定めるものに関する言動により当該女性労働者の就業環境が害されることのないよう、当該女性労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない。 |
<育児・介護休業法>
第二十五条 事業主は、職場において行われるその雇用する労働者に対する育児休業、介護休業その他の子の養育又は家族の介護に関する厚生労働省令で定める制度又は措置の利用に関する言動により当該労働者の就業環境が害されることのないよう、当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない。 |
妊娠・出産・育児休業等ハラスメントとは、「職場」において行われる上司・同僚からの言動(妊娠・出産したこと、育児休業等の利用に関する言動)により、妊娠・出産した「女性労働者」や育児休業等を申出・取得した「男女労働者」の就業環境が害されることです。
妊娠等の状態や育児休業制度等の利用等と嫌がらせ等となる行為の間に因果関係があるものがハラスメントに該当します。
なお、業務分担や安全配慮等の観点から、客観的にみて、業務上の必要性に基づく言動によるものはハラスメントには該当しません。
「業務上の必要性」の判断
部下が休業するとなると、上司としては業務の調整を行う必要があります。妊娠中に医師等から休業指示が出た場合のように、労働者の体調を考慮してすぐに対応しなければならない休業についてまで、「業務が回らないから」といった理由で上司が休業を妨げる場合はハラスメントに該当します。
しかし、ある程度調整が可能な休業等(例えば、定期的な妊婦健診の日時)について、その時期をずらすことが可能か労働者の意向を確認するといった行為までがハラスメントとして禁止されるものではありません。
ただし、労働者の意をくまない一方的な通告はハラスメントとなる可能性がありますので注意してください。
妊娠・出産・育児休業等ハラスメントの内容
「妊娠・出産・育児休業等ハラスメント」には「制度等の利用への嫌がらせ型」と「状態への嫌がらせ型」があります。
「制度等の利用への嫌がらせ」
次に掲げる制度又は措置(制度等)の利用に関する言動により就業環境が害されるものをいいます。
【対象となる制度又は措置】
妊娠・出産等ハラスメント | 育児休業等 ハラスメント | |
制度等利用への 嫌がらせ型 | 状態への 嫌がらせ型 | 制度等の利用への 嫌がらせ |
① 母性健康管理措置 ② 坑内就業・危険有害業務 ③ 産前休業 ④ 軽易業務転換 ⑤ 時間外・休日・深夜業の制限 ⑥ 育児時間 | ① 妊娠 ② 出産 ③ 坑内就業・危険有害業務 ④ 産後休業 ⑤ 妊娠、は出産に起因する症状 | ① 育児休業 ② 介護休業 ③ 子の看護休暇 ④ 介護休暇 ⑤ 所定外労働の制限 ⑥ 時間外労働の制限 ⑦ 深夜業の制限 ⑧ 所定働時間短縮 ⑨ 始業時刻変更 |
【防止措置が必要となるハラスメント】
1 解雇その他不利益な取扱いを示唆するもの
労働者が、制度等の利用の請求等(措置の求め、請求又は申出をいう。以下同じ。)をしたい旨を上司に相談したことや制度等の利用の請求等をしたこと、制度等の利用をしたことにより、上司がその労働者に対し、解雇その他不利益な取扱いを示唆することです。
2 制度等の利用の請求等又は制度等の利用を阻害するもの 以下のような言動が該当します。
① 労働者が制度の利用の請求をしたい旨を上司に相談したところ、上司がその労働者に対し、請求をしないように言うこと。
② 労働者が制度の利用の請求をしたところ、上司がその労働者に対し、請求を取り下げるよう言うこと。
③ 労働者が制度の利用の請求をしたい旨を同僚に伝えたところ、同僚がその労働者に対し、繰り返し又は継続的に、請求をしないように言うこと。
④ 労働者が制度利用の請求をしたところ、同僚がその労働者に対し、繰り返し又は継続的に、その請求等を取り下げるよう言うこと。
3 制度等を利用したことにより嫌がらせ等をするもの
労働者が制度等の利用をしたところ、上司・同僚がその労働者に対し、繰り返し又は継続的に嫌がらせ等をすることをいいます。
「嫌がらせ等」とは、嫌がらせ的な言動、業務に従事させないこと、又は専ら雑務に従事させることをいいます。
「状態への嫌がらせ型」
女性労働者が妊娠したこと、出産したこと等に関する言動により就業環境が害されるものをいいます。
【防止措置が必要となるハラスメント】
1 解雇その他不利益な取扱いを示唆するもの
女性労働者が妊娠等したことにより、上司がその女性労働者に対し、解雇その他の不利益な取扱いを示唆することです。
2 妊娠等したことにより嫌がらせ等をするもの
女性労働者が妊娠等したことにより、上司・同僚がその女性労働者に対し、繰り返し又は継続的に嫌がらせ等をすること。
不利益取扱いの禁止
【ハラスメントを理由とする不利益取扱いの禁止】
<労働政策総合推進法>(パワーハラスメント)
(雇用管理上の措置等) 第三十条の二(新設) 2 事業主は、労働者が前項の相談を行ったこと又は事業主による当該相談への対応に協力した際に事実を述べたことを理由として、当該労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない。 (紛争の解決の援助) 第三十条の五(新設) 2 第三十条の二第二項の規定は、労働者が前項の援助を求めた場合について準用する。 (調停の委任) 第三十条の六(新設) 2 第三十条の二第二項の規定は、労働者が前項の申請をした場合について準用する。 |
<男女雇用機会均等法>(セクシュアルハラスメント、妊娠・出産等ハラスメント)
改正前 (紛争の解決の援助) 第十七条 2 事業主は、労働者が前項の援助を求めたことを理由として、当該労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない。(全面改正) (調停の委任) 第十八条 2 前条第二項の規定は、労働者が前項の申請をした場合について準用する。 |
改正後 (職場における性的な言動に起因する問題に関する雇用管理上の措置等) 第十一条 2 事業主は、労働者が前項の相談を行ったこと又は事業主による当該相談への対応に協力した際に事実を述べたことを理由として、当該労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない。(新設) (職場における妊娠、出産等言動に関する起因する問題に関する雇用管理上の措置等) 第十一条条の三 2 第十一条第二項の規定は、労働者が前項の相談を行い、又は事業主による当該相談への対応に協力した際に事実を述べた場合について準用する。 (紛争の解決の援助) 第十七条 2 第十一条第二項の規定は、労働者が前項の援助を求めた場合について準用する。(全面改正) |
<育児・介護休業法>(育児休業等ハラスメント)
改正前 (紛争の解決の援助) 第五十二条の四 2 事業主は、労働者が前項の援助を求めたことを理由として、当該労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない。(全面改正) (調停の委任) 第五十二条の五 2 前条第二項の規定は、労働者が前項の申請をした場合について準用する。 |
改正後 (職場における育児休業等に関する言動に起因する問題に関する雇用管理上の措置等) 第二十五条 2 事業主は、労働者が前項の相談を行ったこと又は事業主による当該相談への対応に協力した際に事実を述べたことを理由として、当該労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない。(新設) (紛争の解決の援助) 第五十二条の四 2 第二十五条第二項の規定は、労働者が前項の援助を求めた場合について準用する。(全面改正) |
改正前は、紛争解決の援助を求めたこと、調整の申請を行ったことを理由に解雇その他不利益な取扱が禁止されていたが、改正後は、これに加え、労働者が相談したこと、事実確認等の協力をしたことを理由として解雇その他不利益な取扱が禁止されることになった。
なお、この不利益取扱の対象拡大については、男女雇用機会均等法(性的言動問題)の改正だけでなく、男女雇用機会均等法(妊娠・出産等関係言動問題)及び育児・介護休業法(育児休業等言動問題)の改正も行われ、パワーハラスメントだけでなく、セクシュアルハラスメント及び妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメントにおいても、事業主は、労働者が事業主にハラスメントに関する相談をしたこと等を理由として、不利益な取扱いをすることが禁止される等職場におけるハラスメント対策全体が強化されました。
【パワーハラスメント】
法第30 条の2第2項は、労働者が事業主から不利益な取扱いを受けることを懸念して、職場におけるパワーハラスメントに関する相談や事業主の相談対応に協力して事実を述べることを躊躇することがないよう、事業主がこれらを理由として解雇その他不利益な取扱いを行うことを禁止することとしたものです。
「理由として」とは、労働者がパワーハラスメントに関する相談を行ったことや事業主の相談対応に協力して事実を述べたことが、事業主が当該労働者に対して不利益な取扱いを行うことと因果関係があることをいうものです。
「不利益な取扱い」となる行為の例については、「労働者に対する性別を理由とする差別の禁止等に関する規定に定める事項に関し、事業主が適切に対処するための指針」(以下「性差別禁止指針」という。)第4の3⑵に掲げるものと同様です。
また、個別の取扱いが不利益な取扱いに該当するか否かについての勘案事項については、性差別禁止指針第4の3⑶に掲げる事項に準じて判断すべきものです。
なお、当該言動を直接受けた労働者だけでなく、それを把握した周囲の労働者からの相談を理由とする解雇その他不利益な取扱いについても、法第30 条の2第2項の規定による禁止の対象に含まれます。
【セクシュアルハラスメント】
法第11条第2項は、労働者が事業主から不利益な取扱いを受けることを懸念して、セクシュアルハラスメントに関する相談や事業主の相談対応に協力して事実を述べることを躊躇することがないよう、事業主がこれらを理由として解雇その他不利益な取扱いを行うことを禁止することとしたものです。
「理由として」とは、労働者がセクシュアルハラスメントに関する相談を行ったことや事業主の相談対応に協力して事実を述べたことが、事業主が当該労働者に対して不利益な取扱いを行うことと因果関係があることをいうものです。
「不利益な取扱い」となる行為の例については、性差別禁止指針第4の3⑵に掲げるものと同様であること。また、個別の取扱いが不利益な取扱いに該当するか否かについての勘案事項については、性差別禁止指針第4の3⑶に掲げる事項に準じて判断すべきものです。
なお、当該言動を直接受けた労働者だけでなく、それを把握した周囲の労働者からの相談を理由とする解雇その他不利益な取扱いについても、法第11条第2項の規定による禁止の対象に含まれます。
法第11条第3項は、同条第1項の雇用管理上の措置の対象となる職場におけるセクシュアルハラスメントの行為者には、セクハラ防止指針2⑷にあるとおり、取引先等の他の事業主(その者が法人である場合にあっては、その役員)や他の事業主の雇用する労働者も含まれるものであるところ、その問題解決を円滑に図るに当たっては、被害を受けた労働者を雇用する事業主が講ずる事実関係の確認や再発防止などの雇用管理上の措置に、行為者を雇用する事業主が協力することが望まれることから、協力を求められた場合に事業主がこれに応じる努力義務を設けることとしたものです。
【妊娠・出産・育児休業等ハラスメント】
男女雇用機会均等法第9条第3項では、女性労働者の妊娠・出産等厚生労働省令で定める事由を理由とする解雇その他不利益取扱いを禁止しています。禁止される不利益取扱いの具体的内容については、指針(※)において示しています。
<男女雇用機会均等法>(妊娠・出産等ハラスメント)
第九条 3 事業主は、その雇用する女性労働者が妊娠したこと、出産したこと、その他の妊娠又は出産に関する事由であって厚生労働省令で定めるものを理由として、当該女性労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない。 |
厚生労働省令で定める妊娠又は出産に関する事由(第2条の3)
1 妊娠したこと。 2 出産したこと。 3 妊娠中及び出産後の健康管理に関する措置(母性健康管理措置)を求め、又は当該措置を受けたこと。 4 坑内業務の就業制限若しくは危険有害業務の就業制限の規定により業務に就くことができないこと、坑内業務に従事しない旨の申出若しくは就業制限の業務に従事しない旨の申出をしたこと又はこれらの業務に従事しなかったこと。 5 産前休業を請求し、若しくは産前休業をしたこと又は産後の就業制限の規定により就業できず、若しくは産後休業をしたこと。 6 軽易な業務への転換を請求し、又は軽易な業務に転換したこと。 7 事業場において変形労働時間制がとられる場合において1週間又は1日について法定労働時間を超える時間について労働しないことを請求したこと、時間外若しくは休日について労働しないことを請求したこと、深夜業をしないことを請求したこと又はこれらの労働をしなかったこと。 8 育児時間の請求をし、又は育児時間を取得したこと。 9 妊娠又は出産に起因する症状により労務の提供ができないこと若しくはできなかったこと又は労働能率が低下したこと。 ※「妊娠又は出産に起因する症状」とは、つわり、妊娠悪阻(にんしんおそ)、切迫流産、出産後の回復不全等、妊娠又は出産をしたことに起因して妊産婦に生じる症状をいいます。 |
妊娠・出産等を理由とする不利益取扱の例
イ 解雇すること。 ロ 期間を定めて雇用される者について、契約の更新をしないこと。 ハ あらかじめ契約の更新回数の上限が明示されている場合に、当該回数を引き下げること。 ニ 退職又は正社員をパートタイム労働者等の非正規雇用社員とするような労働契約内容の変更の強要を行うこと。 ホ 降格させること。 ヘ 就業環境を害すること。 ト 不利益な自宅待機を命ずること。 チ 減給をし、又は賞与等において不利益な算定を行うこと。 リ 昇進・昇格の人事考課において不利益な評価を行うこと。 ヌ 不利益な配置の変更を行うこと。 ル 派遣労働者として就業する者について、派遣先が当該派遣労働者に係る労働者派遣の役務の提供を拒むこと。 ※ 「労働者に対する性別を理由とする差別の禁止等に関する規定に定める事項に関し、事業主が適切に対処するための指針」 |
【育児休業等の申出・取得等を理由とする不利益取扱い】
育児・介護休業法第10 条等では、育児休業等の申出・取得等を理由とする解雇その他不利益な取扱いを禁止しています。禁止される不利益取扱いの具体的内容については、指針(※)において示しています。
(参考)<育児・介護休業法>(育児・介護等ハラスメント)
第十条 事業主は、労働者が育児休業の申出をし、又は育児休業をしたことを理由として、当該労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない。 (育児・介護休業法第16 条、第16 条の4、第16 条の7、第16 条の10、第18 条の2、第20 条の2、第23 条の2) ※ 育児休業の他、介護休業、子の看護休暇、介護休暇、所定外労働の制限、時間外労働の制限、深夜業の制限、所定労働時間の短縮等の措置について申出をし、又は制度を利用したことを理由とする解雇その他不利益な取扱いについても禁止 |
① {解雇その他不利益な取扱い」に該当する法律行為が行われた場合においては、当該行為は民事上無効と解されます。
② 禁止される解雇その他不利益な取扱いとは、労働者が育児休業の申出又は取得をしたこととの間に因果関係がある行為であることを示したものであり、育児休業の期間中に行われる解雇等がすべて禁止されるものではありません。
不利益取扱い禁止の対象となる制度
①育児休業(育児のために原則として子が1歳になるまで取得できる休業) ②介護休業(介護のために対象家族1 人につき最大で3回まで分割して通算93 日間取得できる休業) ③子の看護休暇(子の看護のために年間5 日間(子が2人以上の場合10 日間)取得できる休暇) ④介護休暇(介護のために年間5 日間(対象家族が2人以上の場合10 日間)取得できる休暇) ⑤所定外労働の制限(育児又は介護のための残業免除) ⑥時間外労働の制限(育児又は介護のため時間外労働を制限(1 か月24 時間、1 年150 時間以内)) ⑦深夜業の制限(育児又は介護のため深夜業を制限) ⑧所定労働時間の短縮措置(育児又は介護のため所定労働時間を短縮する制度) ⑨始業時刻変更等の措置(育児又は介護のために始業時刻を変更する等の制度) |
育児休業等の申出・取得等を理由とする不利益取扱いの例
イ 解雇すること。 ロ 期間を定めて雇用される者について、契約の更新をしないこと。 ハ あらかじめ契約の更新回数の上限が明示されている場合に、当該回数を引き下げること。 ニ 退職又は正社員をパートタイム労働者等の非正規雇用社員とするような労働契約内容の変更の強要を行うこと。 ホ 自宅待機を命ずること。 ヘ 労働者が希望する期間を超えて、その意に反して所定外労働の制限、時間外労働の制限、深夜業の制限又は所定労働時間の短縮措置等を適用すること。 ト 降格させること。 チ 減給をし、又は賞与等において不利益な算定を行うこと。 リ 昇進・昇格の人事考課において不利益な評価を行うこと。 ヌ 不利益な配置の変更を行うこと。 ル 就業環境を害すること。 ヲ 派遣労働者として就業する者について、派遣先が当該派遣労働者に係る労働者派遣の役務の提供を拒むこと。 |
ハラスメント関係指針
事業主の責務
事業主は、ハラスメントを行ってはならないことハラスメント問題に対するその雇用する労働者の関心と理解を深めるとともに、当該労働者が他の労働者(他の事業主が雇用する労働者及び求職者を含む。)に対する言動に必要な注意を払うよう、研修の実施その他の必要な配慮をするほか、国の講ずる広報活動、啓発活動その他の措置に協力するように努めなければなりません。
なお、ハラスメントに起因する問題としては、例えば、労働者の意欲の低下などによる職場環境の悪化や職場全体の生産性の低下、労働者の健康状態の悪化、休職や退職などにつながり得ること、これらに伴う経営的な損失等が考えられます。
また、事業主(その者が法人である場合にあっては、その役員)は、自らも、パワーハラスメント問題に対する関心と理解を深め、労働者(他の事業主が雇用する労働者及び求職者を含む。)に対する言動に必要な注意を払うように努めなければなりません。
労働者の責務
労働者は、ハラスメント問題に対する関心と理解を深め、他の労働者に対する言動に必要な注意を払うとともに、事業主の講ずる措置に協力するように努めなければなりません。
指針に定められている項目について具体的な取組
次に事業主が雇用管理上講ずべき措置の方法について、それぞれの指針及び運用通達に示されたものを示します。
1 ハラスメントの内容、方針等の明確化と周知・啓発
事業主は、ハラスメントを防止するためには、まず事業主の方針としてハラスメントを行ってはならないことを明確にするとともに、これを従業員に周知・啓発しなければなりません。
2 行為者への厳正な対処方針、内容の規定化と周知・啓発
事業主は、行為者に対する方針等を明確化しなければなりません。
3 相談窓口の設置
相談窓口をあらかじめ定め、労働者に周知しなければなりません。
4 相談窓口担当者が適切な対応ができる対応
相談窓口の担当者が、相談内容や状況に応じ、適切に対応できるように、しなければなりません。
5 事実関係の迅速・正確な確認
事実関係を迅速かつ正確に確認しなければなりません。セクシュアルハラスメントの場合は、必要に応じて、他の事業主に事実関係の確認への協力を求めることも含まれます。
6 被害者に対する適正な配慮の措置の実施
速やかに被害者に対する配慮のための措置を適正に行わなければなりません。
7 行為者に対する適正な措置
行為者に対する措置を適正に行わなければなりません。
8 再発防止措置
改めてハラスメントに関する方針を周知・啓発する等の再発防止を行わなければなりません。
(妊娠・出産等ハラスメント及び育児休業等ハラスメントのみ)
事業主は、職場における妊娠、出産等に関するハラスメントの原因や背景となる要因を解消するため、業務体制の整備など、事業主や妊娠等した労働者の実績に応じ、必要な措置を講じなければならない(派遣労働者にあっては、派遣元事業主に限る。)。
9 当事者等のプライバシーの保護のための措置の実施と周知
相談者・行為者等のプライバシーを保護のため、次に示す取組を行わなければなりません。
10 不利益な取扱いの禁止
労働者が解雇等の不利益な取扱いをされないため、次に示す取組を行わなければなりません。
ハラスメントの防止のための望ましい取組
事業主は、当該事業主が雇用する労働者又は当該事業主(その者が法人である場合にあっては、その役員)が行うハラスメントを防止するため、上記措置に加え、次の取組を行うことが望ましい。
一元的に相談に応じることができる体制整備
ハラスメントは、その他のハラスメントと複合的に生じることが想定されることから、事業主は、例えば、セクシュアルハラスメント等の相談窓口と一体的に、ハラスメントの相談窓口を設置し、一元的に相談に応じることのできる体制を整備することが望ましい。
ハラスメントの原因や背景となる要因を解消するための取組
事業主は、ハラスメントの原因や背景となる要因を解消するため、次の取組を行うことが望ましい。
なお、取組を行うに当たっては、労働者個人のコミュニケーション能力の向上を図ることは、ハラスメントの行為者・被害者の双方になることを防止する上で重要であることや、業務上必要かつ相当な範囲で行われる適正な業務指示や指導については、ハラスメントには該当せず、労働者が、こうした適正な業務指示や指導を踏まえて真摯に業務を遂行する意識を持つことも重要であることに留意することが必要です。
1 コミュニケーションの活性化や円滑化
コミュニケーションの活性化や円滑化のため、次に示す取組を行わなければなりません。
(パワーハラハラスメントのみ)
1 コミュニケーションの活性化や円滑化のために研修等の必要な取組を行うこと。
2 職場環境の改善のための取組
適正な業務目標の設定等の職場環境の改善のため、次に示す取組を行わなければなりません。
(パワーハラスメントのみ)
2 適正な業務目標の設定等の職場環境の改善のための取組を行うこと。
(妊娠・出産等、育児休業等ハラスメントのみ)
制度等の利用の意識、周囲と円滑なコミュニケーション 事業主は、職場における妊娠、出産等に関するハラスメントの原因や背景となる要因を解消するため、妊娠等した労働者の側においても、制度等の利用ができるという知識を持つことや、周囲と円滑なコミュニケーションを図りながら自身の体調等に応じて適切に業務を遂行していくという意識を持つこと等を、妊娠等した労働者に周知・啓発することが望ましい。
3 アンケート調査や意見交換等の実施、衛生委員会の活用
雇用管理上の措置がハラスメントの防止のために適切かつ有効なものとなるようにするため、次に示す取組を行わなければなりません。
事業主は、必要に応じて、労働者や労働組合等の参画を得つつ、アンケート調査や意見交換等を実施するなどにより、その運用状況の的確な把握や必要な見直しの検討等に努めることが重要です。なお、労働者や労働組合等の参画を得る方法として、衛生委員会の活用なども考えられます。
自らの雇用する労働者以外の者に対する言動に関し行うことが望ましい取組】(育児休業等ハラスメントなし)
事業主及び労働者の責務の趣旨に鑑みれば、事業主は、当該事業主が雇用する労働者が、他の労働者(他の事業主が雇用する労働者及び求職者を含む。)のみならず、個人事業主、インターンシップを行っている者等の労働者以外の者に対する言動についても必要な注意を払うよう配慮するとともに、事業主(その者が法人である場合にあっては、その役員)自らと労働者も、労働者以外の者に対する言動について必要な注意を払うよう努めることが望ましい。
【事業主が他の事業主の雇用する労働者等からのパワーハラスメントや顧客等からの著しい迷惑行為に関し行うことが望ましい取組の内容】(パワーハラスメントのみ)
【相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備】
事業主は、他の事業主が雇用する労働者等からのパワーハラスメントや顧客等からの著しい迷惑行為に関する労働者からの相談に対し、その内容や状況に応じ適切かつ柔軟に対応するために必要な体制の整備を行うことが望ましい。
また、併せて、労働者が当該相談をしたことを理由として、解雇その他不利益な取扱いを行ってはならない旨を定め、労働者に周知・啓発することが望ましい。このため、次に示す取組を行わなければなりません。
1 相談先(上司、職場内の担当者等)をあらかじめ定め、これを労働者に周知すること。
2 相談を受けた者が、相談に対し、その内容や状況に応じ適切に対応できるようにすること。
被害者の配慮のための取組
事業主は、相談者から事実関係を確認し、他の事業主が雇用する労働者等からのパワーハラスメントや顧客等からの著しい迷惑行為が認められた場合には、速やかに被害者に対する配慮のための取組を行うことが望ましい。
他の事業主の雇用する労働者等からのパワーハラスメントや顧客等からの著しい迷惑行為に関し行うことが望ましい取組】
他の事業主が雇用する労働者等からのパワーハラスメントや顧客等からの著しい迷惑行為からその雇用する労働者が被害を受けることを防止する上では、事業主が、こうした行為への対応に関するマニュアルの作成や研修の実施等の取組を行うことも有効と考えられます。
また、業種・業態等によりその被害の実態や必要な対応も異なると考えられることから、業種・業態等における被害の実態や業務の特性等を踏まえて、それぞれの状況に応じた必要な取組を進めることも、被害の防止に当たっては効果的と考えられます。
なお、取引先等の他の事業主が雇用する労働者又は他の事業主(その者が法人である場合にあっては、その役員)からのパワーハラスメントや顧客等からの著しい迷惑行為については法の雇用管理上の措置の対象には含まれませんが、その雇用する労働者への安全配慮の観点から、これらについても事業主が雇用管理上の配慮として行うことが望ましい取組です。