労働政策審議会障害者雇用分科会検討内容(今後の障害者雇用の在り方、登記事項証明書、ハローワーク業務・システム関係)

雇用関係法

 令和3年9月3日に労働政策審議会障害者雇用分科会が開催され、
①今後の障害者雇用について見直し
②行政機関間の情報連携による登記事項証明書添付省略
③令和3年9月21日からハローワーク業務・システムの見直しなどの検討が行われました。

 

 令和3年9月3日に第109回労働政策審議会障害者雇用分科会が開催されました。議事次第は、次のとおりですが、まず、今後の障害者雇用について見直しの検討を行うため、関係団体からのヒアリングが行われました。
 次に 行政機関間の情報連携によって登記事項証明書の添付を省略できるよう 職業安定法施行規則等の一部を改正する省令案要綱について諮問され、原案どおり答申されました。
 なお、この審議会において、令和3年9月21日から利用可能となるハローワーク業務・システムの見直しに係る資料の提供がありました。

議事次第
1 関係団体からのヒアリング
 ・一般財団法人全日本ろうあ連盟
 ・一般社団法人日本難病・疾病団体協議会
 ・一般社団法人日本発達障害ネットワーク
2 職業安定法施行規則等の一部を改正する省令案要綱について(諮問)
3 2020年度の年度目標に係る評価及び2021年度の年度目標の設定について
4 その他

  1. 今後の検討に向けた論点整理
    1. 今後の検討に向けた論点整理
      1. 1 雇用率制度のあり方
        1. ① 法定雇用率の引上げに関する検討について
        2. ② 雇用率制度における就労継続支援A型事業所の利用者の評価について【備考:雇用福祉連携 PT】
        3. ③ 精神障害者に関する雇用率のカウントについて【備考:JEED 調査】
        4. ④ 対象障害者の範囲について【備考:JEED 調査】
        5. ⑤ 中高年齢層等、長期継続雇用の評価について
        6. ⑥ 除外率制度について【備考:JEED 調査】
      2. 2 納付金制度の在り方について
        1. ① 中小企業に対する障害者雇用調整金及び障害者納付金制度の適用範囲の拡大について
        2. ② 大企業及び就労継続支援A型事業所に対する障害者雇用調整金の在り方
        3. ③ 障害者雇用納付金財政の調整機能について
      3. 3 その他
        1. ① 雇用の質の向上について
        2. ② 自宅や就労施設等での障害者の就業機会の確保について【備考:雇用福祉連携 PT】
        3. ③ 障害者の就労支援全体の在るべき(目指すべき)姿、地域の就労支援機関の連携の強化について【備考:雇用福祉連携 PT】
        4. ④ 教育との連携、雇用・年金・福祉等の諸制度間の連携について【備考:雇用福祉連携PT】
        5. ⑤ 通勤支援、職場における支援の検討について【備考:雇用福祉連携 PT】
        6. ⑥ 中小企業における障害者雇用の促進について
        7. ⑦ 多様な就労ニーズへの対応について【備考:雇用福祉連携 PT】
        8. ⑧ 差別禁止及び合理的配慮の提供の実施状況の把握について【備考:JEED 調査】
        9. ⑨ 短時間勤務制度の措置の検討について【備考:JEED 調査】
        10. ⑩ 公務部門における障害者雇用の促進について
  2. 職業安定法施行規則等の一部を改正する省令案要綱
    1. 職業安定法施行規則等の一部を改正する省令案要綱
    2. 職業安定法施行規則等の一部を改正する省令案(概要)
  3. ハローワーク業務・システムの見直し
  4. 配布資料

今後の検討に向けた論点整理

 障害者雇用について、今後の検討に向けた論点整理の資料は提出されました。今後、ヒアリング等の結果を踏まえ、今後の検討に向けた論点整理により、障害者雇用について見直しが検討されるものと思われます。

今後の検討に向けた論点整理

1 雇用率制度のあり方

① 法定雇用率の引上げに関する検討について
  • 今後の雇用率見直し時において、法定雇用率を計算式の結果に基づき設定した上で、企業の障害者雇用状況や行政の支援状況等を勘案して、障害者雇用の質を確保する観点から必要と考えられる場合に、当該法定雇用率までの引上げを段階的に行うように運用することとし、その場合の具体的な引上げ幅や引上げ時期について当分科会で議論することが適当である。
  • 計算式の分子(雇用されている障害者)における就労継続支援A型事業所の雇用者の評価や、精神障害者の短時間労働者に係る雇用率のカウント(暫定措置として1カウントとして算定)の取扱い等に係る論点が挙げられている。
② 雇用率制度における就労継続支援A型事業所の利用者の評価について【備考:雇用福祉連携 PT】
  •   障害者雇用率の設定のための計算式における就労継続支援A型事業所の利用者の取扱いをどうすべきか。
③ 精神障害者に関する雇用率のカウントについて【備考:JEED 調査】
  •   精神障害者については令和4年度末まで短時間労働者について1カウントとされているが、この特例について令和5年度以降どのようにするか。
  •   身体・知的障害者と異なり「重度」といった取扱いがない精神障害者について、等級に応じて、雇用率制度におけるカウントを上積みする等は考えられるか。また、その他の評価の方法はあるか。
④ 対象障害者の範囲について【備考:JEED 調査】
  • 手帳を所持しない者の取扱いについて
    • 精神通院医療の自立支援医療受給者証や指定難病の医療受給者証の交付者等の取扱いをどう考えるか。
    •   手帳不所持者について、就労困難性を客観的に評価することについてどう考えるか。
    • 諸外国の状況も踏まえ、どのように考えるか。
  • 短時間勤務者の取扱いについて
    •   短時間勤務者については特例給付金制度を創設したところ、週 20 時間未満の短時間勤務者の取扱いについて、更にどのように考えるか。
⑤ 中高年齢層等、長期継続雇用の評価について
  •   中高年齢層等の長期継続雇用されている障害者についての雇用率制度におけるカウントを上積みする等は考えられるか。また、雇用率におけるカウントのほか、評価の方法はあるか。
  •   高齢者の活躍の促進や定着の促進、あるいは加齢による体力の低下等に応じた配慮を行う観点も踏まえつつ、企業における中高年齢層の障害者の適切なアセスメントとキャリア形成についてどのように考えるか。
⑥ 除外率制度について【備考:JEED 調査】
  •   除外率設定業種における障害者雇用の進展状況等を踏まえ、除外率の廃止又は縮小についてどう考えるか。

2 納付金制度の在り方について

① 中小企業に対する障害者雇用調整金及び障害者納付金制度の適用範囲の拡大について
  •   障害者雇用調整金及び障害者納付金制度は 100 人超の企業に適用されているが、これを拡大すべきかどうか。
  •   拡大する場合、範囲はどうするか。納付金の額の猶予等は必要か。中小企業における障害者の受入れ体制の整備や、支援機関等の中小企業に対する支援体制をどのように考えるか。
② 大企業及び就労継続支援A型事業所に対する障害者雇用調整金の在り方
  •   現行、多数の障害者を雇用している企業に上限なく調整金が支出されているが、経済的負担を調整するという制度の趣旨の観点からどう考えるか。支給上限額等の設定は考えられるか。
  •   障害者雇用調整金の支給に当たっては一般企業における雇用者か就労継続支援A型事業所における雇用者かの区別はしていないが、就労継続支援A型事業所の取扱いをどう考えるか。障害福祉サービスの報酬との関係をどう考えるか。
③ 障害者雇用納付金財政の調整機能について
  •   給付金制度の財政運営の安定化に向け、障害者雇用調整金の支出についてどう考えるか。単年度収支が赤字になった場合に赤字額の程度に応じて翌年度以降の調整金の額を減額させる仕組み等の導入についてどう考えるか。

3 その他

① 雇用の質の向上について
  • 雇用におけるソーシャルインクルージョンの促進についてどのように考えるか。
  • 障害者が働きがいをもてる環境設定についてどのように考えるか。
  • 合理的配慮の促進や、障害者のキャリア形成についてどのように考えるか。(再掲)
② 自宅や就労施設等での障害者の就業機会の確保について【備考:雇用福祉連携 PT】
  •   通勤等に困難を抱える障害者や、就労施設等における障害者の就業機会の確保のためのさらなる支援の在り方をどう考えるか。
  •   障害者雇用率制度が直接雇用を基本としていることや、一般就労への移行を促進することが重要であることを踏まえつつ、支援の方法をどのように考えるか。
  •   一般雇用への転換を進めるとともに、通勤等に困難を抱える障害者の就業機会を確保するため、在宅就業障害者支援制度について、施設外就労の形で業務を発注する場合の在宅就業障害者特例調整金等の額の上乗せや、施設外就労の場合等には算定基礎を発注額とすること、一般雇用への転換に積極的な在宅就業支援団体に対する助成措置の創設等の見直しは考えられるか。
③ 障害者の就労支援全体の在るべき(目指すべき)姿、地域の就労支援機関の連携の強化について【備考:雇用福祉連携 PT】
  •   就労能力や適性を客観的に評価し、可視化していく手法についてどのように考えるか。
  •   就労支援機関の役割関係が不明確であったり、支援内容に重複感はないか。これを踏まえ、就労支援機関の在り方や専門的な支援人材の役割をどのように整理するか。
  •   福祉・雇用にまたがった支援を行う専門的な人材の在り方及び育成についてどう考えるか。
④ 教育との連携、雇用・年金・福祉等の諸制度間の連携について【備考:雇用福祉連携PT】
  •   諸制度間の連携を図り、資源を組み合わせて有効活用していくようなシームレスな支援についてどのように考えていくか。
  • 特別支援学校等から就労への支援の方策をどう考えるか。
  • 高等教育段階の学生の就労支援をどのように考えるか。
  •   在職者の能力開発やオンラインによる訓練を含め、人材開発施策との連携をどのように考えるか。
  •   障害を有する者の勤労・就労意欲が増進し、また、減退しないことを主眼に置いた上で、制度間の連続性をどのように確保するか。
⑤ 通勤支援、職場における支援の検討について【備考:雇用福祉連携 PT】
  •   本年 10 月から実施する雇用施策と福祉施策の連携による新たな連携による取組の実施状況を踏まえ、今後の重度身体障害者等に対する通勤支援や職場等の支援の在り方についてどう考えるか。
  •   障害の程度にかかわらず、職場介助者や手話通訳者の派遣等を含めた職場等における支援の在り方についてどのように考えるか。
⑥ 中小企業における障害者雇用の促進について
  • 認定制度を更に発展させていくための方策についてどのように考えるか。
  •   採用段階における適切なマッチングや、環境整備に対する支援についてどのように考えるか。
  • 事業協同組合等算定特例のより効果的な在り方についてどのように考えるか。
  •   中小企業に対する障害者雇用調整金及び障害者納付金制度の適用範囲の拡大についてどのように考えるか。(再掲)
  •   フルタイムの労働者を新たに雇用する分の業務量が見つからないとしている中小企 業や、実際に採用して共に働くイメージが十分につかめていない中小企業の観点から、短時間勤務者の取扱いについてどのように考えるか。(再掲)
⑦ 多様な就労ニーズへの対応について【備考:雇用福祉連携 PT】
  • 医療面や生活面の支援が必要な重度障害や、精神障害、発達障害、高次脳機能障害、難病のある方、高齢障害者についても就労支援ニーズが増大する中で、障害者就労を支える人材その他資源が質・量ともに限定的であることについてどう考えるか。
  •   障害者について、これまで就職や職場定着に重点が置かれてきたところ、中長期的なキャリア形成のニーズが増大していることについてどう考えるか。
  •   在宅就労・テレワーク・短時間勤務や雇用以外の働き方等の多様な働き方のニーズが増大していることについてどう考えるか。
  • 技術革新の進展や新型コロナウイルス感染症の影響により、オンラインの就労支援・訓練や業務創出・テレワーク等のニーズが増大していることについてどう考えるか。
⑧ 差別禁止及び合理的配慮の提供の実施状況の把握について【備考:JEED 調査】
  • 差別禁止及び合理的配慮の提供の実施状況はどうなっているか。
  • 実施状況を踏まえて更なる実施を進めるためどのような方策をとるべきか。
⑨ 短時間勤務制度の措置の検討について【備考:JEED 調査】
  • 合理的配慮としての短時間勤務の措置がどのようになされており、どのような効果をあげているか。
  • 上記を踏まえ、短時間勤務についてどのように対応すべきか。
⑩ 公務部門における障害者雇用の促進について
  • 公務部門における障害者雇用の質を高めていく方策をどのように考えるか。
  •   教育委員会を含む地方公共団体における障害者雇用をより一層進めていくための方策をどのように考えるか。

職業安定法施行規則等の一部を改正する省令案要綱

 審議会では、次のような 職業安定法施行規則等の一部を改正する省令案要綱 が示され、原案のとおり答申された。これを受け、省令改正が行われる予定である。この改正で行政機関間の情報連携によって登記事項証明書の添付を省略できるようになる予定である。

職業安定法施行規則等の一部を改正する省令案要綱

第1 登記事項証明書に関する規定の明確化
1・2 (略)
3 障害者の雇用の促進等に関する法律施行規則の一部改正
 障害者の雇用の促進等に関する法律(昭和35年法律第123号)第51条第1項に規定する助成金の支給の申請に必要な書類として、登記事項証明書を明確化すること。
4 (略)
第2 施行期日
 この省令は公布の日から施行すること。

職業安定法施行規則等の一部を改正する省令案(概要)

 今回の改正の趣旨は、次のとおりである。

職業安定法施行規則等の一部を改正する省令案(概要)
1.改正趣旨
〇 デジタル・ガバメント実行計画(令和2年12月25日改訂)に基づき、行政機関等に対する各手続においては、行政機関が添付書類によらずに登記事項を確認することを可能とするために新たに構築された行政機関間の情報連携システムの活用により、国民の各手続に係る負担を低減することとされている。
〇 この点、情報通信技術を活用した行政の推進等に関する法律(平成14年法律第151 号。以下「デジタル手続法」という。)第11条の規定により、行政機関間の情報連携によって添付省略が可能となる書類は、個別法令において提出を求めている添付書類に限られ、通達等において提出を求めている添付書類については、情報連携の対象外となり省略できないこととされている。
〇 現在、職業安定法(昭和22年法律第141号)等に基づく申請等の手続においては、申請等の内容が確認できる書類として、事業主に登記事項証明書の添付を求めているものの、具体的な添付書類の種類としては、通達等に定めのある手続がある。
○ 今般、これらの手続について、法令上、登記事項証明書が必要であることを明確化することで、デジタル手続法第11条の規定に基づき、登記事項証明書の添付を省略できるようにし、国民負担の軽減と行政運営の高度化を図るため、所要の改正を行う。
2.改正の概要
 国民負担の軽減と行政運営の高度化を図るため、デジタル手続法第11条の規定に基づき、登記事項証明書の添付を省略できるよう、以下の改正を行う。障害者の雇用の促進等に関する法律(昭和35年法律第123号)に基づく障害者雇用納付金関係助成金の支給(第51条)の申請について、障害者の雇用の促進等に関する法律施行規則(昭和51年労働省令第 38 号)に第 22 条の4を新設し、必要書類として登記事項証明書を明確化することとする。
3.根拠法令・障害者の雇用の促進等に関する法律第 51 条第1項
4.施行期日等
 公布日 令和3年9月中(予定)
 施行期日 公布の日

ハローワーク業務・システムの見直し

 令和3年9月21日から①求職者は、オンラインで職業紹介を受けることができ、また、ハローワークの紹介を受けずに、自らマイページから直接応募するこトが出来るなど、②求人者もオンラインで求職情報を受けることができるなどハローワーク業務・システムが見直しされる予定です。

配布資料