社労士解説 事務所衛生基準規則改正(室の照度、便所の設置基準、救急用具) 

労働安全衛生法

社労士解説 事務所衛生基準規則改正
(室の照度、便所の設置基準、救急用具)

 令和3年7月28日に開催された第139回労働政策審議会安全衛生分科会において、①事務所衛生基準規則及び労働安全衛生規則の一部を改正する省令案要綱及び②港湾貨物運送事業労働災害防止規程変更案要綱が諮問され、同日、妥当である旨の答申がありました。
 このため、事務所衛生基準規則の改正が行われ公布されるものと思われます。
 なお、施行日は令和4年9月1日です。

 また、「経済財政運営と改革の基本方針2021」特定石綿被害建設業務労働者等に対する給付金等の支給に関する法律良質かつ適切な医療を効率的に提供する体制の確保を推進するための医療法等の一部を改正する法律全世代対応型の社会保障制度を構築するための健康保険法等の一部を改正する法律についても審議されています。

 なお、「経済財政運営と改革の基本方針2021」の「規制改革実施計画」にて、各種申請等で提出する写真について、サイズや撮影時期が多岐にわたり不便なことから、原則として、サイズを運転免許証サイズ・履歴書サイズ・大型サイズ又はパスポート規格のいずれかに統合し、撮影時期が現状6か月未満のものは6か月以内に統一する。さらに、写真の電子的提出も推進するとされており、令和4年度措置で全府省が検討を行うようです。

改正内容のポイント

事務所衛生基準規則改正の内容は、概ね次のとおりです。
1 室の作業面の照度について、作業の区分を「一般的な事務作業」及び「付随的な事務作業」とし、それぞれ300ルクス以上及び150ルクス以上とすること。
2 独立個室型の便所を設ける場合における特例を設けること。

3 救急用具の少なくとも備えなければならない品目を削除

事務所衛生基準規則及び労働安全衛生規則改正省令案の概要

事務所衛生基準規則及び労働安全衛生規則の一部を改正する省令案の概要についてご紹介します。

事務所衛生基準規則及び労働安全衛生規則の一部を改正する省令案(概要)

第1 事務所衛生基準規則の一部改正

1 照度の基準

現行

 現在の事務所則第10条第1項において、事業者は、室の作業面の照度を表1の作業の区分に応じて、同表の基準に適合させなければならない(ただし、感光材料の取扱い等特殊な作業を行なう室については、この限りでない。)旨規定されている。

改正内容

(1)作業の区分を「一般的な事務作業」及び「付随的な事務作業」の2区分に変更すること。

(2)照度基準については、一般的な事務作業においては300ルクス以上、付随的な事務作業においては150ルクス以上とすること。

現行

作業の区分基準
精密な作業300ルクス以上
普通の作業150ルクス以上
粗な作業70ルクス以上

改正案

作業の区分基準
一般的な事務作業300ルクス以上
付随的な事務作業150ルクス以上

※精密な作業を行うときは、JIS Z9110等を参照し、対応する作業に応じてより高い照度を事業場で定める。

2 便所の設置基準

現在の事務所則第17条第1項においては、以下の事項等が規定されている。

事業者は、次に定めるところにより便所を設けなければならない。

① 男性用と女性用に区別すること。

② 男性用大便所の便房の数は、同時に就業する男性労働者60人以内ごとに1個以上とすること。

③ 男性用小便所の箇所数は、同時に就業する男性労働者30人以内ごとに1個以上とすること。

④ 女性用便所の便房の数は、同時に就業する女性労働者20人以内ごとに1個以上とすること。

改正の内容

(1)基本方針

 男性用と女性用に区別して設けることが原則であること。

(2)少人数の事務所における例外

 同時に就業する労働者が常時10人以内である場合は、現行で求めている、便所を男性用と女性用に区別することの例外として、独立個室型の便所を設けることで足りることとすること。

(3)男性用と女性用に区別した便所を各々設置した上で付加的に設ける便所の取扱い

 男性用と女性用に区別した便所を設置した上で、独立個室型の便所を設置する場合は、男性用大便所の便房、男性用小便所及び女性用便所の便房をそれぞれ一定程度設置したもの※として取り扱うことができるものとする。

※男性用大便所又は女性用便所の便房の数若しくは男性用小便所の箇所数を算定する際に基準とする 当該事業場における同時に就業する労働者の数について、独立個室型の便所1個につき男女それぞれ10人ずつ減ずることができることとすること。

3 その他

 その他所要の改正を行うこととすること。

第2 労働安全衛生規則の一部改正

1 便所

第1の2同様の改正を行うこととすること。

2 救急用具

 現在、労働安全衛生規則(昭和47年労働省令第32号。以下「安衛則」という。)においては以下のとおり規定されている。

(救急用具)

第633条 事業者は、負傷者の手当に必要な救急用具及び材料を備え、その備付け場所及び使用方法を労働者に周知させなければならない。

2 事業者は、前項の救急用具及び材料を常時清潔に保たなければならない。

(救急用具の内容)

第634条 事業者は、前条第一項の救急用具及び材料として、少なくとも、次の品目を備えなければならない。

① ほう帯材料、ピンセツト及び消毒薬
② 高熱物体を取り扱う作業場その他火傷のおそれのある作業場については、火傷薬
③   重傷者を生ずるおそれのある作業場については、止血帯、副木、担架等

 安衛則第633条において事業者に備えることを求めている救急用具に関し、少なくとも備えなければならない品目を定めている安衛則第634条を削除する。

「負傷者の手当に必要な救急用具及び材料」の備え付けについて、事業場において労働災害等により労働者が負傷し、又は疾病にり患した場合には、その場で応急手当を行うことよりも速やかに医療機関に搬送することが基本であること及び事業場ごとに負傷や疾病の発生状況が異なることから、事業場に一律に備えなければならない品目についての規定は削除することとする。

3 その他

 その他所要の改正を行うこととすること。

第3   施行期日等

 公布日:令和3年9月(予定)
 施行期日:公布日(第1の1については令和4年9月1日)(予定)

参考:運用面での手当を行うもの

1 更衣設備、休憩の設備等

 現在の事務所則においては、以下の事項等が事業者の義務として規定されている。

① 被服を汚染し、若しくは湿潤し、又は汚染し、若しくは湿潤するおそれのある労働者のために、更衣設備又は被服の乾燥設備を設けること。(第18条第2項)
② 労働者が有効に利用することができる休憩の設備を設けるように努めること。(第19条)
③ 事業者は、常時50人以上又は常時女性30人以上の労働者を使用するときは、労働者がが床することのできる休養室又は休養所を、男性用と女性用に区別して設けること。(第21条)
※ 安衛則第613条(休憩設備)、第618条(休養室等)、625条(洗浄設備等)にも同様の規定あり。

方向性

① 更衣室やシャワー設備(法定外のものを含む。)

○ 更衣室やシャワー設備を設ける場合は性別にかかわらず安全に利用できる必要あり。プライバシーにも配慮すべき。

② 休憩の設備

○ 事業場の実情に応じ、利用人数に応じた広さや、備えるべき設備の検討が期待される。

③ 休養室・休養所

○ 専用の設備でなくても、性別にかかわらず体調不良者等が常に利用可能であることが重要。

○ 入口や通路からの目隠し、出入り制限等、設置場所の状況等に応じた配慮をすべき。

※ 安衛則についても同様の対応を行う。

2 作業環境測定(一酸化炭素・二酸化炭素)

 現在の事務所則第7条第1項においては、以下の事項が規定されている。

 事業者は、中央管理方式の空気調和設備を設けている建築物の室で、事務所の用に供されるものについて、2月以内ごとに1回、定期に、次の事項を測定しなければならない※ 。

① 一酸化炭素及び二酸化炭素の含有率
② 室温及び外気温
③ 相対湿度

※ ただし、当該測定を行おうとする日の属する年の前年1年間において、当該室の気温が17度以上28度以下及び相対湿度が40パーセント以上70パーセント以下である状況が継続し、かつ、当該測定を行おうとする日の属する1年間において、引き続き当該状況が継続しないおそれがない場合には、室温、外気温及び相対湿度に掲げる事項については、3月から5月までの期間又は9月から11月までの期間、6月から8月までの期間及び12月から2月までの期間ごとに1回の測定とすることができる。
 また、作業環境測定基準(昭和51年労働省告示第46号)第6条により、測定の際には、次表の右欄に掲げる測定機器又はこれと同等以上の性能を有する測定機器を用いて行わなければならないこととされている。

※ 事務所則第8条にも同様の規定あり。

区分測定機器
一酸化炭素の含有率検知管方式による一酸化炭素検定器
炭酸ガスの含有率検知管方式による炭酸ガス検定器
室温及び外気温0.5度目盛の温度計
相対湿度0.5度目盛の乾湿球の湿度計

空気中の一酸化炭素・二酸化炭素の含有率の測定について、

○ 空気調和設備の運転状況や、在室者数や外気の導入状況に応じた事務室の空気環境を確認するために、測定頻度は現行どおりとする。

○ 作業環境測定基準において具体的に示している検知管のほか、定電位電解法(一酸化炭素)、非分散型赤外線吸収法NDIR(二酸化炭素)等の検知管と同等以上の機器を明示することとする。

※ 事務所則第8条についても同様の対応を行う。

第139回労働政策審議会安全衛生分科会

第139回労働政策審議会安全衛生分科会(資料)

日時:令和3年7月28日(水)10:00~12:00
場所:オンラインにより開催
   (労働委員会会館講堂(7階))
   (東京都港区芝公園1-5-32)

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事務所衛生基準規則及び労働安全衛生規則の一部を改正する省令案要綱

事務所衛生基準規則及び労働安全衛生規則の一部を改正する省令案要綱は、次のとおりです。

第1 事務所衛生基準規則の一部改正

Ⅰ 室の作業面の照度

 事業者が適合させなければならない室の作業面の照度について、作業の区分を「一般的な事務作業」及び「付随的な事務作業」とし、それぞれ300ルクス以上及び150ルクス以上とすること。

Ⅱ 独立個室型の便所を設ける場合における特例

1  事務所衛生基準規則第17条第1項第1号から第4号までの規定にかかわらず、同時に就業する労働者が常時10人以内である場合は、男性用と女性用を区別しない四方を壁等で囲まれた1個の便房により構成される便所(以下「独立個室型の便所」という。)を設けることで足りるものとすること。

2 独立個室型の便所は、次に定めるところにより設けるものとすること。

(1)便池は、汚物が土中に浸透しない構造とすること。

(2)流出する清浄な水を十分に供給する手洗い設備を設けること。

3 事務所衛生基準規則第17七条第1項第2号から第4号までの規定にかかわらず、独立個室型の便所を設ける場合(1及び2により独立個室型の便所を設ける場合を除く。)は、次に定めるところにより便所を設けなければならないものとすること。

(1)男性用大便所の便房の数は、次の表の上欄に掲げる同時に就業する男性労働者の数に応じて、同表の下欄に掲げる数以上とすること。

同時に就業する男性労働者の数便房の数便所の数
設ける独立個室型の便所の数に10を乗じて得た数以下
設ける独立個室型の便所の数に10を乗じて得た数を超える数1に、設ける独立個室型の便所の数に10を乗じて得た数を同時に就業する男性労働者の数から減じて得た数が60人を超える10人又はその端数を増すごとに1を加えた数

(2)男性用小便所の箇所数は、次の表の上欄に掲げる同時に就業する男性労働者の数に応じて、同表の下欄に掲げる数以上とすること。

同時に就業する男性労働者の数箇所数
設ける独立個室型の便所の数に十を乗じて得た数以下
設ける独立個室型の便所の数に10を乗じて得た数を超える数一に、設ける独立個室型の便所の数に十を乗じて得た数を同時に就業する男性労働者の数から減じて得た数が三十人を超える三十人又はその端数を増すごとに一を加えた数

(3)女性用便所の便房の数は、次の表の上欄に掲げる同時に就業する女性労働者の数に応じて、同表の下欄に掲げる数以上とすること。

同時に就業する女性労働者の数便房の数
設ける独立個室型の便所の数に十を乗じて得た数以下
設ける独立個室型の便所の数に十を乗じて得た数を超える数一に、設ける独立個室型の便所の数に十を乗じて得た数を同時に就業する女性労働者の数から減じて得た数が二十人を超える二十人又はその端数を増すごとに一を加えた数

Ⅲ その他実態に合わなくなった用語を見直すほか、所要の改正を行うこと。

第2 労働安全衛生規則の一部改正

Ⅰ 独立個室型の便所を設ける場合における特例

第1の2と同様の改正を行い、独立個室型の便所を設ける場合における特例を定めるものとすること。

Ⅱ 事業者が少なくとも備えなければならない救急用具の品目に関する規定を削除すること。

Ⅲ その他所要の改正を行うこと。

第3 施行期日

 この省令は、公布の日から施行すること。ただし、第1の1にあっては、令和4年9月1日から施行すること。

事務所衛生基準のあり方に関する検討会報告書の概要

 今回の事務所衛生基準規則の改正になった経緯は、次の報告書が令和3年3月24日に取りまとめられたことです。本報告書の概要を紹介します。

○令和3年3月24日、「事務所衛生基準のあり方に関する検討会」(座長:髙田礼子 聖マリアンナ医科大学教授)の検討結果について、報告書としてとりまとめた。

○この検討会は、事務所衛生基準規則(昭和47年労働省令第43号。以下「事務所則」という。)において規定されている、清潔保持や休養のための措置、事務所の作業環境等の規定について、女性活躍の推進、高年齢労働者や障害のある労働者の働きやすい環境整備への関心の高まり等の社会状況の変化を踏まえ、現在の実状や関係規定を確認し、必要な見直しを念頭において検討することを目的に開催したものである。

(令和2年8月から令和3年2月までに6回開催。)

○報告書のポイントは以下のとおり。

■ 照度

○一般的な事務作業における作業面(机上)の照度を150ルクス以上から300ルクス以上に、付随的な作業(粗な作業)における照度を70ルクス以上から150ルクス以上に見直すことが妥当である。

■トイレ設備

○男性用と女性用とを区別して設ける原則、設置すべき便所の便房数の基本的考え方は維持する。

○男性用と女性用を区別しない四方を壁等で囲まれた一個の便房により構成される便所(バリアフリートイレを含む。以下「独立個室型の便所」という。)については、条件を満たす場合は1つの便所として取り扱う。

○少人数の事務所においては、独立個室型の便房からなる1つの便所をもって足りるとすることも選択肢に加えることが妥当である。

○それ以外の事務所において、男性用便所、女性用便所に加えて設ける独立個室型の便所を1つの便所として取り扱うことが妥当である。

■更衣設備、休憩の設備、作業環境測定等

○休養室・休養所については、専用のスペースでなくても、随時利用が可能となるよう機能の確保に重点を置くべき。

○空気中の一酸化炭素・二酸化炭素の含有率の測定機器について、現行基準において具体的に示している検知管と同等以上の性能を有する測定機器を明示することにより、様々な測定方法が可能であることを明らかにすることが望ましい。

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