小売業、介護施設を中心として増加する行動災害の予防対策の推進

労働安全衛生法

小売業、介護施設を中心として増加する行動災害の予防対策の推進

 第三次産業の労働災害(休業災害)が急増し、第13次労働災害防止計画の目標の達成が危機的状況にあるため、厚生労働省は、新たに「小売業、介護施設を中心として増加する行動災害の予防対策の推進」の通知(令和4年2月9日付け基安発0209第1号)を発出しました。

 休業4日以上の労働災害による死傷者数(以下「死傷者数」という。)が増加する小売業、介護施設等の労働災害防止対策については、令和3年3月31日付け基安発0331第1号「第 13次労働災害防止計画の計画期間後半の第三次産業における労働災害防止対策の推進について」及び同日付け基安安発0331第3号、基安労発0331第1号「第13次労働災害防止計画の計画期間後半の第三次産業における労働災害防止対策の推進に係る留意事項について」(以下「第三次産業通知」という。)等に基づく取組を行ってきたところである。

 令和4年1月時点(速報値)における死傷者数(新型コロナウイルス感染症のり患による労働災害を除く)は、小売業及び介護施設を中心に増加し、全体では第13次労働災害防止計画の基準となる平成29年同期比で9.0%の増加となっており、同計画の目標達成には直ちに改善が必要な危機的状況となっている。

 事故の型別でみると、「転倒」及び腰痛等の「動作の反動・無理な動作」など、職場における労働者の作業行動を起因とする労働災害(以下「行動災害」という。)が増加しており、中には後遺障害を伴う重篤な災害も発生しているところである。こうした状況から、小売業及び介護施設を中心として行動災害を予防するための取組の強化が、喫緊の課題となっている。

 本課題を解決するためには、行動災害の増加を労働分野の問題としてだけではなく、人材確保など企業の経営問題であるとして、事業者の行動変容を促し、自主的な安全衛生管理の定着を図る必要がある。

 このため、都道府県労働局(以下「労働局」という。)においては、小売業及び介護施設を中心とした行動災害の予防対策の推進について、令和4年度は、下記事項を実施することとするので、その適切な実施に遺漏なきを期されたい。また、令和3年度末をもって第三次産業通知は廃止する。

 なお、本省においては、行動災害予防に関する行動変容を促す取組を推進するため、令和4年度より、企業、関係行政機関、業界団体等を加盟団体とする+Safeコンソーシアム(仮称)(以下「コンソーシアム」という。)を設置し、加盟団体の取組に対する表彰として+Safeアワード(仮称)を行うとともに、広報活動を実施する予定としている(以下「本省実施事業」という。)。

+(プラス)Safe協議会(仮称)の設置及び運営

 行動災害が増加傾向にある小売業(食品スーパー、総合スーパー等)、介護施設等の多店舗展開企業及び複数の介護施設を展開する法人(以下「多店舗展開企業等」という。)を対象に、その本社及び法人本部(以下「本社等」という。)主導による自主的な安全衛生管理を促進するため、各労働局において、管内での波及効果が期待されるリーディングカンパニー、地方公共団体、関係団体等を構成員とする+Safe協議会(仮称)(以下「協議会」という。)を設置し、構成員による連携した取組として、取組目標の設定、行動災害の予防に係る啓発資料等の作成を行うとともに、構成員の安全衛生管理の好事例を管内事業場へ水平展開を行うこと等により、管内全体の安全衛生に対する機運醸成を図ること。

 なお、本省実施事業において、協議会での取組等の広報活動を行う予定であるため、別途指示するところにより、本省実施事業との連携を図ること。

+(プラス)Safe育成支援(仮称)の実施

 第三次産業通知等に基づき実施した多店舗展開企業等の本社等に対する指導については、一定の効果は見られたものの、本社等における安全衛生管理体制を構築することができなかったこと、店舗等における取組が定着しなかったこと等により十分な効果が得られなかった事例も見られたところである。

 このような状況を踏まえ、企業における自主的な安全衛生管理の導入を支援することを目的として、協議会の構成員に準ずる規模の小売業及び介護施設の多店舗展開企業等を対象者(以下「育成支援対象企業」という。)として、+Safe育成支援(仮称)(以下「育成支援」という。)を行うこと。

 育成支援は、育成支援対象企業の自主的な安全衛生管理のスタートアップ支援を行うものであり、支援開始にあたり、労働局において、対象者の安全衛生管理の状況や課題を確認し、効果が高いと見込まれる対策を育成支援対象企業とともに検討し、育成支援対象企業の実情を踏まえつつ優先順位を付けた支援計画を作成した上で、支援を行うこと。

 また、別添により中央労働災害防止協会理事長あて、育成支援と同協会が実施する中小規模事業場安全衛生サポート事業との連携の協力依頼を行っているため、育成支援の実施にあたり、同協会と連携を図ること。

大規模ショッピングセンター等の施設管理者を通じた取組

 駅ビルや商店街、ショッピングモールなど、小売店や飲食店等が複数、密集して存在する施設(以下「店舗密集型施設」という。)においては、当該施設を管理する者(以下「施設管理者」という。)が各店舗に対して持つ影響力を活用し、効率的な周知啓発を行うことが可能である。

 このため、労働局及び労働基準監督署においては、店舗密集型施設を対象として、施設管理者と連携しつつ、各店舗の責任者が集まる会議の機会等に、上記1の協議会で作成する啓発資料、本省実施事業で作成する啓発資料等を活用した周知啓発を行うこと。

本省実施事業の周知啓発

本省実施事業等で作成する行動災害予防にかかる各種コンテンツについて、労働局のホームページ、SNSを活用した情報発信、関連する管内の団体、機関との連携等により効果的な周知啓発を行うこと。